藤村です。平素より大変お世話になっております。

 

さて、最近このブログのアクセスが多いな、おかしいな、と思ってたらいつもの国費留学生ネタでした。

恐らく「国費留学生 おかしい」「国費留学生 返済不要」とかでググって、ここにたどり着いた方が多いのでしょうね。

前回の記事でも書きましたが、貴方は調べただけ偉いです。

そして今回の論点、結構大事だな、と思ったのと、なんと、ネトウヨ諸兄らと私の意見が一致しているという、稀有な例だったので書いてみました。

 

1.ことのはじまり

10月27日の日経の記事ですね。ただこれは有料記事なので、私も全文は読めません。

無料版でもう少し詳細に言っている記事では、「政府は半年以上滞在する留学生に大学が重要技術を伝える場合、2022年度から経済産業相の許可を求めます。年間所得の25%以上を外国政府から得ているなど『外国の影響下にある』場合が対象です。滞在半年未満は既に許可制となっています」とのこと。

 

「機微技術」というのは軍事に用いられる可能性の高い、外為令等に規定される技術のことですね。

いやまあ、そもそもこの間産学連携の名の下、大学で軍事研究が行われるケースが増えてきているからこそなんですが、必要性はあると思いつつ、一方で全く軍事に関係ない研究分野もあるので、一律に求める必要まであるかな?・・・と思うくらいです。

ただただ、そこまで大したニュースではないんですよ、これ。

 

んで、問題はその後に出た、11月1日のNEWSポストセブンとやらの記事ですね。「日本の奨学金を得た『中国人研究者』が帰国後に『軍事研究』していた」とな。

 

 

こっちはなんだか意図を感じる文章の書き方・・・と思って中身を見たら中学生の作文レベルに拙い日本語で絶望した
とはいえ、「政府の極秘レポート(そんなもんどうやって手に入れたんだろう)」を私は持ってないので何とも検証はできないものでした。

 

が、前提として確認したい事があります。ここで問題にされている「A」さんは「2009年に日本の文科省の奨学金を受けて」としか書いていないので、国費留学生なのかはわかりません。Bさんについては「科研費」と明記されますけどね。書きぶりからしたら国費留学生じゃない気もしてくるけど・・・。

 

2.問題点をどこに見定めるか

ですがこの国では当然、国費留学生叩きに流れていったわけですね。まあいわゆる犬笛的ですが・・・このブログのアクセスカウンターもまわりました。

記事では国費留学生とは明言してないのですが…もし国費留学生じゃなかったらどうするんだろ、こいつら。

  

 

そして、問題点を整理したいと思います。この記事のAさんBさんの行動は、何がどう問題だったのでしょう?それとも全く問題無いのでしょうか?

 

一応前提として、この記事で問題視されているAさんBさんは、あくまで違法なことをしたわけではない、ということは確認しておきたいです。

 

違法じゃないから万事OK、という議論はしません。しかし日本で犯罪を犯したわけでも、中国で法を犯すことをしたわけでもない、虚偽の経歴で奨学金をせしめたとか、ヘルシンキ条約に反するような研究をしたとかいうわけでもないし、日本で論文の不正を働いたとかでもない…わけですね。

 

では問題は何か、というところですが、

珍しい事なんですが、私もネトウヨさんたちと一部共有するところがあります。

正直、優秀な研究者さんが帰国後、他でもない「軍事研究」に従事したというのは問題に思っているのです。

ただしネトウヨさんたちと違うのは、中国だからというより、アメリカでもどんな国でも、さらに日本でも、大学が軍事研究に飲まれているということに危機感を覚えます。まして中国の場合国家国防科技工業局の監督下にある大学とのこと。

私は基本的に軍学協同には反対だし、軍部の人間が軍事費を背景に大学を席巻する形も問題だと思ってます。

以前の記事で書きましたが、日本の大学に米軍から予算が投入されて・・・という歴史もありました。

 

3.ではどうしたらいいのでしょう

しかし、解決策や改善案は非常に難しいところです。

 

例えばNEWSポストセブンの記事では「10年以上、日本の大学に籍を置き研究活動に従事したB氏。彼の真意は中国に帰国してから明らかになる。」としていますが、

帰国して、一番金払いがいいところが軍事研究グループだったからそっちに流れた・・・だけかもしれない、ずっと旅客飛行機の研究をしたかったけど真意が変わった、とかかもしれない。真意なんてわからないし、帰国した後に何をするか、なんて分からないのが当たり前です。

もちろん、来日時に研究者が軍部に属していないかチェックする、予算獲得時に軍部からの予算でないか確認する、は大事だと思いますが。

 

 とはいえ、一つこれはやった方がいいな、というのはあります。

日本では基本的に軍事研究を禁止してきた歴史があります。

もちろん完全な禁止なんて全然できず・・・というのはこちらの記事で検討しました

しかし日本学術会議による軍事研究に関する検証、歴史的積み重ねや経験、学問のあるべき姿について留学生にも知ってもらって、

大学や学術が軍事に従事させられてきた歴史をちゃんと学ぼう、というのはやるべきだと思います。

中国に帰ったら、日本で得た経験を人類福祉と科学の発展のために使ってもらおう、という教育はしたらいいと思います。

でもそれをするならその前に、日本が規範にならねばなりませんけどね。私は工学系の出身ですが、そういった教育は受けたためしがありません。

 

4.さらにそもそもの解決策はなんだろう

 

以下は余談です。

 

 

さらにそもそもの解決策はなんだろう?と考えていた時、フィフィのツイートが目に止まり、考えを整理できました。

世界で一番愚かなことを言ってくれたお陰で、その逆、つまり最善の解決策が見えたって感じです。

 

すなわち、「(国費)留学生としてきた優秀な研究者に、日本で定着してもらうこと」です。

以前記事で書きましたが、日本の戦略は「高度人材獲得モデル」です。海外から優秀な研究者を迎え、日本で研究してもらう。日本で論文を書いてもらい、日本の研究者を育ててもらう。

良いと思います。素晴らしいですね。私も実は大学院生時代、中国からの留学生の先輩にだいぶお世話になりました。

 

言っておきますが中国の「千年計画」も要するにはそういうことです。予算を措置して、優秀な研究者をしっかり獲得する、と。

卑怯なことではありません、どこもやってることです。日本ももっとやるべきなんです。もっと海外から優秀な研究者を獲得しようとして良いんです。

記事で書かれていた「Bさん」も、どうして10年日本で研究していたのに中国に引き抜かれたかと言うと、端的にそっちの方が条件が良かったからかもしれません。日本に定着して、旅客機の発展とかに貢献してくれてたらなあ、、、とか考えずにはいられません。

 

何度も書いていますが、「お金は出さないけど高度な人材には来てほしい!優秀な研究者を招聘はしないけど国際共著論文はたくさん書いてほしい!」

なんて要望は虫がいい妄想でしかありません。日本の学術研究、ひいては日本の国益に反します。これがまさにアレですね。反日ですね。

私も実は負けず嫌いです。日本の学術がもっと世界をリードしていってほしいし、将来もノーベル賞を受賞できるような研究を今からやっていってほしいし。世界大学ランキングや論文数で日本が振るわないのは悲しいことだと考えています。

 

※ちなみに何故フィフィのツイートが世界で一番愚かなのかと言うと、世界大学ランキングで確かに日本は色々抜かされつつあって(韓国にはまだ抜かされてないけど中国にはだいぶ抜かされてるかな)、

じゃあ世界大学ランキングで点を上げていくにはどうしたらいいかっていうと、「国際化(=つまりどれだけ留学生を受け入れたり国際共著論文を書いているか)」も指標になっているのであって、

フィフィが言うように「積極的に誘致」しなくなっちゃったら、更に大学ランキングで下がっていって、更に中国韓国に抜かされていくんだよ、

フィフィはたった140字のツイートで自己矛盾を起こすアクロバットネトウヨなんだよ・・・という話でした。さすがフィフィ。幼児教育からやり直せ。