そんな風に、毎日テガラランの棚田へお散歩していた私。
徒歩10分ほどで、何も辛い距離ではなかったが、ホテルの手前に小さな近道がある事に気がついた。
本来ならば、舗装された道を、木に沿ってぐるりと回る所なのであるが、回らずともすぐ降りていける手造りっぽい階段があったのだ。
余り使っていないような、ちょっとうさん臭い階段だったから、使わない方がよい、と今なら冷静に、そう思う。
だが、その時は、興味の方が強くて、その階段を下りてしまったのだ。
すると・・・・・
あまり使われていなさそうなその階段は、苔むしている上に、近くの売店から流れている水で、つるつるな状態になっていて、
私はころんだ。
あぁっ、と思ったが、勢いよく滑ってしまったので、もう止めようがない。
ずるずるずるっと、階段の下まですべり落ちてしまった。
痛い・・・・と思って体を見ると、一番打った足は、長ズボンをはいていたおかげで、ズボンを苔と泥で、どろどろに汚しただけですんでいた。
滑り落ちる体をささえようとしたのだろう。
左手のうでには、大きな青あざができた。
それでも、青あざなら、自然に治る。
問題は右手だった。
きっとどこかをつかもうとしたのだろう。
右手の指は切れていて、出血していた。
とりあえず、傷口についた、苔と泥を落とさないといけない。
私は、苔と泥のついた恥ずかしい姿で、フロントで部屋のキーを受け取り、自室に戻った。
部屋は2人の若い男性スタッフが、お部屋の掃除中だった。
私は、傷口を洗わせてね、と言って、洗面台に行った。
私は思った。
バリの水道水は、歯磨きで口をゆすぐだけで、下痢をするような水である。
どんなバイ菌がいるかわからない。
この水道水で傷口を洗ったら、化膿してしまって、大変な事になりそうだ。
とりあえず、青あざだけの左腕は、水道水で洗った。
だが、傷口が開いている右手は、
ミネラルウォーターを使って洗った。
もったいないかもしれないが、海外で、傷口がぶわーっと化膿して、やっかいな事になるのは避けたかった。
お掃除をしていた、少年の面影を残す若者が、とても心配してくれた。
英語があまりうまくない彼は、お水は冷たいから、お湯を使った方がいい、と、水道の蛇口を調整してくれる。
また、タオルでふいて、と手渡してくれる。
子供の絵柄のついたバンドエイドも、使って、と手渡してくれた。
休暇で来た日本人の事を、ただ、お金を落とす相手、だと思わずに、本気で心配してくれた事に、ちょっと胸があつくなってしまったひとときだった。

