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城郭模型製作工房

城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

【お知らせ】
熊本城本丸模型の展示の延長が決定いたしました。
5月31日までです。

現在、新型コロナの感染拡大防止のため、熊本城ミュージアムわくわく座は閉館中です。
再開時には改めてお知らせ致します。

またたくさんの方に見ていただける日を楽しみにしています。

さて、豊臣大坂城ですが、今週は体調を崩してしまいました。どうやら、新型コロナの情報を大量に浴びてしまい、ストレスがかかったようです。いわゆるコロナ疲れというやつです。子供と高齢の両親がいるので、ずっと緊張して暮らしていました。模型を作っているばかりと思われるかもしれませんが、結構出歩く機会も多いので。
去年からの疲れも溜まっていたのか、一気に吹き出した感じです。左目のまぶたの痙攣が止まらず、偏頭痛が起きたりして、自律神経失調気味になってしまいました。

デザインナイフのコントロールもいつものようにいきません。櫓を二棟つくりましたが、思うように行かず、どちらともボツになりました。Twitterも気が乗らず。
造形はお休みして、樹木ができました。

気分転換が必要と言われ、2日がかりで部屋の大掃除をしました。

明日から気分を変えて進めます!!


【ここからは記録のための独白です】
今回のショックは、ちょうど東日本大震災のあとにそっくりです。あの時は一月くらい食欲が減退して気分が落ち込んだのを思い出します。

疫病の蔓延は歴史上幾度となく繰り返してきましたが、今まさにその只中にいることを実感します。

大好きなイタリアの惨状がつらいです…

ご存知の通り、新型コロナウイルスに免疫を持っている人はいませんから、感染は地球上で広がる一方です。
おまけにほとんどの人は無症状か軽症で、自分が感染しても気付かないのです。そしてその無症状や軽症の人が感染を広げていくのですね。
海外ではとにかく検査をして、無症状の人も含めて全体像を掴もうとする方針のところが多いようですが、日本は独特の体制を取っています。
クラスター対策といって、小規模な集団感染を見つけ、その濃厚接触者を洗いざらい発見して、しらみつぶしに堰き止めていくのです。この手法は、かつて梅毒などの感染症対策として大変効果があったものだそうで、今のところ、事実として日本ではそこまで大規模には広がっていないようです。どうにか抑えこめている。清潔好きな風土や、全国一斉の休校の措置で緊張感が高まったのも功を奏したのかもしれません。
社会活動をできるだけ止めることなく、同時に感染症対策を取るというかなり高度なことをやっている。

検査を絞りすぎていて、隠蔽しているのでは?という意見もあるようですが、本当に感染が広がっていれば、検査しようがしまいが、重症の方が病院に次々に運び込まれる事態となるため、隠しようがありません。

ただし、若年層は殆どが軽症か無症状なので、若年層のみでのクラスターが発生していた場合、重症者が出ないこともあり、発見が困難だったり、遅れたりするのですね。水面下でのクラスターが広がった場合、いつどこで感染爆発が起きるか、薄氷を踏むような状況でもあります。
そして、感染してから発症するまで潜伏期間があり、発症後、受診→検査までの時間を合わせると、約2週間だそうですので、今現在、毎日発表される数値は、あくまで2週間前の感染状況の反映だということです。タイムラグがある。
なので、ある日を境にして、ある地域で2、3日で患者が倍に増えるような増加を示した時に、オーバーシュートが発生したと察知して、そこで都市封鎖のような対応を取ったとしても、過去2週間に起きていた感染が、その後2週間にわたって表に表れてくるので、打つ手がなくなるのだそうです。その時点で取った対応の効果がどれだけあったのかを評価できるのは、さらにその先なので、1ヶ月くらいかかってしまう。

既知のクラスターとの繋がりがなく、感染経路がわからない孤発例が増えてくると危ないのだとか。クラスター対策の専門家が、手を尽くしています。しかしその対策の指揮を取れる人材に限りがあるようですね。
一人一人が緊張を緩めずに、手洗いや咳・くしゃみの飛散防止などを地道に続けていくしかありません。
自分がうつされないように、ではなくて、人にうつさないようにと心がけて、付き合いが悪いと言われても、引き続きしばらくは飲み会など控えようと思います。

皆さまもくれぐれもお気をつけ下さい。
風邪気味だと思ったら感染したと思って自己隔離を。










13日に発売されましたアーマーモデリング 4月号。
連載は姫路城です。
フジミの大姫路城を拡張しています。

ペーパークラフトを型紙に使って建物を自作する方法をご紹介しています。

製作の狙いなど詳細は誌面にてご覧ください!

【寄稿文のお知らせ】
母校の慶應義塾大学の機関誌、『三田評論』に寄稿させていただきました。オンライン版も公開されています。読んでいただきたくお願い申し上げます。



さて、製作を進めています豊臣大坂城詰の丸ジオラマです。
天守につぐ大きな建物、四重の大櫓がほぼ完成しました。

今回、テレビドラマで使われたCGのイメージで、とのご依頼です。


そのまま再現すると著作権関連の問題が微妙なところなので、全体として全く別のオリジナル作品に仕上げます。

今回は夏の陣図屏風と冬の陣図屏風双方のイメージをミックスして、屏風絵自体の雰囲気も加味することを目指しています。

この四重の大櫓は、夏の陣図屏風に描かれるものです。

位置は詰の丸の黒鉄門脇、本丸図では十間に八間の矩形部分になります。

ご覧のように本丸図では空白になっていますので、宮上茂隆先生は空き地として復元されています。

夏の陣図屏風の大櫓の描写については、

●家康の西の丸天守を象徴的に描いた
●家康の西の丸天守を豊臣方がここに移築した

などの説がありますが、本丸図は建物が描かれていないものも多く、いかにも大型の櫓台にも見えるので、実際に大櫓があったかもしれません。

今回のジオラマでは、夏の陣図屏風のイメージをもとに、最上階の窓を華頭窓として冬の陣図屏風に描かれる城内櫓の雰囲気を加味しています。







ご注文作品の豊臣大坂城詰ノ丸ジオラマです。
今回はジオラマの台の作り方を一例ご紹介します。

1/350見当で詰ノ丸を凝縮してジオラマ化しています。
本体はもうここまで進んでいます。
この台をつくります。

ジオラマの台で気をつけていることは、目立たず、あまり印象に残らず、かつ全体を引き締めるものにすることです。

一番多用するのは黒です。
格式も出ますね。変に装飾すると、格調が失われます。日本では昔から、格式が高いものはだいたい無地ですよね。シンプルイズザベストです。

黒のアクリル板も便利です。

漆塗りの飾り台のようなシャープさが持ち味です。
水面を暗示するような使い方もできます。

あとはアンティーク家具に使われるブライワックスを使う方法。

変わり種で少し主張しますがアンティークの花台を使用。

テーマもので錆びさせた銅板

など。

いろいろなものがありますが、あくまで台は作品を引き立てて、背景に徹してくれることが大切だと感じています。

今回は一番基本的な台を自作するやり方です。

ベースの板の大きさに合わせて枠木をカットします。

間に適宜、桟を入れます。

木工用ボンドで枠木を貼り付けます。

貼り付けたところです。

表から小さな釘で補強します。ネジを使う場合もあります。できるだけ目立たない場所に打ち込みましょう。

枠同士も固定します。

周囲に化粧板を取り付けます。角は45度で合わせます。

化粧枠を取り付けてゴムで圧着します。

隅をぴったりきれいに合わせます。隙間があったら木工パテで埋めるなどします。このあとペーパーがけをして仕上げます。
着色はジオラマが完成間近になってから行います。

今回は水堀に囲まれていますから、水の深さだけ化粧枠を高くして囲っています。化粧枠の上面と水面が同高で仕上がります。

久しぶりに完成まで追って記事にしていきますね。


引き続き地面のつくり方です。


前回、質感をつくって色を出すところまで行きました。こんな感じです。

今回は仕上げです。

仕上では多くの場合、緑の表現と関連してきます。
前回まででつくった地面に、パウダー素材で緑を入れます。

緑の表現に使う素材や基本はこちら。知恩院三門の製作記事です。この時は一面の緑表現ですが、上の写真のように土の地面のキワなどに緑を入れるときも基本は同じです。

土の地面と緑を隣り合わせる時は、その境目が大事になってきます。
リアルにしたい場合は、緑と土の地面の境目をボカす。


作り物っぽくしたいときは、キッチリ境目を出します。


ボカす時に使っているのはパステルです。
パステルの黄土色と白と灰色を茶こしなどの目の細かい網で擦って粉にして混色します。それを柔らかい筆にすくって、擦り込んでいくのです。
これは1/1000の竹田城ですが、ご覧のように、緑のパウダーの上からパステルを擦り込んでいます。

まず、緑のパウダーをまばらに撒いて、乾燥後にパステルを擦り込んでキワをぼかしていきます。
この写真は1/100の竹田城ですが、パステルはスケールに関わらず有効です。

最後につや消しのトップコートを吹き付けるなどして定着させましょう。

完成するとこんな感じ。

【応用編】
地面の色をグレー系にすると、公園のように整備された砂利敷の地面になります。こちらもパステルでニュアンスを加えます。

完成。

砂のテクスチャーを作るのに、リアルサンドを使わずに、すでに粒状の素材が練り込まれた塗料などを使う方法もあります。
右のナチュラルサンドは、色が付いていないので、アクリルガッシュで自由に着色して使います。
薄め方を工夫したり、乾燥後にペーパーがけをしたりして表情を調整します。

それぞれ粒の大きさなど感じが違いますので、場面に応じて使い分けましょう。乾いた後に色を上からかけて様々な色にすることもできます。あくまでテクスチャー表現として使います。

【参考・姫路城の場合】
手前はコンクリート舗装、奥は土の地面にコンクリート舗装道路

①下塗り:セピア使用
※コンクリート部分はスチレンボードにモデリングペースト塗り/土部分は壁補修パテにサンドペーパーがけ

②土のテクスチャーづくり
地面色+ナチュラルサンド
※コンクリ舗装部分にはニュートラルグレー7

③地面中塗り
土部分に地面色

④上塗り
全体にエナメルの濃い茶系をごく薄めて塗り、色を落ち着かせる

完成

【様々な地面表現】
●舗装部分との対比
舗装部:サンドペーパーを貼り込み着色

●石畳、舗装、土地面混合

●砂利敷

●築地塀での区分け

●乾いた地面

●まばらな草

●庭と雨落ち溝

●展示模型風

などなど。

【関連】
1/150での石垣のコケと背の高い草表現は

拙著
に素材や接着剤など詳しく解説していますので参考になさってください!



地面の作り方の前に、熊本城ミュージアムわくわく座での展示を動画にしました。
2月29日より、新型コロナウイルスの拡大防止のため、わくわく座は当面の間、臨時休館となりましたので、せめて映像でお楽しみください。
昨日は急遽、休館中のわくわく座へ行って、模型のメンテナンスをしてきました。
再開を待ちましょう。





それでは、地面の作り方、やっと記事にします。
お待たせ致しました。

【心構え】
ジオラマの地面は、全体の背景になる要素なので、目立ち過ぎてもいけません。不自然だと悪目立ちするので、とにかく「自然に見える」ことに注力しましょう。

いくつか地面の写真をピックアップしてみます。

豊臣大坂城[1/350]


彦根城[1/200]

豊臣大坂城[1/150]

福山城伏見櫓[1/150]

熊本城[1/150]


いろいろな表情がありますが、基本の表現技法は全て同じです。
つまり

下塗り
 ↓
質感表現
 ↓
色入れ
 ↓
仕上げ

の流れです。


手順に沿って。

①下塗り
下塗りは大切です。
黒っぽい色で全体を塗りつぶします。
これには大きく二つの意味があります。
まず、白い色を絶滅させること。
造形時に粘土や壁補修パテを使う場合、全体が白く出来上がります。「白」という色は強烈で、自然界に真っ白なものは存在しません(花を除く)。少しでも白が残っていると、これがとても目立ってしまいます。
まず、白を殲滅させるのが第一です。

2つ目の目的は、色の密度を確保すること。
ホビーでは、真っ黒な下地から色を起こすことをMAX塗りと言ったりしますが、濃い色の上に薄い色を構成することで、薄い色であっても重厚な色味を出すことができます。地面のように中身の詰まったものを表現するには、表層的な色味だけでは質感が表現できません。

上の写真の1/150熊本城は下塗りにアクリルガッシュの「セピア」を使っていますが、この他に、岡山城などでは「赤墨」

雪の松江城では「ランプブラック」

を使っています。
今現在、下塗りにはほぼ「セピア」「赤墨」「ランプブラック」のいずれかを使っています。最終的には隠れてしまいますが、この下塗りの違いは、最後まで影響していると感じており、今後もう少しバリエーションを増やしていくことになると思います。


この下塗りの上に色を構成していきますが、次に

②質感表現をする
地面の砂の粒など、ザラっとした表面を、造形します。
これには実際に砂状の素材を使用します。私はモーリンの「リアルサンド」を使っています。
この時、全体に均一に撒くのではなく、まばらにムラをつくります。この写真の彦根城は、比較的密に撒いていますが、実際の地面は踏み固められたりして、思ったより平坦なので、パラパラっと撒くくらいで充分です。

リアルサンドでテクスチャーをつくったあとに、改めて下塗りの色で塗りつぶす場合と、そのまま色を乗せていく場合とあります。

リアルサンドの撒き方で、表現の幅を広げることができます。
1/500くらいのスケールになると、リアルサンドの粒がオーバースケールになってくることもあるので、そのような場合は、全く使わないこともあります。

③色を入れる
いよいよ、地面の色を入れていきます。

地面の色に使うのは、アクリルガッシュの「ホワイト」と「砥粉色」、「ニュートラルグレー5〜7」の混色が基本です。
混色は、砥粉色を白で明るくして、グレーでくすませる、という感覚です。さらに焦げ茶系の色を少量加えるなどして、少しニュアンスを変えたりすることもできます。

ここで、砥粉色に白を加える場合と白に砥粉色を加える場合があります。結果は同じなのかもしれませんが、私の中では大きな違いです。

色は難しくて、同じ色でもスケールの違いによって見え方が変わります。毎回、スケールと作るものに応じて、目の奥にあるイメージの色に近づけて色を決めています。

目の奥にイメージがない場合は、画像検索で航空写真を見つけるなどして、お手本にしてみてください。

色を入れる時に濃い目に溶いて塗りつぶすようにする場合と

下地を透けさせながら薄く溶いた色を幾重にも重ねて

少しずつ濃くしていく方法があります。

全体を濃い塗料で塗りつぶすと、展示模型のような無機質でキッチリとした雰囲気になります。

フィンタリングのように、下地を透けさせながら薄い塗料を重ねていくと、

深い色が出て、この後の仕上げでさらにニュアンスを重ねていくことができます。

地面の1回目はここまで。
次回は仕上げの段階に進みます。