西日本豪雨被害に遭われた方々と、
復興に向けてこの猛暑の中でボランティアなどで奮闘されている方々のご苦労を思うと心が痛みます。
お体に十分 お気を付けくださいますようお願い申し上げます。
H16年7月13日、新潟の県央エリアを襲った7・13水害の際、
当時、私が勤務していたエリアが大水害に見舞われ、8件のお客様家屋が床上浸水の被害に遭いました。
その際に、災害の1週間後に、オーナー様向けに送った報告のお手紙が、当時の災害の状況と、
今後の課題として参考になるのではないかと思い、ここで公開いたします。
緑色の文は現在での加筆です・
新潟県激甚水害のご報告
被害状況
県の中央部を襲った激甚水害は、弊社にて建築されたオーナーの家屋も飲み込み、
床下浸水による被害家屋は合計で8件に及びました。
内訳は、床上30cmの浸水が3世帯、他5世帯は床上60cmから100cmとなります。
中には入居後、わずか2ヶ月で、決壊した堤防より200mほどしか離れていないところで被災した方。
平屋なので逃げ場がなく、押入れの棚で三夜を過ごしたお年寄りの世帯。自衛隊に命からがら救助された方もいます。
また、水害時の保険に未加入の方もあり、今後の復旧における経済的なご負担も考えると、世帯ごとの被害状況は様々です。
お引渡し済みの家屋以外では、建築工事中の敷地内で大きな地崩れの発生が一件。
把握しているだけで、オーナーの方の工場や社屋の被害が二件浸水にのぼり甚大な被害が発生しました。
被災地はこれから衛生面の悪化による食中毒や漏電などの二次災害も考えられ、予断は許されません。
このように、被災された方々のご苦労とご心労をお察しすると言葉にもなりません。
我々をここまでの会社に育てていただいたのも、お客様のおかげでありますので、
今後の災害復旧のご面倒を通じて少しでもお役に立てるよう活動している最中であります。
今までの対応
7月13日 五十嵐川が三条市曲渕付近の南側堤防にて決壊。
7月14日 一部社員が被害現場へバイクと徒歩にて偵察。曲渕付近まで到達して被害状況を確認。
本条寺・四日町付近は道路冠水のために近づけず。ご連絡の取れない状況。
(自衛隊、消防の人命救助活動のピーク)
7月15日 緊急対策本部設置。長岡・新潟より2部隊現地へ偵察。被災現場8件の状況を把握。
最も被害が甚大なI様邸の床下水抜き作業。
7月16日 本格支援活動開始。被災家族へ救援食料配布。お年寄り中心で片付けのできない2世帯へ、
そうじの手伝い9名派遣。全世帯の床下水抜き処理。電器工事技師の漏電検査の開始。
7月17日 本社より社長のEが被災状況を視察。給湯器の手配。そうじの続行。
7月18日 屋内消毒薬の配布。ほぼ緊急危険対策は終了。今後は本格的な家屋の復旧工事を行なう。
* 当時の会社の本社は山梨で、対策の指示はなかったが、一刻を急ぐ事態だと判断。
私と一部社員の独断で支援活動を勝手に開始ししました。
お知らせ (水害から学ぶこと)
新潟県は四季がはっきりしており、自然にも恵まれているために、自然は人間にとってやさしい存在であることは間違いありません。しかしそのことが「自然災害がない地域」であることではないということに気付かされました。事実、新潟県は過去十年で大規模な水害被害が3回発生している地域です。また、あの新潟地震から40年経過し、地震を引き起こすエネルギーが地盤に蓄えられていることでもあります。
つまり、こうした自然災害に対してどのように向き合うかを考えさせられた災害でした。
*まさか翌年に、中越地震が起きるとは知るすべもなかったことですが、預言となってしまいました。
1:過去からの智恵に学ぶ
三条市曲渕の堤防が決壊したところから1Kmほどしか離れていないところに住むオーナーの家屋は、床下20cmのところまでの浸水で済み、奇跡的に被害がなかったのです。200年ほど前より住み続ける農家の家屋であったので、この方の敷地は周囲より1m以上も小高くなっていました。今のような排水施設がしっかりしていなかった昔の人は、一時堤防が崩れるとどの付近まで水位が上昇するか知っていたために、そうした心配のないところに家を構えたのです。それが78年ぶりの水害になって、先人の智恵が子孫の被害を食い止める結果になりました。
新潟平野は一帯湿田で、小高いところに道を開き、その街道に沿うような形態で集落をつくりあげました。だから、古い街道沿いや古くからの神社のある付近は水害の難を免れることになったのです。
2:本質的なものの良し悪し
新潟県は四季を問わず多湿な風土なので、今も昔も木造が良いといわれていたこと。つまりは本物の木材は乾けば問題がないので、家の構造として軸組みを木造にしてきたことの重要性が、説得力のある形で明らかになりました。
また、決壊した堤防の間近の現場は、柱状改良工事をしていたおかげで、洪水の水流で基礎の下の地盤が1mほどの深さまでえぐれながらも、奇跡的に改良杭に支えられ家屋はそのままの状態で残りました。
その隣家は、改良工事をせずベタ基礎だけで対応したため、地盤がえぐられ、家屋は大きく傾いたまま2mほど流されてしまいました。
気候風土に適したものを、正しい施工で建築することの重要性が、当たり前のことですが明らかになりました。
3:なにをすれば良いか
起こるべくして起こる自然災害は、天の決めたことなので人間には避けようがありません。
出来る事は、その被害を最小限にするということにつきます。
まずは、被災した当初の生活を守るための備えをしっかりすること。つまり、AMラジオなどの防災用品を用意することや、被災した時の避難先をどのようにするかを家族で話し合うことは重要です。
そして、以前の暮らしを取り戻すためには、どのような保険に入っているかが重要です。たいていの火災保険には水害も保険の対象となりますが、あくまで火災を保険の対象としているために、今回のような水害の場合は、100万円程度のお見舞金程度しか支払われない方もいらっしゃいました。特に水害の可能性のある地域にお住まいの方は、今後も地球温暖化による海面水位の上昇や、異常気象による集中豪雨の増加が今後とも見込まれますので、「災害特約」に加入し直されることをご検討されてはいかがでしょうか。水害時には家屋をほぼ完全に復旧する程度の保険金が下りますので、より安心です。
これを機会に、ご自身の保険証書の内容をご確認されると良いでしょう。