正直、驚いた。
私の両親も驚いていた。

結婚を前提にとは言われたが結婚してほしいとプロポーズはされていない。


私の両親に挨拶してからようやく中田は「さぁゴメン、順番が逆になった。僕と結婚してくれる?」と言った。

それでも私は迷っていた。この人と一生暮らして行けるのか?この人を私は愛しているのか?

両親に挨拶した後、私と中田は初めてセックスした。
「愛してる」

杉原さんは「好きだ」とは言ってくれたが「愛してる」とは一度も言ってくれなかった。

中田は私だけを見て、私だけを愛してくれる気がした。

中田はゴルフを通じて杉原さんの友達の福岡さんと知り合いになりゴルフにも一緒に行くようになった。

福岡さんは最初は私と中田の関係を知り驚いてはいたが「俺や杉原と違って真面目な男じゃないか。祝福するよ」と言った。

私の親友の真由美は「さぁの選ぶタイプの人とはちょっと違う気はするけど。確かにさぁの言う通り全身ブランド物ばかりってのも金使いが荒そうで気にはなるよね。でも、杉原さんの一件もあるし望まれて奥さんになるのも幸せかもね」と言った。

私は中田のお金の使い方に不安があった。

平日はゴルフの練習か私とデート、休日はほとんどゴルフと私とデート、週に5日は飲みに行っていた。

スポーツタイプの車に乗りゴルフ場の会員券も購入。
ゴルフ道具も次々に替え、身なりに異常に気を使う。
サラリーマンの稼ぎでこんな事出来るはずがない。

私は思い切って聞いてみた。
「どこからこのお金が出てくるの?」

中田は「東京時代の蓄えがあるから今は大丈夫だよ。心配する事は無いから。結婚したら飲みにも行かないようにするし。それからさぁは働かなくてもいいよ。早く二人の子供が欲しいしね、きっと可愛い子が生まれるよ」

優柔不断で男を見る目がナイ私はその言葉を信じた。
先に中田の弟が結婚した。私はその結婚式に招かれ親族に紹介された。

そしていつの間にか私の両親と中田の両親が結納の日を決めていた。




次の日から中田の電話攻撃が始まった。

だいたい中田の仕事が終る時間に毎日電話があった。
私の両親も毎日同じような時間にかかって来る中田という人の存在を気にし始めた。

仕事が終った。ゴルフの練習をしてから先輩の店に行くから来ない?

○○の練習場に行くから来ない?

次の休みの日にゴルフに行くから一緒にどう?

ほとんどがこんな感じ。

優柔不断でイヤとハッキリ言えない私は時々誘いに応じた。

ゴルフするか食事するか飲みに行くかだけ。
しばらくはそんな感じの付き合いだった。
良い言い方をすれば紳士的だった。


杉原さんの様に口八丁、手八丁ではない。(その頃は)

私が普段は行かない少し離れたゴルフ練習場に私を誘い(中田の会社の近く)中田がレッスンしている方々に私を自分の彼女と紹介し始めた。


「美男美女でお似合い」と医者や会社社長夫人によく言われた。

中田はお金持ちのおじさまやその奥様方にレッスンしてあげて気に入られているようだった。


突然、中田から「結婚を前提に付き合って下さい」と言われた。

結婚って…まだ無理…この人の事はキライではないけど…もう少しこの人を知らないと…だいたい私って料理も出来ないし…

中田の家に連れて行かれた。中田の母親は大喜びで早く結婚してほしいと言った。

私の家にも挨拶に行きたいと言うので連れて行った。


「娘さんと結婚させて下さい」予想外の申し込みだった。







私は21歳になっていた。

仕事とゴルフと女友達だけの世界で男の人とは付き合っていなかった。

杉原さんとよく一緒に飲みに行っていたスナックにはマスターとママと仲良くなっていたので時々真由美等の女友達と行っていた。

マスターもゴルフを始めたので話が弾んだ。

ある日マスターが「俺の後輩で東京から帰ってきた奴がいて、うち店でさぁの事を見て紹介してほしいって言うんだ。どうかな?顔もいいし、まあ、良い奴だよ」と言った。

「私…今はまだ…」と言葉を濁した。

マスターは「まあちょっとあったし、無理強いはしないけど、めちゃくちゃゴルフうまいし、難しく考えないで、奴は大学からずっと東京だったからこっちに友達少なくて、仲間に入れてやってよ」 と言った。

「そうだね、ゴルフ教えてもらおうかな」と適当に返事をした。

その話も忘れていたある夜、自宅にママから電話があった。「例のマスターの後輩が来てるんだけど今から来れない?」

気乗りはしなかったが、お店は歩いても10分かからないし「すこしだけなら」と行く事にした。

お店のドアを開けると超満員でスゴい熱気だった。
カウンターに椅子を1つ足してくれてその人の隣に座った。

マスターが言っていた通り二枚目と言えばいいのか男前と言えばいいのか、今風で言えばイケメンだった。10年東京に住んでいた為か標準語で話し、垢抜けた感じ。

名刺を出して簡単な自己紹介をした。
「中田です。よろしく。ゴルフなら任せて下さい。僕で良ければレッスンしますよ」と勝手にしゃべり始めた。

7歳年上だった。
身に付けている物はブランド品ばかり。ピシッとしたゴルフウェアを着ていた。
中田の東京での話や今の仕事の話などを聞いて「機会があったらゴルフを教えて下さい」と言い、先にかえった。

当時はまだゴルフはおじさんの遊びとかお金持ちの遊びとか贅沢とか言われていたので20代でゴルフをしていると言うと「若いのに」とか「お金持ちの娘?」とか言われた。
数少ない20代ゴルファー仲間になった。