小津安二郎監督の「東京物語」(1953)をベースにしている
クランクイン直前に起きた東日本大震災を考慮し
震災後の東京、日本の状況を描く必要があると脚本を書き直してる
終戦後の影がうかがえる東京物語に対するリスペクトもあったと思うが
長く続く不況、大きな災害を経験し活路を見出せない中で
大きな共感の笑いと涙で迎えられる作品にしたかった
と書いている
尾道に住む老夫婦が上京し子供を訪ねる
長男は開業医、長女は美容院を経営している
親の上京を歓待するために東京見物を計画するが
急患や地域の行事でままならない
それぞれの家も老夫婦が泊まるには圧倒的な窮屈さ
いっそ、ゆっくりしてもらおうと
兄妹でお金を出し合ってみなとみらいのホテルを取る
(東京物語では熱海の旅館)
だが高層階、ネオンライト、大声の外国人で熟睡はできない
一泊早く切り上げて戻ると待っていたのは非難のまなざし
「いつ帰るんだろう」直接言うことはないが本音がのぞく
「いやお前じゃよ」
その前には立ちくらみという形で母の死の前兆も描かれる
親切に老夫婦に接する
父親からは実の子供よりもあんたのほうがよっぽど親切だと漏れる
東京家族では 蒼井優扮する定職についていない三男のガールフレンド
とのふれあいが母親の顔を一番輝かす
「とってもいいことがあった」と満面の笑み
何があったかは観客にはわかるが父親には分からない
山田洋次はドラマメイカーとして
きっちりと撮る
小津は映画作家として
きっちりと撮る(ただし死は直接描かれない)
東京物語を観なおしたらやっぱり同じ場面で使われてた
違うのは「母さん死んだぞ」と東京家族が続くのに対し
東京物語は「今日も暑うなるぞ」と続く
丁寧にショットを積み重ねる
小津の時間軸は一転鎖線のように
ところどころ途切れ
ショット間に風景が入る
文学における行間のように
「一番観たいと客が思うものは隠せ
客に説明しようと思うな
どう解釈しようと客の勝手だ」
2013/2/2(土) 午後 4:53