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今月は魔ァちゃんの月

orizarot

いつも友人知人に

「あれ、岸さんまだチョベコミ 描いてたんですか?」

と言われるのだが、
愛する妻が『魔ァちゃん』を愛している以上
オレはネタ尽き果てようとも

魔ァちゃんを描けるとこまで描こうと思っているぜ。
つーかこんな話でネタが尽きるも何もねーんだけどな!


毎度ながら魔ァちゃんは作家の好き勝手街道をばく進中なんだが
(主人公の魔ァが1年2ヶ月も出てこなかったとか)
エロい漫画ではなく、面白い漫画にしよう!と考えを変えた時点で
魔ァちゃんは新ジャンルとして確立したように思う。
いわゆる連載漫画としてのセオリーなど全て捨て去って
とにかく、6ページのうちに確実に笑える、そういう漫画。
編集者をして、締め切り前のギスギスした雰囲気の中で
魔ァちゃんの入稿原稿を見たら心が和んだと言わしめた存在。


魔ァちゃんがちゃんとお金が貰える作品としてこの世界に存在していることは
もはや奇跡としかいいようがない。
日本もまだまだ捨てたもんじゃねーな!
来月も頑張ります!
くっっっっっっっっだらない漫画だけど
割と描いてて楽しいのよこれ。

というわけで、魔ァちゃんを知らない人のために
今月分の面白いところのひとつである、
「地獄漫研 応援歌」歌詞を披露しようと思う。
ちなみに曲は付いてないけど、
甲子園の試合終了後に球児たちが並んで歌ってるところを想像しつつ
それっぽい節で口ずさんでくれたら
なかなかいい感じだと思うのでよろしく。

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「地獄漫研 応援歌」

1/
陰毛深く 学成りがたし
液はなんでも多けりゃよかろう
その その 往生際の悪いモザイクは 愛
あの あの あり得ない体位は 希望
嗚呼 地獄漫研 地獄漫研
悪い大人の停留所


2/
乳首舐めたし 金は無し
アナルは性器じゃないからノーモザ
この この 出過ぎる精液は 夢
どの どの 胸もデカけりゃとにかく 好き
嗚呼 地獄漫研 地獄漫研
悪い大人のワゴンセール

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いや、ほんと、最低。

『i.d.』が復活しました

orizarot
年始の入院により長らく連載ストップしていました『i.d.』が

一昨日発売の月刊ヤングキング より連載再開しました。
コンビニへ急ごう!
マイナー雑誌だからすぐ無くなっちゃう!

描いたのは3月なので、もうずいぶん前の作品のような気がする。
結婚して新居に引っ越した後の、第一弾作品。
これの1コマ目を描く時、入院のブランクが絵に出ないか心配だったんだけど
普通に描けたので安心したのをすごく覚えている。
入院前と比べて絵が変わった。
多分、描けることへの嬉しさもあったんだと思うけど、

絵が丁寧になった気がする。


ケンカシーンをぶち上げておいて

「次回から休載です」というアホなことをやってしまってすみません。

これの前、つまり休載直前の回は、

描いててものすごくキツかったのを覚えている。
透析ちゃんでも書いたが、意識に身体がついてこない感じだった。


今はこの『i.d.』と、あともう一本作品を同時進行していて、

原稿月産量が50ページ近い。
おかげで、絵が上手くなってきています笑
絵は努力を裏切らないのです。

今日の透析ちゃん 11

先生とオヤジが向かい合って座り、
オヤジの横にオフクロ、恋人、オレと位置についた。
カウンセリングルームは、妙な緊張感に包まれた。
多分、先生の方はこういう状況には慣れてるんだろうな。
見ると、なんだかオフクロが居心地悪そうだった。

いろいろ心配なんだと思う。
恋人にそっと耳打ちして、オフクロと手を握ってもらった。

メモを片手にオヤジが話し出す。
「ここへ来ていろいろと検査もしていただいていますが、

息子ともども我々としては、今回のお知らせについてまだ納得ができていません。
息子としては、あれから体調もかなり良くなっているし、尿も普通に出ていて、

生検もない状態でデータのみで結果が出てしまったような気がしているようです。

先日のCTもこちらはご説明いただいていませんし…」
「分かりました」
先生はすぐに、オレのCT写真を持ってくる。

CTとは人の輪切り写真のことだ。10枚ちょっとあったと思う。


「これが岸さんのCTです。これが腎臓なんですが、合計で4枚写っています。

一枚が大体2センチ幅ですので、岸さんの腎臓は8センチというわけです。

健常者の腎臓は10センチほどですので、CTが5枚あるわけです。

これをみても、すでに岸さんの腎臓は収縮してしまっていることが分かります。
おそらく今はもうカチカチに硬直してしまっている状態です。

今生検をしても、荒れ切って荒廃した後の腎臓があるだけで、

何かが分かるというものではありません。

クレアチニン値も通常の20倍近くあります。
これは正直言ってべらぼうな数値なんです。

貧血もひどくて、通常の半分程度しかヘマトクリット値がありません。

もしこれが急性であったら、ここまで一気に値が悪変した場合は

歩くことさえ出来ないはずです。

今普通でいられるのは、これが徐々に進行してきたということなんです」


もう、いきなりグーの音もでません。
そして、今回のこの結果は先生ひとりの判断ではなく、

院長含めて5名の医師によって出された結果だということと、

オレの腎不全は慢性糸球体腎炎というものから引き起こされた、

おそらくは先天的な疾患であったということが告げられた。
オレ的にあとショックだったのは、いずれ尿が止まってしまうということ。
オレは人工透析を背負い、尿が出なくなる。
こんなの、まさに身障者だ。


「もうこれは、100%、息子の腎臓は回復の見込みが無いということなんでしょうか」
「医学において100%ということはありません。

ただ、今までのデータから考えれば、

腎機能が回復するということはまずあり得ません。

もちろん今後どういう治療を希望されるかはご本人の意志が一番ですが、
透析無くして普通の生活を送るということはちょっと無理ですね」


こういう言い方って、逆に苦しいよな笑
「もう人工透析以外ダメ!絶対!」ってスッパリ言われた方が楽だよ。
オレはここで、なんで移植という選択肢が先生の口から出ないんだろうと

思っていた。
まあ移植っつったって、そう簡単にはできないんだろうけど。
よく、何十年待ちって言うよね。
と思ったら、移植というのは、できる病院が限られているらしい。


「で、透析には2種類の方法がありまして。

血液透析と腹膜透析という方法です。
血液透析はご存知のように、2本の針を刺して透析を行います。

この時、手首に簡単な手術をして、シャントというものを作ります。

透析では1分間に牛乳瓶一本分の血液を動かさなければならず、

これは動脈から採血する必要があります。

そのため、腕の動脈を静脈につなぎ変えてやるのです。

腹膜透析というのは、お腹にチューブを差し込み、そこから溶液を注入し、

自分の腹膜で透析を行う方法です。

これですとご自宅で自分の手で透析を行えますが、

腹膜は5年も使うとボロボロになりますので、期間限定の方法になります。

まあどちらも一長一短ですね」


腹からチューブ出してしかも期間減限定とかあり得ないっすから。
結局血液透析しかないんか…
1日おきに針刺すんか。
つーか手術って!そんなの!簡単、ってどういう手術なんだよ!

「あの、ここでは無理なんでしょうけど、移植っていう手はどうなんですか?」
「移植もあります。移植をするとなると大体3ヶ月ぐらいの入院でしょうか。

ただ岸さんの場合先天的な腎炎ですから、

移植してもまた腎不全になる可能性が高いですね。

あと、移植腎は風邪に大変弱くてですね、それだけでダメになることがあります。

どちらにしても厳しい体調管理が必要ですよ」


3ヶ月…?
そんな。
1ヶ月でもたくさんなのに、こっからまた3ヶ月。
それは運良く腎臓が見つかった時の話だし、それに移植の手術なんて、
正直おっかない。
今はあまり考えたくなかった。
オレはもう、早く退院したいんだよ…
なんだか、話を聞いているうちに気分はどんどん萎えていく。
萎えるといってもネガティブなものというより、「いい意味の諦め」のような感じだ。
もう、手は無い。
オレが慢性腎不全であるということは、それはもう決まりだ。


オヤジは最後に、大変遠慮がちに聞いた。
「あの、セカンドオピニオンというのは…」
「ああ、いいですよ。わたしはただの凡庸な一人の医師ですから、

他の意見をお聞きいただくのは一向に構いませんし、

その場合にはこちらのデータは全て開示します」

それは、もちろん医師としての当たり前の姿勢であったんだろうけど同時に、
『どこにいっても絶対にこれは慢性腎不全と言われますよ』

ということだったんだろう。


「別にいますぐシャント手術を行うという意味で申し上げたのではありません。

人生の大事なことですから、ゆっくりお考えください。

シャント手術をした場合、2週間ほどで退院です」
考えるもなにも、透析をするという前提は変わらない。
変わらないのだ。
そして面談は終了した。

部屋に戻って。
「セカンドオピニオンとは言ってみたけど、これはどうだろうな」
オヤジが口を開いた。
オレは答える。
「うん。そうだね。ちょっと考える」
そういってオレは、恋人とふたりにしてもらって、両親はそのまま帰った。


「…まいったね」
「そうね」
「どうしようか…?」
「透析は大変だけど、でも受ければ普通に生きられるんだから。

わたしは手術受けて欲しいわ」
「そうだね。分かった。そうしよう」

話したのは本当に、このぐらいだけ。
オレの人生を決める2人の会話は、ものの数十秒で終わった。
さっきまで息巻いていたオレだが、もうどうでもよくなっていた。
オレはとにかく早く出たかったんだ。
セカンドオピニオンなんかやったらまた1ヶ月出られないかもしれない。
移植なんて待ってる状況じゃもちろんない。
そのシャント手術ってのをやってしまえば2週間で出られるんだ。

それになにより。

オレには恋人がいる。
人工透析でもいいと言ってくれた人が。
ポンコツなオレと、一緒に生きてくれると誓ってくれた人がいる。
オレは彼女に生かされた。
彼女が生きろと言う以上、オレは生きなければならない。
だから透析を受ける。
受けりゃいーんだろ。
実にシンプルなことじゃないか。
仕事との両立とかなんとか、心配し始めたらキリが無い。
でもそんなこたーどうでもいい。
オレに必要なのは、今は生きることなんだ。
病室にいるより、オレは恋人といたい。

オレは彼女を抱き寄せた。

「オレ、手術を受けるよ。………ごめん、オレ、これで身体障害者だ。
ごめんな」

オレは彼女を抱いて、少し泣いた。
彼女は笑って受け止めた。
「大丈夫だよ。あたし、後であたしの腎臓あげるから。

平気平気。透析辛くなったらいつでも言ってよ。あげるよ!」


まるで自分のお菓子を半分あげる約束をするかのように、彼女は言った。
オレたちは顔を見合わせて、いつもと同じように笑った。
オレたちの間にはいつも笑顔がある。
お前のおかげだよ。
お前の笑顔は本当に素晴らしい。
お前は本当に、強い人だ。
お前がいたら大丈夫だな。
オレは大丈夫なんだ。

そしてオレたちはいつものように、一緒に夕飯を食べた。

なんか、怒濤の数日間だ。

ずっと、ずーっと苦しいのを我慢して
いつか元に戻ると信じてて
入院して数日後にオレは身障者だって言われた。
正直全然現実味が無い。
でも相変わらずメシはおいしい。
オレはその時、ぼんやり考えた。

高校の頃からずっと血尿が出ていたこと。
見た目が赤いわけではなく、数値としての事だけど。
医者に通ってたけど理由が分からず、だんだん検査も疎遠になってきて。
つまりオレはあの頃からずっと腎不全が進行してたんだな。
だからもしかしたらオレはあの時から、

ちゃんと味を感じられてなかったのではないか。
今、オレはやっと、本当の「おいしさ」を感じてるんじゃないだろうか。
美味いメシ食って、素敵な恋人がいて。
それでいいじゃないか。


そんな時、携帯に留守番メッセージが残っていることに気付いた。
新規の、小説のカバーイラストの仕事の依頼だった。
オレは身障者になったけど、でもまだ漫画家なんだな…!
先方に電話をする。
「今入院していまして、でも月明けには退院なので、

それまで待ってもらえますか?」
驚かれたけど笑、了解してもらった。
オレの絵を使いたいって言ってくれた。
ああ、オレはポンコツではないらしい。
世界はまだ、オレを必要としてくれている。
だからオレは生きてるのか。

3日のズレで後遺症も残らず、腎不全で済んだ。
オレはまだ漫画家だ。結婚もするぞ!
ざまあみろ。

自分が腎不全であること自体を嘆くのは簡単だが
腎不全でもなお生きているということ、そこに意味を見つけられそうで
オレは意外と晴れやかだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
つづく

今日の透析ちゃん 10

彼女が帰った後。
いつものように彼女が帰宅するまで、何通もメールを交わしたその後のこと。
オレはひとつ心配事があった。
彼女自身はオレの腎不全を受け入れてくれたとして、

彼女の両親はどうなんだろう?
オレがもし親の立場だったら正直、反対すると思う。
だからこそ心配だった。
オレとの結婚を考え直すよう、説得されちゃったりしないだろうか。
「帰ったよー」という彼女からのメール。
大体その後、1時間半もすれば
「お風呂あがったよー」というメールが来て、

寝る前のメールを交わしたりするのだが
今日は1時間過ぎても2時間過ぎてもメールが来ない。
「……おかしい…」
オレの予感が当たってしまったのか?
いや、でも、単に風呂が長引いてるだけかも知らんし。
もうちょっと待とう。

待っても待ってもメールは来ない。

落ち着かねえ!

ついにオレからメールを送ってしまう。
「お疲れさま。ちゃんとご飯は食べましたか?

もしかしてお母さんと話してるのかな?

(彼女の父親は当時海外出張だったので日本にいない)
ゆっくりお風呂に入って、のんびりしてください」

全くなーにが、『もしかしてお母さんと話てるのかな?』だ!
カマかけになってません。こんなメールは0点です。
そしてそれから約20分後。
彼女からメール。
オレは正直、ちょっとそのメールを開くのが怖かった。
『お母さんと話をしました。それで結婚のことなんだけど、やっぱり…』
なーんて書いてあったらどうするどうする?


「お母さんと話してたら遅くなっちゃったよ。
それでね、やっぱりお母さんには反対されちゃったけど、
でもわたしはもう結婚するって決めたので、

見守っていてほしいと伝えました。
お母さん分かってくれたよ」



ああ。そうか。
ありがとう。
一瞬でも、彼女の気持ちが揺らぐ可能性を考えてしまったことを

オレは申し訳なく思った。
彼女は決して一過性の気持ちの高ぶりなどではなく、

冷静な気持ちとして、腎不全の身障者となる選択肢を進もうとしているオレを

選んでくれている。
オレは頑張って、お礼を書いた。そして、もう一度聞いた。
「オレはもしかしたら一生腎不全になるかもしれないんだ。

それでも本当に、いいの?」

「もう、○○がいない人生なんてあたしは考えられないのよ」

ありがとう。
オレにも、お前がいない人生ってのはもはや考えられない。
こりゃー全くのノロケだな。申し訳ねーなー。
それでも。
なんだかオレたち2人は、この病気を通してすこしづつ、

気持ちのつながりのステージをランクアップさせていった気がする。
この病気を通じてすこしずつ、オレたちは夫婦になっていった。
とはいえ、オレはまだ、信じていたんだ。
「オレは急性。急性の腎不全」



翌日も透析。
カテーテルからの透析は順調。
しかし、いい事がひとつあると悪いこともあるものだ。
例の、聞きに行かなかった検査結果は、芳しいものではなかった。
両親が病院を探し出して検査結果を手に入れてきてくれたのだが、

この時点ですでにオレは腎不全の兆候を見せていた。
またひとつ、慢性へのコマが進んでしまった。
あとはこないだの胃カメラ等の結果をふまえ、先生がどう判断するかだ。
そして、今日からカテーテル部分のガーゼが取れた。
それはいいのだが、『通常版』の方法は、

透明な湿布みたいなシールを一枚ぺたんと貼るだけなのだ。
えーうそーん、なんか心細いー
トイレに行くと、透明なフィルムごしにカテーテルが見える。
イソジンで消毒され、茶色にぐちょぐちょした中に、

カテーテルがぶっ刺さっている。
よく見ると、心臓の拍動に合わせてびくびく動いております。
やぁーだーもー

このあたりから毎朝、オレはキチンと6時に起きるようになった。
慣れてくるとそれほど早起きは苦痛ではない。
健常者だった頃は、毎晩4時頃まで起きていて、朝11時頃に起きてた。
それが漫画家としての、いわばステイタスだとさえ思っていた。
でも一度やってみると、早起きって意外と出来るのね。
カテーテルのために自力で歩けないオレは、車椅子を用意してもらった。
背中に「岸さん専用」って書いてある!ちょっとうれしい!
オレ専用の車椅子で、オレは毎朝ロビーフロアに行った。
天気がいいと、そこから見事な富士山が見える。
今までここまでまともに富士山を見た事なかったな。
なかなか見事な山だ。
確かに、信仰の対象にさえなるのは理解できる。
その神々しい山を眺めていると、なんとなく神の存在やらを信じる気になる。
「…急性だったらいいな…」
この頃になると、決して諦めという意味ではなく、

しかしもしかしたら慢性なのかもしれないという可能性を、

わりと冷静に見つめることができるようになっていた。
もちろん急性に越したことはないけど、でも、もしかしたら慢性なのかもな…
透析という行為がどういうものか分かってきたというのも手伝って、

恐ろしい闇に見えていたものの霧が、少しだけ消えたのかもしれない。

透析に慣れてくると、透析ルームの中をいろいろと眺める余裕も出てくる。
透析ルームはとても日当りが良くて、晴れた日は大変気持ちがいい。
周りに寝てる同席者は、言っちゃ悪いが死に損ないのようなおじいちゃんばっか。
ルームにいると、ここはまるで天国のような気分になってくるんだ。
周りがじいちゃんばっかなので、看護婦さんもアホほど優しい。
幼稚園の先生みたいなんだ。
男性の看護士さんもいい人ばっか。
ああ、ここで透析させてくれるんだったら、それも悪くないかな。
と、そこへ主治医のM先生が現れた。
「先日の検査結果を見ました。

胃カメラでは問題なかったですけど、

心臓エコーの方ですが、心胸比が非常に高いですね。

いままで夜、苦しかったでしょう?

今岸さんの心臓には水が残ってしまっていて、

いわば体内で溺れているような状態です。

先日いただいた、以前の検査結果もよくなかったですしね。

足のむくみから判断しても、透析の導入をそろそろ考えた方がいいでしょう」



彼はさらっと、本当にさらっと言った。
「透析の導入を考える」。
それはつまり、オレが慢性腎不全であるという告知であり
身障者となることが確定した瞬間。
それを彼はさらっと、言った。

こういうのって、部屋に呼ばれて、もっと深刻に言うもんじゃないのか?
生検もしないで、エコーだのCTだの数値だのそんなもんだけで

オレの体内のことに結論出すのか?
そんな…!

怖いとかショックとか以前に、オレは納得が出来なかった。
ただ「はい」と答えるしかできなかった。
オレはもう、これで身障者なのか…?

部屋に戻ると、いつものように両親と恋人が来ていた。
オレは彼らに訴えた。
「あんなの納得できない!

彼にとってはオレは毎日たくさんいる患者の一人なんだろうけど、

あんなフランクに告知されたって到底納得できないよ」
まるで子供が駄々をこねるようなもんだ。でもオレは真剣。

だって、ここでゴネなかったらそれで身障者確定だよ?
両親もオレの言葉に納得する。
「そうだな。数値だのなんだの、それだけじゃ分からないこともあるだろう。

いいよ、今から先生とみんなで話を聞こう。

それで満足できなかったら、ほら、セカンドオピニオンってのあるだろ?

他の病院に移ってもう一度検査してもらうことだってできる。

まだ諦める必要はないよ!」
オヤジのその言葉にオレは、なんとかまだ『可能性にしがみつく』ことを

許されたような気がして少し安堵した。
先生に面談を申し込み、その場で待つ。
先生は忙しい中、じきに時間を捻出してくれた。
「じゃあ、行こう」
指定された会議室まで、恋人が車椅子を押してくれた。
先生を前に、オレたちの最後の抵抗が始まる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つづく

きょうのぼく


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ある朝の風景

おはようございます、あけびです。
いま朝の8時です。
もうそろそろ岸さんごふうふが起きてくるんだ。
起きてきたら今朝もじょうずにうんちできたのを褒めていただくんだ。
ああ、みればみるほどじょうずにできたなあ。
岸さんごふうふの、だんなさんか奥さんか、

どっちかがぼくのうんちを片付けてくれるよ。

それをおトイレに流すのを見るのがぼくは大好きなんだ!
ああ、はやく起きて!
うんちを見て!
褒めて!
あけびです!

…あれ、もう8時半なのに起きてこないよ??
これは、
これは、
これはきっとなにかあったよ!
岸さん?岸さん!
ぎゃああああああああああああああ
ぎょわああああああああああああ

ああ!
岸さんごふうふはきっとぼくを置いてどっかへ旅だってしまったんだ!
あああああー
もうもどってこないんだ!
そしてぼくはここでひとりぐらしなんだ!
そんな!
これからいったい誰がぼくのうんちを見て、褒めてくれるの??
誰かうんちを見て!
褒めて!
あけびです!
ここにぼくはいます!
だーーーーーーーーーれかーーーーーーーーーーー
うーーーーーんちをーーーーーーーー
みーーーーーーーーーーーーてぇーーーーーーーーーーーーー

ぎゃあああああ
もう9時なのに起きてこない!
これはもう絶対にいない!
消えた!
もう岸さんごふうふは消えた!
もういない!
ぼくにはなにもない!
うんちのみ!
あああああああああああーーーーーーー
おなかがすいたーーーーーーーーーー
あああああああーーーーーーーーーーーーーーっ!
あっ!
あっ!
来た!
岸さんごふうふきた!
見て!
見て!
うんち見て!
ぼくあけび!
あけびだよ!
うんちをしたあとのぼくは、ぼくは2人が起きてくるのを待ってたよ!
あっ、片付けてる!
ぼくのうんち片付けてる!
手際いい!
憧れるぅうううううううう!
わっわっ、もういくの?もうトイレに持っていっちゃうの?
見せて見せて、一緒に行かせて!
流すとこ見たい!
わっわっわっ、もう流す?もう流す?
ああああああああああああああああーーーーーーーーーー
なーーーーーーーーーがーーーーーーーーーれーーーーーーーー
たーーーーーーーーー

きゃっほううう!

さーて
ごはんはまだかな?
今日も遊ぶぞう。

きょうのぼく

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あけびです。
きょうはとてもショッキングなことがありました。
ちなみに、『ショッキン、グゥー』と伸ばすと「いまどき?」

とバカにされますのできをつけて!

きょうはぼくは爪をきられました。
いぬの爪っていうのは人のつめとはちょっとちがっていて
さきっちょの方まで血管と神経が入っています。
だからこまめに切ってもらわないと、どんどん伸びて、

切るのも大変になります。
そとを散歩できれば、アスファルトで削れてイイ感じになるそうなんだけど
ぼくのばあいはほら、そと出らんないでしょう?
おっかなくてそと、出らんないでしょう?
だから、だめなの。
切らないとだめなんだけど、でもぼくに言わせりゃ
切るのもだめなんだな。
だっておっかない!
きっといたい!
いたくなくてもこわい!
おなかすいた!
ああーーーーーーー!!!

まず、岸さんのだんなさんに羽交い締めにされます。
怖くないからね!とうそを言っていました。
こわいっつーのです。
そして岸さんの奥さんが、爪切りで爪を切っていきます。
ぎゃあ!
あれ、いたくないかも。
ああ、でもこわい!
ぎゃああ!
あ、なんかオヤツもらった!
もぐもぐもぐ!
ぎゃあ、また切られた!あああーーー
あ、またオヤツ!ぎゃあ!
ああもうやだ、痛くなくてもこわい!
ぎゃあ!またおやつ!ぎゃあ!おやつ!
おいしい!ぎゃあ!おやつおいしい!ぎゃあ!いたい!おやつ!ぎゃあ!
いたい!おやつ!おやつ!いたい!ぎゃあ!いやだ!おやつ!おいしい!
ぎゃあ!
おやつうううううううううううううううう
ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお



お…



パパさんは以前、おばあちゃんの足の爪を切ってあげていたとかで
ヤスリがけに慣れていたようなので
がんばってくれました。
ぼくは後半はもう脱力していたけど、なんとかがんばったよ。
ああ、もう爪なんてのびなきゃいいのにな。

今日の透析ちゃん 9

病院は毎朝6時に起床。

べつに寝ていても構わないが、強制的に電気がついてカーテンが開く。
漫画家であるオレにとってはなかなか厳しい世界だ。
昨日もなかなか寝付けなかったが、なんとか眠ることができた。

間違いなく、彼女の恩恵だろう。
でも、脚を動かさないようにして、寝返りも極力うたないで寝てたせいで

右足がアホのように痛い。スジがどうにかなっちゃったかな…。
まあどうせ歩けないですしね。

今朝はこれから心臓エコーと胃カメラ。

極度の貧血の原因が、腎臓に起因するのか他所での出血なのかを探る。
エコーはまあ、機械を当てるだけだろうから別に問題はないけど、

マズいのは胃カメラだわね。
でも胃に針を刺すわけじゃない。
今のオレにとって一番の敵は透析の穿刺だ。
「おはようございます。栄養部です。ただいまからお食事をお配りします…」
館内放送が響く。でもオレには関係ない。

オレのところには食事はこないんだから。
それこそメシでも食ってれば気も紛れるんだろうが、

オレの頭の中は考えなくてもいいようなイメージばかりが渦巻くのだ。
でも、透析を始めてからというもの不思議と、食欲が戻ってきた気がした。

そしてエコーも胃カメラも問題なく終わる。

透析日記なのでくわしくは書かないけど、

胃カメラはそれほどキツいものじゃなかった。
いや、そうでもないな、それなりにキツかったです笑。
でも痛いとか苦しいとかはなかった。

胃の中をカメラがグリュングリュン動く感じが気持ち悪かっただけだ。
ちなみに胃カメラの間ずっと、オレは恋人の名前を脳内で叫んでいた。
そうしないとなんか、突然痛みが来た時に耐えられなそうでさ。

すっかりオレは痛みにビビっていた。
いずれにせよ、体内での出血は無し。

やはり腎臓に起因する貧血のようだ。

そして透析ルームへ。
「今日はいろいろ検査して疲れたでしょう。2時間でいいとしましょう」
いつも3時間だった透析が今日は2時間になった!やったね!
と、オレに近づいた看護婦さんがこう言った。
「おはようございます。シャントは左ですか?」
はい?シャント?
と、そばにいた別の看護婦さんが
「あ、シャントとかはまだ、うん、まだなんです。今はカテーテルで…」
なんか微妙な間。

シャントという単語自体は、ここで初めて透析をした時に聞いた。
「人工透析を本格的に導入することになれば、

シャントという簡単な手術を左腕にして、そこからやります。そっちのが楽なんです」
はあそうですかそうですか。
つかそれがなんだろうと、オレはまだ腎不全と決まったわけじゃない!
失敬な!
オレは心の中で反抗心の牙を剥いた!

今までと同様にベッドに横になって、昨日埋め込んだカテーテルのガーゼを剥がす。
そこがどうなってるのかなんて、とても見られたもんじゃない。
まあ寝てるから見えないんだけど。
脚の付け根から伸びているであろうプラグにチューブを取り付けて。
「では始まりました。14時20分までです」
なんか、今までで初めて、結構ラクチンに透析が始まった。

カテーテルを入れる時には死ぬかと思ったけど、入れちゃえば楽なもんだ。
でも問題は、カテーテルは大体2週間ぐらいで患部が膿む等の問題により

使用不能になるらしい。そうだったら反対の脚に付け直すんだ。
2週間に以内に退院!これがオレの生き様。

3時間でもキツいけど、2時間でも、ただ寝てるだけだとかなり大変だ。
ラジオ音声がなんとなく聞こえている。

オレは上を向いてるより横向きの方が楽なんだけど、もちろん横は向けない。
昨日血が漏れたということもあって、身体が硬直する。

なんとなくカテーテル部分が生あったかい気がして、

また漏れてるんじゃないかと心配になった。
あいかわらず、オレの横にある透析マシンを直視することができない。
オレの血が外に出てるという現実がおっかなくてしょうがないんだ。
まあいいや、もうすぐオレは退院するんだ。
そうそう、オレは絶対に急性だから。
だって症状が出たのは去年の10月なんだし。

昨日思い出した、聞きに行ってない検査結果で、

あの当時は異常がないってことになればますます急性じゃないか。
大丈夫!
オレは絶対に急性腎不全で、あとちょっとしたら退院するんだ!
2月になったらオレは恋人と一緒に住む計画だった。

そしてこのタイミング。
今は1月、そして入院は1ヶ月。
これはどう考えても、ギリギリ2月に退院間に合って、

「急性だったね良かったね!」

と爽やかな気持ちで新生活をスタートするという流れしかないじゃないか。
オレはお題目のように

「急性オレは急性、急性オレは急性、急性オレは急性…」と唱えた。

でも。

急性であってほしいと意識するほど、

実は慢性…という疑念が鮮明にイメージされた。
本当はもう慢性腎不全で決定なんじゃないか?
先生が奥で話し合ってるのが見える。オレのことを話しているのか?
「慢性だったらオレ、どうなるんだ…仕事とかどうするんだろう」
気分が晴れない。
はやく恋人に会いたい。
透析後、やはりカテーテルには厚いガーゼがバシバシ貼られる。
今日は漏れんなよ!


透析が終わって、面会時間。
今日も両親と恋人、3人が来てくれた。
オレは恋人に席を一瞬外してもらい、両親に告げた。
「オレ、ちょっと言わなきゃいけないことがある。オレは昨日すごく反省したんだ」
以前検査を受けたこと、それをビビッて聞きにいかなかったことを告げると、

両親は安堵したようだった。
「なんだ、改まって言うから、なんか良くない診断でも出たのかと思った」
しかも実は、その医者の名前も忘れ、診察券も無くしちゃっていたのだった。
両親に病院の捜索を頼む。なにやってんだオレ。

そして恋人とふたりにしていただく。
オレは今日、決めていた。
人工透析を受けていること、そして腎不全の可能性があるということ。
どうせしばらく出られない。単なる体調不良では通せない。
結婚を誓った相手に、「ウソ」はつけない。
本当のことを言おう。

どうやって切り出したらいいか分からずに、取り留めのない話をした。
彼女をベッドサイドに座らせて、話して、笑った。
ああ、オレはこいつが好きなんだな。

なのにこんな、こんなことになってしまった。
お前はどんな顔をするのだろう。
「…あのね、それでオレ、ちょっと話しておかなきゃいけないことがある」
結局、全くブツ切りに話を切り出す。
「昨日血をキレイにしてるって言ったけど、オレは今、人工透析を受けてるんだ。

まだ、そうなのかは分からないけど、もしかしたら、もしかしたらだけど、

腎不全ってことになる可能性がある。

でも、なんか、あと入院が3日遅れてたらヤバかったらしい。

なんとか大丈夫だったけど…」

けど…

でもオレはお前といたいんだ。

と、そこまでは言ってない。

なんて話したかは正直あまり覚えてない。
彼女を安心させる言葉も言えず、

「心配すんなだぜ!」という強がりも言えず、
オレはただ、自分が怯えるこの現実を彼女におっかなびっくり投げ渡してしまった。
ダメだな。
ダメだオレは。

そして、彼女は目に涙を溜めて

言った。


「そんなのいいよ。人工透析だっていいよ。

3日遅れで間に合ってホントによかった。

3日違ってたらもう会えなかったのかって思うと、

あたしそれがものすごくこわいよ。生きててくれてありがとう」

彼女は泣いた。
めっちゃ泣いた。
オレはただ彼女を抱きとめるしかできなかった。
「大丈夫だよ。オレは死なないから。大丈夫」
なんか、オレが慰めているのだった。
なんにせよ、良かった。
彼女は本当に強い女性だ。

いつもオレを受け止めて、支えてくれる。
オレは胸の使えが少し取れた気がした。
ベッドで針を刺され、歯を食いしばり、血を漏らして、

自分でトイレにも行けず、尿をコップに溜めて、メシも食えない。
正直、自分がひどくポンコツになった気がしていた。
必死に「急性」を唱えながら、現実を見ないようにしていたけど、

なんだか彼女の涙と一緒に、そういうものが流れていってしまったようだ。
そのまま2人でずっと、今までと同じように話をした。
いろんなこと、取り留めもない、どーでもいいような話ばかりだ。
ああ、オレって、
前と変わってないんかな…

まあ、そんなこたーないんだけどね。


そして夕方6時。
いつものように館内放送。
「こんばんわ、栄養部です。ただいまからお食事を…」
でもオレのとこにはこないんだもんね。

いいよ、オレは恋人と談笑するのですから!
と思っていたところへ
「岸さん。お夕食です」


えっ?えっ?


「あの、食事はダメって言われてたんですけど」
「今日からお食事出ます」
なんか、食事禁止というのは治療のためではなくて胃カメラのためだったようだ。
今日から食事!
なんだか胸が躍った。
そして、食事に胸が躍っている自分に、胸が躍った。

オレは入院する前のオレを思い出した。

一口食べるたびに恐ろしい吐き気が襲ってきた。
もう、美味しくバクバクと元気に食事するなんて無理なんだと思っていた。
でも今日は食事を食べたいって思ってる。

「じゃあ最初の一口はあたしが食べさせてあげるよ」
彼女がおどけて、白飯を箸で一口分つまんで差し出した。
オレはそれを口に含む。



その、




その時の、メシの味。





ああ…

おいしい…





とても、おいしい





オレは食べられる。
食事が取れるんだ。

ああ、とってもおいしい。



「うまい、うまいよ…」


オレは嬉しくて、本当に本当に、本当に嬉しくて、泣いた。
マジに泣いた。
どういう映画を観ても泣いたことの無いオレだったが、泣いた。
まだ自分は、人だ。
壊れ切ってはいない。
まだオレは生きてる。
「あはは、へんなの」
そう言って、彼女は笑った。




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つづく

きょうのぼく

orizarot


みんなーあけびだよー
ながらくのごぶさたでしたけれど、ぼくは元気です。
岸さんのだんなさんが締め切りに追われているよ。
ぼくはお腹がすいてるんだ!
みんなーあけびだよーあーあー

岸さんのおくさんは、

ぼくにようふくを着せることにはまっているよ。
昨日は子供服の安いのをかってきて
それをリメイクしたよ。
それを着せてもらったのがこれです!
かっこよしでしょう!


ぼくは着せてもらうあいだも、ぜんぜん暴れたりしません。
岸さんごふうふがそばにいてくれたら
ぼくはちっとも怖くないんだ。
お腹だってみせるよ。
だって僕はごきげんなんだよ!


岸さんのだんなさんがわかい頃には、
なめねこっていう、ねこさんが服を着たやつがはやったんだって。
僕にはそれはわからないな、まだ半年しか生きてないから。
あのね、こういうのを、じぇねれーしょんぎゃっぷって言うんだって。

岸さんのだんなさんが子供の頃って何年ぐらい前なんだろう。
生まれたばかりの僕にはけんとうもつかないよ。


僕のいちねんは、ひとのごねんと同じらしいから
岸さんのだんなさんが子供のころには
きょうりゅうとか、まだいたんだろうなあ。
こわいなあ。
ああ、僕はこの時代に生まれてよかった!
ごはんもおべんじょもちゃんとあって、
おもちゃもいっぱいあるもんね。

きょうのぼく

orizarot


あけびです。こんばんわ。

きょうはぼくのご飯のはなしをします。
ぼくはピンクのボールおっかけるのだいすき!
あ、ご飯の話をしますでした。
ぼくのご飯は40グラム!
いちにちに2回もらえるんだ。
まいにち、フードを食器に入れるカラカラって音がすると
もうテンションあがっちゃってたいへんだよ。
だんなさんにだっこされてたってダメなんだから!
ごめんね、あとでまただっこしてもらうから!
ぼくいそがしいんだ!いそがしいんだから!
もぐもぐもぐもぐもぐ

ぼくのご飯は40グラム!
だいたい2ふんぐらいで食べ終わるよ。
ああ、はやくつぎのご飯にならないかな。

きょう、岸さんごふうふは
Wiiっていうゲームきかいで出前をとっていたよ。
テレビにピザをうつして、きゃあきゃあ喜んでいたよ。
あんなの映ってるだけでほんとうは食べられないのに、
岸さんごふうふはかわいいもんだね。
ぼくなんか食べられなきゃいやだい!
って、あれ、15分ほどしたら知らないおにいさんが
ピザを持ってやってきたよ!
すごい、あのおにいさんが岸さんごふうふの飼い主なのかな?
岸さんごふうふがピザを食べたいって知ってたんだね。すごい!
ふたりはとってもうれしそうに食べていたよ。
そのあとチョコもアイスも食べてたよ。
ぼくのご飯なんかたった40グラムなのに!
べつに根に持ってるわけじゃないよ。
岸さんごふうふはご飯おわったらきっとぼくと遊んでくれるはずだから
ぼくはそれが楽しみなんだ!

あれ、あらびき団見始めちゃった。
ちぇっ。

きょうのぼく

orizarot

みんな、ぼくだよ。
あけびだよみんな。

あれから毎日、いやだというのに抱き上げられています。
ぼくはどうやら脚がじめんからはなれるとおっかないらしんだ。
でも岸さんごふうふはそんなのおかまい無しだよ。
ぼくは毎日抱かれて抱かれて抱かれ疲れてねむるよ。
でもそのおかげで、さいきんはけっこう抱かれても大丈夫になってきたんだ。
ああ、しんぽってすばらしい!

せいかつに慣れてくると、ぼくのかくされたいちめんが現れてきたよ。
ぼくはすごくやんちゃなんだ。
昨日なんてあたらしくもらったオモチャがすっごく気に入ったから
ぼくはすごくはしゃいで、もう、あの、すごくはしゃいで、あの、
飛んだり跳ねたりあごぶつけたりして、
でもおもちゃ、おもちゃいい、おもちゃ!いい!

そんでテンションあがって騒いだらおくさんに怒られたよ。
ケージから出してもらえなくなって、おもちゃ取り上げられちゃった。
ああ、よのなかはままならないな。
おくさんはだんなさんとはとってもラブラブだけど
ぼくにはきびしいよ。
「あけびっ!」っておこるよ。
ぼくはげんきよく「わん!」って答えて、

うれしくなってテンションあがって
さわぐとおこられるよ。
ああ、よのなかはままならないよ。
でもきょうもたのしいな。