杉原さんは行ってしまった。連絡先もわからない。

杉原さんの弟の信さんにも私は紹介されていたので、信さんに聞けば手掛かりはつかめただろうけど、敢えて聞かなかった。
信さんも何も言わなかった。

信さんが私の会社に来た時に「兄貴、先週2日だけ帰って来てたよ」等と教えてくれた事はあった。



私の不倫は終った。



その後、私は結婚する。

結婚式は杉原さんが仕事で関わった私の自宅近くの式場で行った。

ゴルフを通じて元旦那と杉原さんの友達の福岡さんが知り合いになり私達の結婚式に新郎側の友人として福岡さん夫妻が出席した。


が、結婚生活は3年ほどで破綻し、別居状態に陥る。その期間内に杉原さんと再開することになる。


結婚した相手と杉原さんはゴルフで知り合いになる。当然、私達の関係は元旦那は知らない。


杉原さんは元旦那に私の事を「妹みたいに思っている」と言った。


正式に離婚し、しばらくゴルフから離れたが、また練習場に行くようになり、そこでまた杉原さんと再開する。


この後は、杉原さんが仕事で県外に長期間、家族を伴って行ってしまい、不倫関係が終った後の事を綴ります。



杉原さんに会えるのも今日で最後かも知れない。


向こうでの住まいの準備や仕事の打ち合わせ、こちらの仕事の引き継ぎ等々、忙しいし、すぐにでも行きたいようだった。

大好きなゴルフも封印し新しいプロジェクトに集中すると。



ここで私が涙を流したらダメだ。
杉原さんは新しい仕事にかけている。
笑顔で送ってあげなければ。



相槌だけをうち、杉原さんの熱く語る話を聞いた。

自宅に電話をして外泊を許可してもらい杉原さんと一緒に泊まった。



「おまえ今日もキレイだな。何でかなぁ、今までかなりの女と付き合ったけどおまえは俺の一番だ。連れて行きたいよ」とベッドの中で私に言い抱きしめた。


涙をこらえるのが大変だった。
泣いちゃダメと自分に言い聞かせた。



朝になり、サヨナラの時が来た。



車の中でキスをして抱き締めてもらって握手した。

「元気で頑張って下さいね。ケガしないようにね」と言い杉原さんの顔を見たら目が潤んでいた。

瞬間、私の目から涙が溢れた。

「もう行け、元気でいるんだぞ」
杉原さんの言葉に力はなかった。


「はい」と言い私は車から降りて自分の車の方へうつむきながらゆっくり歩いた。

振り返ると杉原さんが手を振った。
私も手を振った。
車が走り去った。



しばらくはふさぎ込んでいた私だったが考え方を変えようと思った。


待っていても私には何も保障がない。
これを機会に杉原さんの事は忘れた方がいい。
女グセが悪いのは治らない。
世の中にはもっと私だけを愛してくれる人がいるはず。



私は自分に言い聞かせた。



2年後にそのプロジェクトの現場の途中経過の写真がポストカードで私の所に届いた。
夕陽をバックにして綺麗な写真だった。


杉原さん…私を忘れていない…胸が熱くなった。



どうしたんだろう。

何の話だろう。

わざわざ会って話をしなきゃならない内容って何?

キッパリ別れたいって言うの?
でもそれ言うのって私の方だよね。



待ち合わせの駐車場に近づくにつれドキドキして来た。



杉原さんは既に待っていた。



自分の車を停めて必死に走って杉原さんの車に乗った。


「何でそんなに走って…」と笑っていた。


「大事な話があるって、どうしたの?」
息をきらしながら私は聞いた。


「話は食事しながらでもするよ。俺の仕事の話だよ。今日は会えて良かった。でも現場からおまえの車が通って行くのを何度も見たよ。気を付けて行けよって思っていたよ」って明るく言う杉原さん。


「本当ですかぁ?」と私も笑た。



話の内容は私にはとてもショックだった。



最大手ゼネコンからの依頼で遠くの県に行って大プロジェクトに参加する、10年位はお盆とお正月くらいしか戻れない、だからしばらくは会えない、完成して戻って来た時にはおまえは結婚して子育てしてるだろうなぁって内容。



家族で赴任する……



私は、私は…どうしたい?
一緒に行きたいよ…

家族で赴任じゃないなら、私は親に勘当されても一緒に行きたい。

でも、無理なんだよね。

お別れなんだね。



茫然としてしまいすぐに涙は出なかった。




日本ではかなり有名な構築物です。
後に杉原さんから本当に大変でめげそうになった。
夜、外に寝そべって星空を見て涙を流した日々があったと聞いた。