尼僧物語[The Nun's Story](1959)を観る

 

オードリー・ヘップバーン30歳の時の野心作
まだまだメイクに頼らずとも美しい頃
IMDBによると
オードリーのお気に入りの1本らしい

 

尼僧になるため家から出て行くシーンから始まる
姉妹は反対している 父親は黙って修道院まで付き添う
何故俗世間を捨てるのかは語られない
父は成功した外科医
彼女は父の元で働いた優秀な看護師

 

尼僧としての資格を得るための修行は文字通り修行
修道士同士は手話で会話し
言葉を基本的に交わしてはいけない
世俗を断ち切るため容姿が気になる鏡を見てはいけない
本当にストイックな毎日

 

自己犠牲の最もたるものは
念願のコンゴへの医療赴任のための試験で
上司から他の者へ譲るためにわざと間違えろと言われる

 

コンゴで従事する医師との間に男女間の微妙な空気が生じる
演じるのは「ネットワーク」で死後アカデミー主演男優賞を受賞した
ピーター・フィンチ(メチャメチャカッコいい)
もちろん尼僧の立場では許されない
尼僧としての使命感からの奉仕、充実の日々
落胆、挫折が淡々と描かれる

 

高校以来30年ぶりくらいに観た
一見ドキュメンタリーかと思うようなタッチ
だが、そこは監督フレッド・ジンネマン
淡々する中にもめりはり、ドラマがある
「我が命つきるとも」「ジャッカルの日」「ジュリア」「氷壁の女」
すべて一流のエンタティメント
最も好きな監督の一人

 

オードリーの最も美しい右側のプロフィールショットが
ほとんど無いという意味でも新境地
オードリーは常にその時代の名監督と仕事をした
「ローマの休日」ウイリアム・ワイラー、
「麗しのサブリナ」「昼下がりの情事」のビリー・ワイルダー、
「マイフェアレディー」のジョージ・キューカー
そして、フレッド・ジンネマン

 

オードリーファンでも、もしかしたら避けたくなるような
地味な作品だけど見る価値あり
ラストの明け放たれたドアから立ち去るショットの長回しは
大好きなジョン・フォードの「捜索者」を想い出させてくれる

 

カミさんは映画の話になるとあんたのブログはやたら長い
というが言わなきゃ分からんだろ
の押し付けで説明過剰気味気分
スンマセン


***

 

2012/2/23(木) 午前 6:22

 

大学時代、暇があるとキャンパス内の
芝生広場で寝転がって本を読むことが多かった
主に翻訳物のミステリーだった

 

ある日、当時親しくしてたガールフレンドと一緒の時
彼女が
「ねえ、無人島で一人ぼっちになってしまったとき
 どんな本を読みたい?」と聞いた
僕は間を入れず
「アメリカ陸軍サバイバルマニュアルⅠ&Ⅱ」
と答えた

 

「はぁ?夢の無い人ね。」
と言い放ち立ち去った

 

「ツルゲーネフの初恋」なんて答えを
期待していたのか?

 

男は生き延びなければならない(女も)
3.11.があったから余計にそう思う

 

この本は有害な動植物の解説から
汚染水の浄化方法、わなによる野生動物の捕獲方法
革はぎ、わたぬき、星による現在位置の確認
そして放射能汚染地域でのサバイバル方法まで
詳しく書いてある
いざというとき絶対手元に置いておきたい

 

ツルゲーネフは燃やして暖をとること
以上は期待できない

 

彼女とは結構気が合ったが
その後先細りになってしまった
原因は分からない
でも僕は生きている(多分彼女も生きている)

 

やっぱり「ツルゲーネフの初恋」を
ゆっくり読める人生がいい
(因みに「ツルゲーネフの初恋」は手にしたことも
 ありません)

 

***

 

2012/2/17(金) 午後 11:07

「君は特に体に不自由があるとは思えないけど
 身障者ですか?」

丸亀製麺岐阜入舟店の駐車場
時間は11:30過ぎ
駐車場の車はまばら
いくらでも空いてる
入店する僕の眼の前で
彼は身体障害者用駐車場に停めた

年齢たぶん20台半ば
ネクタイを緩めた上着無しのシャツ姿
ただし、スーツのピースかもしれないパンツは
ヒップハンガー気味

「シンショウシャ?」
彼は聞き返した
「身障者。」

「?」

「身体障害者!」

「?」

「君。身体障害者用駐車場に停めたでしょ?
 だから聞いたの。どこか悪いとこあるの?」

「別に」

「じゃ、何故身障者用駐車場に停めたの?」

「はぁ~。知りません。」

初めて句読点を付けてもいいような会話になった。

僕は冷ぶっかけうどん大盛りをオーダーしたあとの@カウンター
僕らの店内の喧騒に負けないような声で話してる

店員も聞いている

彼からの言葉はない
車を動かそうという気概は微塵も感じられない

「悪いのは頭、性根だけでなく眼もか?」
と口にしかけたが止めた


願わくばどんなに小さくてもいいから
彼にリグレットの気持ちが芽ばえれば。

がんばれ日本。


***

 

2012/1/30(月) 午後 11:22