私の誕生日の夜、眠れなかった。


次の日は土曜日。


わざと杉原さんに電話した。


「はい」不機嫌そうな声で電話に出た。


「昨日、どうしたの?何度も連絡したのに…約束してたし…」と、言い終わらないうちに


「約束なんかしてない!それより、おまえ、ゆうべ美和子の旦那に電話したんだって?」


「したけど?それがどうしたの?」


「どうしたの?じゃない!何でそんな事するんだ!」


「私と約束していたのに連絡が取れないからまた美和子と一緒かと思って聞いてみただけ」


「余計な事をするな!おまえは俺をつぶす気か!」


「それ、どういう意味?」


「おまえが旦那に電話なんかするから俺が不利になるだろうが」


「不利?」


「そうだろうが!旦那が知らない事をわざわざ報告して、おまえは何を考えてるんだっ!」


「あのさ、いい事を教えてあげる。美和子はね、今日誰と会って、どこへ行って何をしたか、どんなエッチをしたかの果てまで全部旦那さんにしゃべってるよ。だから私が言おうと関係ないの。旦那さんは杉原さんの会社から自宅まで知っているよ。そんなふうに私を責める事が正しいのか、それでも私が悪いのか、少しはその悪い頭で考えてみたらどう?」


初めて杉原さんにたてついた私。

初めて杉原さんにひどい言葉づかいをした。


少し黙った杉原さん。


私は更に言った。
「私の誕生日に自分から約束しておいて、私の誕生日に杉原さんと私を逢わせたくない根性悪の美和子の策略に引っ掛かりホイホイと行ってしまったって認めたら?」


「そんな事はナイ!」


「もう、どうでもいいわ!嘘ばっかりついて!」


「嘘も方便っていうだろうが」


「何を言ってるの?嘘をつけばつくほど、自分を下げているのよ。あなたは男として最低なのよ!」


「おまえ、俺に対してそこまで言うのか!」


「言うよ!あなたは何も見えなくなっているの!それで勝手に私を悪者にしているの!私にはもうあなたのような人なんて必要ない。もう二度と電話をして来ないで!」




言ってしまった…





私は自分の家に帰った。


珠里が留守番をしていた。

「早かったね、珠里も帰って来たばかりなの。はい、お誕生日おめでとう」珠里が私にプレゼントをくれた。


「ありがとう。ね、一緒にご飯食べに行こうか?」と珠里に言った。


冷蔵庫には私が朝に準備してあった珠里の食事が入っていたが二人で出掛けた。


イタリアンレストランで食事してから本屋に寄った。


本屋の駐車場から国道に出ようとした時に目の前を杉原さんの車が通り、赤信号の為停車した。


助手席に美和子がいた。


やっぱり…


私の車には気付かない。


私は国道に出た。


杉原さんの車の後ろの後ろに位置していた。


晩夏の夜、珠里が一緒にいるしストーカーのように後ろをついて行く気持ちにもならず、私は自宅方向に右折した。





杉原さんの方から私の誕生日を一緒に過ごそうと言ってくれたのに…全く連絡が取れなかった。


美和子にやられた…と思った。


杉原さんは美和子とケンカをしたままだった。
杉原さんからは絶対に連絡はしないだろう。
来るもの拒まず、去るもの追わずの人だ。
美和子は私の誕生日を知っている。美和子の旦那さんと1日違い。
杉原さんと私が、私の誕生日に逢うと思ったのであろう。
阻止してやりたいと思ったのであろう。
杉原さんに甘い言葉で会うことにこぎつけ、また、私の誕生日とわかっていながら、約束もしていたのにしっぽを振って美和子と会うことにした杉原さん。


おそらくこんな感じだろうな…


私は美和子の旦那さんに電話をしてみた。


「今日、さぁさんの誕生日だよね?俺が昨日誕生日だったから。美和子は出掛けたよ。美和子のお母さんが京都にいる妹と来ていて、みんなで食事に行こうと誘ってくれたのに、明日にしてよ、私の用事は今日でなきゃダメだからって言ってせっかくの誘いを振り切って出て行ったよ。妹も明後日帰ってしまうのに」と旦那さんは言った。


「やっちゃん、帰って来ているの?それなのに出掛けたの?」


「さぁさんの誕生日に杉原さんがさぁさんと逢うかと思って、ケンカしてしばらく会ってなかったのに自分から誘いを掛けていたよ。妹が久しぶりに来ているのにね。妹は俺にこっそり聞いて来たよ、美和子に男がいるんじゃないの?って。だから少し話をしたよ。そしたらお姉ちゃんは畳の上では死ねないねって言っていたよ。」


美和子の妹のやっちゃんとは私は面識があった。
美和子はやっちゃんとは仲良くしていた。なのに、やっちゃんより私と杉原さんが逢うことを阻止する事が大事だったようだ。


全て私の予想通りだった。