ご無沙汰です。藤村です。

 

この1年くらい、あんまり教学・学術関係で面白いネタが見つからず、更新が滞っていました。

2020年の給付型奨学金の実態が出てきたらまた更新したいのですが、まだまだ出てこないし。

 

相変わらず、「外国人留学生叩き」ネタ関係でこのブログを来訪する人は多いようで、こんなに放置しているブログでもずっとアクセスカウンターはわっしょいわっしょい回り続けています。

↑私のブログに到達するまでの検索結果がやばい

 

ただそもそも、「外国人留学生は優遇されている説」自体デマであることが広まっているのか、ネトウヨの中でもオワコン(まさしく消費し終わった「コンテンツ」)となっているんではないのかな?と思ってます。

Twitterで、フォロワーが何万もいるアカウントがそういう香ばしい投稿をして、でも後から消したり・・・というのも見ました。

あれは投稿して後から「うわやべえさすがにこれはデマオブデマだ」って思って消したんじゃないかな?なんて勘ぐってます。

 

が、しかし。まだたまにやヴぁいやつが出てきます。今回は最近の中で一番(一周回って)感心してしまった物件について見ていきたいと思います。

 

あらかじめ言っておきますが、本当に、本当にやばいです。

 

 

 

うわー!虎ノ門ニュースだー!DHCだー!

いやまあ、虎ノ門ニュースですが。

残念ですが、この国にはこのニュースを正しいと信じてしまう方が多いようで、こういうのが湧いたらしっかり潰しておきたいですね。

問題は1:06:12からの抜粋です。

 

(以下、かなり粗い文字起こし)

 それと、留学生に関しては、他の国に関しては、留学生はその国の子どもたちの2倍から3倍のお金を払って留学するものなんですよ。なんでかっていうと、親がそれまでに納税しているんで。そこらへんは差をつけましょうと。

 

 で、留学生がどれくらい来ているか。今の段階、②中国からは12万5000人程度。中国に限らず、全部で約28万人の中の、どれぐらいの割合かわかんないんですけど、国費留学生っていうのがあって、これは月々11万4千円くらいが支給されている上に、日本へ来るための飛行機代も出ています。(ほお)

 

 ですから、日本に留学に来ると、お金をもらって貯めた上に、一応大学生、留学経験という伯が付いた上に、大学でなんかは、授業を聞きなさいというんじゃなくて、昼間アルバイトをやって疲れているんだから寝させておいてあげようねって先生が言うらしいんですよ、そういう学校もある。うん。

 

 ③昼間は大学で寝ながら、お金をもらいながら、単位を落とさなければ、出席日数さえあれば、アルバイトをして稼いで帰れる。

 ④片や私たちの日本人の子どもたちは、支給制度はここ3,4年前から始まりましたけど、ものすごい狭き門なんで、外国人みたいな勢いで出しているわけじゃないんですね。日本人の場合、平均返済期間18年という風に言われているので、大学出てから18年経ったら、40のおっさんですから、それまで借金持ちですから。

 

 日本人には支給はほんとにごく一部の狭き門で、中国人留学生については国費留学生というのがあったり、月11万4千とかですね、⑤いろんな国にばらけてきているんで、中国の割合っていうのはだいぶ狭くなってきているんですけど。それでもそんだけ。中国はかなりの割合を占めていたので批判されて・・・

 

(文字起こしは以上まで。)

これ以降もこれ以上に吐き気を催す邪悪なヘイトスピーチなので、まあ、ここまで。

率直な感想として、これはすげえ、です。この数分間でよくもまあデマとヘイトスピーチと糞便をまき散らせるな・・・と。

 

①「留学生に関しては、他の国に関しては、留学生はその国の子どもたちの2倍から3倍のお金を払って留学するものなんですよ」

これについては、こちらの記事でしっかり検証しましたが、私のライバル記事の「OECDの統計によると、欧米の大学の場合、外国人留学生は自国の学生に比べて平均約3倍の授業料を払っている。」が独り歩きを越えて独り爆走しています。やだねえ。

 

「中国からは12万5000人程度。中国に限らず、全部で約28万人の中の、どれぐらいの割合かわかんないんですけど、国費留学生っていうのがあって、これは月々11万4千円くらいが支給されている上に、日本へ来るための飛行機代も出ています。」

ここが最大のやべえポイント。これまでのブログで私は、「国費留学生を批判する奴らは、国費留学生の割合の小ささ、枠の狭さについて一切言及していない!」と憤慨してきましたが、ここにきて「どれぐらいの割合かわかんないんですけど」と来ました。

やべえ!!言及したくないからって、「わかんないんですけど」だと!!やべえ!!

 

ほい。2020年の数字で、8,761/279,597=3.13%。ググれば一発よ。

しかしこの坂東なる人物は、普遍的に留学生が受給できるかのような言いぶりで意図的にミスリーディングしてます。

ってか、12万5000とか28万の数字が調べられるなら、国費留学生の割合も実はわかってんだろ・・・わかってんのに意図的にスルーしてんだろ・・・・。劣悪。ああ、劣悪。

 

※ちなみに「11万4千円」も違います。学部生で11万7千円、研究留学生で14万3千円~14万5千円。・・・11万4千円ってどこから来たんだろう?それはそれで気になる。

 

③「昼間は大学で寝ながら、お金をもらいながら、単位を落とさなければ、出席日数さえあれば、アルバイトをして稼いで帰れる。」

うーん。前の記事でも書きましたが、おそらくこの論を唱える人は、大学院に行ってないか、国費留学生の大半が大学院生だって知らないんですよね。そのへんのちゃらんぽらんに遊んでいる学部2年生くらいを(あるいは自分自身の学生生活を)モデルに考えていると思います。

この発言をした坂東何某も大学や大学院には行ってない模様。(学歴バッシングはしたくないのでこの辺はほどほどにしますが)どっかの誰かから又聞きしたのをうのみにして一般化しているのでしょうね。

残念ですが大学院生にそんな暇はありません。バイトしなくてもいいんだったらしないし。それより論文です。研究です。

 

④「片や私たちの日本人の子どもたちは、支給制度はここ3,4年前から始まりましたけど、ものすごい狭き門なんで、外国人みたいな勢いで出しているわけじゃないんですね。

3.13%は狭き門です、の一言で論破できてしまいますが・・・

じゃあ日本の支給制度「高等教育就学支援制度」の枠は狭いのか広いのか?という問いは大事ですね。

 

で、確かに2020年までの「給付型奨学金」は非常にしょぼいものでした。

こちらの記事でも検証しましたね。どうしょぼいって、そう、枠がとても狭いんでしたね。

 

この制度設計では、一学年あたり2万人程度。全学生数296万2千人のうち、3%~4%ほどになります。しかも月額2~4万円、最終的予算規模210億円ですって。

 

それと授業料減免は(例えば2019年の数字で)

https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2019/01/18/1412042_02.pdf

予算総額682億円だったと。

給付型奨学金+授業料減免、合計予算が900億円程度・・・。しょぼかったですね。

 

そしてリニューアルした、2020年以降の制度「高等教育就学支援制度」ではどうなんでしょう?

・・・まだ2019年までの採用人数しか出てないですね。もう21年なんだから早く出してほしい。

仕方ない、予算額から概算していきましょう。

2020年の予算は(給付型奨学金、授業料減免含めて)4882億円と言ったところのようです。最終的に7600億円になるとかそんな数字もありましたね。

あとはもう概算ですが、要は28万人程度の留学生のために国費留学生制度(予算185億円程度)があって、

学生全体で見ると260万人程度の非留学生学生のために高等教育就学支援制度(予算4882億円程度)があるということで。

一人当たりの予算はいうても、留学生向け<日本人学生向けです。

 

片や私たちの日本人の子どもたちは、支給制度はここ3,4年前から始まりましたけど、ものすごい狭き門なんで、外国人みたいな勢いで出しているわけじゃないんですね。」

 

ということで、はい、デマです。お疲れ様でした。

 

※もちろん、本当に7600億円といった予算が出るのかしっかり検証していくことは重要です。まだ数字が出ていないけど、出たらまた記事書きたいと思います。7600億円で足りるんかどうかも含めてね。

※そもそも海外から優秀な院生を呼んで、わざわざ来てもらっているんだから、相応の予算をつけるべきだというのが私の意見です。でも今回はそれ以前にデマの話なので。

※中国が「千人計画」で優秀な研究者を集めててけしからん、って思ってる暇があるなら、日本もちゃんと予算をつけて沢山集めたらいいんですよ。それどころか「国費留学生なんて縮小だー」って。「零人計画」かよ。そっちのが日本のためにならんわ。

 

⑤「いろんな国にばらけてきているんで、中国の割合っていうのはだいぶ狭くなってきているんですけど。それでもそんだけ。中国はかなりの割合を占めていたので批判されて・・・」

まあ、中国の割合が減ってきたというのは概ねファクトです。中国がかなりの割合を占めていたのを批判されたから減った・・・というのはちょっと眉唾ですが。どうなんでしょう?

 

⑥終わりに

やっぱり疲れたー。

そう、デマを流すってのは簡単で、一瞬でできるんですよね。適当な鳴き声を叫べばいいので。

「自民党員は朝食前にウンコを食べる!!」

はい、デマが出来ました。(デマじゃないかもしれないけど)

でもその検証には莫大な労力を必要とします。自民党員全員の食生活を検証しなくてはなりません。

 

そして何より、「外国人留学生は優遇されている!」「国費留学生はこんなにも充実しているのに!」と義憤に燃えてググって、このページにたどり着いたそこのあなた。「外国人留学生 おかしい」ってググってここにたどり着いたあなた!

 

あなたはググった分だけ偉いです。調べた分だけ偉い。坂東何某とかより偉い。あいつはググればすぐ出てくる情報すら「どれぐらいの割合かわからないんですけど」だもんね。お疲れ様です。

正直、巷に転がる「外国人留学生優遇説」はだいたいデマです。虎ノ門ニュースに至っては数分で一体幾つのデマを流したのかとびっくりする次元です。

TwitterとかYouTubeとかでデマを流したりするのはやめてください。目障りです。「外国人については別にいくらデマを流して名誉を棄損してもいい☆彡」という雰囲気が醸成されます。それ、人として日本人として恥ずかしいです。

 

 

10月追記:虎ノ門ニュースが!見えなくなってる!別にデマを広げていたから、ってわけでもないかもですが・・・

えー、この世のインターネット上から、また一つ糞みたいなデマが消えて、良かったです・・・ハイ・・・