木製建築模型のススメ②ジオラマの作り方【知恩院三門】 | 城郭模型製作工房

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城郭模型作家・島 充のブログです。日本の城郭および古建築の模型やジオラマの製作過程を公開しています。

ウッディージョーの木製建築模型、知恩院三門。
今回はジオラマ部分です。

今日は晴れたので青空の下で撮影しました。
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円山公園の北側から出ると知恩院。
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南は東福寺、北は銀閣まで、東山に沿って並ぶ寺院はどこもそれぞれの趣があり、何度訪ねても特別な時間と空間を感じます。
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部材の木口面の白の爽やかさ。これがやりたくて彩色仕上げにしました。
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東大寺南大門より大きく、現存する門としては日本最大。平成14年に国宝に格上げされました。
京都三大門のひとつ。京都の三大門はこの知恩院三門、南禅寺三門、東本願寺の御影堂門(仁和寺の仁王門を数える場合もある)です。東福寺三門が来ないのも不思議ですが、三大〇〇の常で、3つ目はたくさんあるのです。

この三門は徳川秀忠の寄進。楼上には釈迦三尊と十六羅漢が安置されています。
もうひとつ有名なのが、ともに安置されている白木の棺と夫婦の木造。

これはこの門の造営奉行だった五味金右衛門が、造営予算が大幅に超過した責任を取り、夫婦で自害したといい、その菩提を弔うためだとか。木造も自身で彫ったと伝えます。

さて、ジオラマ部分の作り方です。
一般販売されないキットでの説明になってしまいますが、広く応用が利く箇所のみ記事にします。
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【石垣】
キットの指示だと、型紙を貼り付けて、様々な大きさの石パーツをひとつひとつ貼り付けていく表現方法になっています。
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白木のまま完成させるなど、木製にこだわる場合は指示通りがよいと思いますが、ジオラマ作品に仕上げるので、この石は使いません。

型紙の大きさに合わせてスチレンボードを切り出し、石積みをフリーハンドで彫っていきます。
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今回は油性ネームペンの細い方を強く当てながら、彫り込みと同時に溝の黒まで入れました。その後、古い剣山を使って石の表面に細かい凹凸を入れました。
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拡大。上はでこぼこを入れる前です。
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この表面にモデリングペーストを塗りつけてさらに質感を出していきます。少し水で溶いて粘り気を調整します。
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モデリングペーストはベースに貼り込んでから塗ります。同時にベースとの接着面にも塗り込み、周りとも馴染ませていきます。
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ポイントは溝にもしっかりペーストを塗り込むこと。
スチレンボードが露出していると、後で塗装をした時そこだけ質感が違ったり、光って見えたりして困ります。

ちなみに基壇と石段はモデリングペーストを擦り込み、ペーパーがけをしてジェッソを塗り、木の質感を消してしまいます。

ベース全面に濃い茶系の色で下塗りしたあと、丁寧に塗装して石垣の完成です。
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【地面と草地の表現】
前回知恩院に行った時は、まさか模型にするとは思っていなかったので、画像検索から三門周辺の地面の写真を探しました。
基壇周辺には雨落ち溝、そのほかは細かい砂利敷きになっています。
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基壇の塗装と地面の下塗りをします。基壇の周りには雨落ち溝を作るため、プラ棒を巡らせました。
草地の下地は濃い茶系にしています。これは白など明るい色はとてもよく目立ち、完成後に興ざめしてしまうからです。ジオラマはいかに白を消すか、がひとつのポイントです。
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雨落ち溝に鉄道模型用のバラストを入れ、接着剤を流し込み固着させます。
草地の下地のパウダーをのせました。マットメディウムを接着剤として使っています。
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草地の表現に使った素材はこの3種類。
下地がブレンディッドターフのアースブレンド、その上にファインターフのバーントグラスとグリーングラスです。
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草地というと鮮やかな緑を使いがちですが、ゴルフ場や人工芝みたいになってしまうので、緑と思わずに茶系と思うと自然な感じが出ます。

下地のアースブレンドが固まったら、上から薄めたマッドメディウムを染み込ませます。
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バーントグラスをまばらにふりかけます。抹茶塩みたいな色です。
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その上からグリーングラスをこちらもまばらにふりかけます。
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乾くとこんな感じ。
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石垣の隙間にもグリーングラスを入れ、苔を表現しました。
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【樹木】
知恩院三門周辺の樹木を見てみると常緑樹は高い松、落葉樹は桜があるようです。
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松はカトーの針葉樹の幹を使いました。枝を水平に曲げて樹形を松に近づけてみました。
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桜の木はオランダドライフラワーとコースターフで作ります。
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オランダドライフラワーには葉っぱが付いているので、ひとつひとつ取り除きます。
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細かい黒い粒(種?)も無数に付いていますが、これは歯ブラシで叩くようにこするとポロポロと取れてくれます。
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瞬間接着剤を使って枝を増やしたりして樹形を整えます。
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幹に着色。エアブラシで茶系を全面に吹いたあと、グレーベースの色を作り、筆で幹に着色していきます。
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葉っぱの接着にはスーパーフィックスを使いました。界面活性剤が入っているので、バラストやパウダーの固着にはとても便利です。薄めてもしっかり接着力があるので、最近重宝しています。
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これを筆で丁寧に枝先につけていきます。マッドメディウムでも代用可能です。
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コースターフをつけます。フライのパン粉をつけるみたいな感じです。
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完成した樹木。
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ベースにピンバイスで穴をあけ、樹木を立てて完成!
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立派なインテリアジオラマになりました。
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ちなみに、台枠の塗装にはブライワックスという蜜蝋ワックスを使っています。これはイギリスの家具に使われるもので、木の表面にスチールウールたわしで擦り込み、布で磨き上げるだけで重厚な色とツヤがでてくれます。