そろそろ前座の時に仕込んだ噺がお終いになりますので、先の名古屋大須で文蔵師から稽古をつけていただいた噺を纏めておきます。
十日間一緒におりましたので、一日二部興行、日曜は三部興行ですから、聞いた高座数は22になります。それを二階客席正面へ座って全て見させていただきました。大須の楽屋兼宿泊部屋は二階にあって、すぐ客席に出られます。大概は入りが今一でしたから、二階にはお客様の姿はなく、正面から高座を見ることが出来ます。
『此処で演る噺みんな、覚えたら演っていいから』
と言われ必死で聞いていました。幾つかはテープにも録らせていただいたのですが、やはり稽古は相対して、細かく演り方を教わらなければなりません。噺を覚える事が稽古ではないンですからね『道具や』『やかん』などは、楽屋できちんと稽古して貰った後、高座でも演ってくれて覚えましたから、これは自信持って出来る噺です。ですが、高座を見ただけの噺は覚えたというだけのもの、覚えても聞いて貰わなければなりません。そして演っていいよと許可を貰う、これを稽古を上げて貰うというのですが、上げて貰わずに演るのは自信持って話せません。あっ、これは二つ目になって数年とか、真打ちの話でなく、前座のウチはですよ。だって、経験が浅くまだ自分の噺が出来上がってないのですから。
そんな意味では稽古で上げて貰ったのは、極僅かです。先に書いた『田野久』や『三味線栗毛』『芋俵』
なんて言うのは、覚えただけのもの。この『佐野山』もそうです。ですが、これは後に稽古し直しているンです。
二つ目になってからなンですが、ウチの師匠が佐野山を演るので、文蔵師に稽古を頼んだのです。その時、
『お前も一緒に覚えるか』
と、声をかけて下さり同席させていただきました。で、その後は師匠の稽古にお付合いさせていただいたので、それが自分の稽古にもなりました。上げては貰っていないのですが、二つ目になり、自分の勉強会でネタ下ろしさせていただきました。稽古し直したのは二つ目になってからですが、初めての稽古は大須の時でした。どの道、前座では演る機会はありませんからね。
( 2011年11月14日 )