終わりにしましょう…


メールだけで簡単に…


やっぱり、優しい人は誰にでも優しいのだろう。


でも、私…そんなにショックを受けていない…


その程度の感情しか坂井さんにはなかったのか…


杉原さんとの一件で、誰でもいいから優しくしてくれる人が欲しかっただけじゃないのか…


二股掛けられる腹立たしさ、辛さ、を杉原さんの時に十分に味わった。


坂井さんとの場合はチャットから始まった。
お互いにそこまで愛情がなかったのかな…
甘えられる居心地の良さに私は坂井さんを利用していたのかな…


遠距離恋愛ってやっぱり難しい。
遠距離恋愛だから成立していた関係だったのか…


私は坂井さんにメールした。


「他の女性がいることを何となく感じてました。今、仕事が忙しくて、心の支えとなってくれているあなたからのサヨナラは正直へこみます。あと数日で仕事のヤマは超えます。それからまた連絡します」


終わりにしましょう→はいではいくらなんでも…


終わりにするけど、少し話をしてからにしたいと私は思った。





ある朝、いつものように坂井さんからメールが届いた。


え?


何これ…


私に宛てたメールではない。


「誕生日おめでとう。プレゼントを渡したいから後でそちらに行きます。11時頃出れますか?愛しているよ」


その日私は誕生日ではなかった。


坂井さんには同じ大阪に私以外に付き合っている人がいたようだ。


愛しているよ


私宛てのメールにもいつも最後に愛しているよの言葉があった。



私が感じた違和感…


つい先日、突然セカンドバッグ一つで来た理由…


そういうことだったんだ…


間違って私に送信した事に気付いた坂井さんからまたメールが来た。


「ごめんなさい。もう終わりにしましょう。全て僕が悪いです」


はぁ??


二股掛けてるのが自分の不注意でばれてしまったから「終わりにしましょう」って簡単に…


何か納得出来なかった。


でも、涙は出なかった。


すぐには返事を送らなかった。







違和感があったとはいえ、坂井さんは私の心の支えだった。


責任がある会社の中枢の仕事を与えられ、その責任の重さからどこかに、誰かに、甘えられる場所、癒される場所を求めていた私。


私の話をわかってくれる人、正論で話せる人、が欲しかった。


突然、坂井さんから「今からそちらに向う」とメールが来た。


私が大阪に行ってからまだ数日しか過ぎていない平日。


えっ?


「どうしたの?突然でビックリした」


「どうもしないよ。時間が空いたから。夜、段取りしといてな」


来てくれるのはいいが、次の日も仕事だし、一緒に食事して泊まる事しか出来ない。


本当にどうしたのか…


深く詮索しても仕方がない。早めに仕事を終わらせて駅まで迎えに行った。


「ごめんなさい。小さい方の車で来ました」当時、私は二台車を所有していた。時間がなくて通勤用の車で迎えに行った。
前に坂井さんが来た時は、もう一台の車で迎えに行き県内を少し案内がてらドライブした。


「かまへんよ。突然来て大丈夫か?」とセカンドバッグ一つだけ持った坂井さんは言った。


「はい。じゃあ、お寿司屋さんに案内しますね」


私の知り合いのお寿司屋さんに行き食事した。


「朝、7時の電車で帰るから。そのまま会社に出勤や」と坂井さんは言った。


口には出さないが、何で突然坂井さんが来たのか疑問だった。


夜に着いて朝早めに帰る。
やっぱりおかしい。

JRで3時間以上かかるのに。


私に会いにわざわざ来てくれたと思えばいい…と自分に言い聞かせた。


翌朝、坂井さんを駅まで送り自宅に戻った。


それが坂井さんと会った最後になった。