おくりびとは、予定通り 10時に到着。
とても穏やかで物腰の柔らかい男性と女性。
穏やかにゆっくりと時間が流れるように ことが運んでいく。
間近で食い入るように見ている自分に気づく。亡くなられたあと、病院で着物を着せるまでを行っている側からすると、いつもこの後どういう流れで納棺になるのか こころのどこかで 気になっていたこと。
『見させてもらっていていいですか。やりにくくないですか』そういうと二人は驚いたように、『ゆっくり座って見守ってさし上げてください』と笑顔をかえしてくれた。
布団に横たわる父の上に掛物をしながら、家族に見えないよう その下で着物を脱がせていく。
座敷の畳の上に 防水のシートが敷かれ そのうえにバスタブが設置される。
バスタブの上にネットのようなものがあって、人が横たわれるようになっている。
父はその上に横たわり、体の上には厚手のタオルのような掛物かけてある。
体を清めるように家族で順番に湯をかける。
そのあと、持ち込まれたタンクからシャワーが出るようになっていて、シャンプー、洗顔、体から足先まできれいに石鹸の泡で洗い、シャワーで洗い流しておられる。髭剃りも床屋さんのように、理容カミソリでそってもらえる。
気持ちよさそうに見える。
きれいに泡を洗い流して清拭し、再び、父は、布団に横たわる。布団にはあらかじめ、母が選んだスーツが準備されていて 下着、ワイシャツ、背広、ネクタイ、下はズボン下にスラックス、靴下もあっという間にはかせてもらい、しかも滑らかに ことが進む。
横では、タンクに水を移してバスタブが撤収される。
同時に女性が父の体にマッサージするように保湿剤を塗ったり化粧をしたりされている。
『どんなお父様だったんですか』
そう聞かれたけど、答える途中で 泣いてしまいそうな気がして
『どんな・・・父だったんでしょうね・・・』と どういえば自分が泣かずに済むか考え言葉に詰まる。
座敷にはクーラーがない。玉のような汗が流れている。
二人は、本当に父を大切に大切にしてくれた。
すごい仕事だと思う。これだけ故人と家族に寄り添った仕事。言葉がでなかった。
帰り際、心が動かされて思わず、このご時世なのに、二人の手を包むように握手をしてしまった。
素晴らしいお仕事です。本当に素晴らしい。
言葉なしにこんなに心が揺さぶられることは、これまでなかったなぁと思った。
午後から出棺。