大阪の坂井さんとは、変わらず電話やメールで連絡を取り合っていた。


いつも優しい坂井さん。


まるで、近くにいてくれているように。


仕事で迷いがあって、それを話すと「さぁの中ではもう答えは決まっているんと違う?」と坂井さんは言った。


その通りだった。

話をした時点では私の答えは決まっていた。


「さぁは、例え僕がこうしたらええって言うても、言うこと聞かんて」


私はわかりやすい人間なのかな…いつも無表情で何を考えているかわからないって言われた事もあるのに。

春先に「京都の桜が見たい」と私はワガママを言った。

坂井さんは「ええよ、おいで。でも仕事とゴルフの予定があるから僕が日を決めるよ」と言ってくれた。


坂井さんが天気予報や桜の開花予報なども調べて日程を決めた。


気温があがらず桜は3分咲き程度。京都より大阪城の方が咲いてると、京都は翌年に延期になった。(実現しなかったが)


大阪駅のホームまで迎えに来てくれて、市内のホテルに泊まり、次の日、デパ地下でお花見弁当を買って大阪城に行った。
そのあと私の買い物に付き合ってくれた。


でも、何か違和感があった。


何かはわからなかった。


大阪城でお弁当を食べていても話が余り盛り上がらない。どうしたの?


「ワガママ言って無理に来てごめんなさい」私は言った。


「そんな事ない。満開じゃなくて残念やったなぁ。来週が最高やな」と坂井さんは答えた。


予定より早いJRで私は帰ることにした。
坂井さんは引き止めなかった。


「着いたら連絡しなさい」とまた大阪駅のホームで見送ってくれた。


私が感じた違和感…
後で理由がわかることとなる。





久しぶりに美和子の旦那さんから電話があった。


「さぁさん、まだ杉原さんと付き合っているの?」


「最近は全然…電話はかかって来てるけど、私は出ないから…私、もういいんだ。杉原さんが誰と付き合おうが。美和子とどうなっているかも気にならないし、他の女性とも噂あるし」


「そうなんだ。さぁさん、そのほうがいいよ。異常だからね、杉原さん。俺、前に、また電話で話をしたんだ。法的手段に出るって。そしたらヤクザかと思うような言い方で逆ギレされたよ。美和子も杉原さんが自分の言いなりにならないから最近は連絡とってないみたい」


どうでもよかった。

それに、旦那さんは私に何を言いたいのかもわからなかった。


さらに「杉原さん、引っ越ししたって本当?美和子が詳しい事を言わないって怒ってた。さぁさん知ってる?同じ市内?」と聞いて来た。


確かに杉原さんは新しい家を購入した。
引っ越しの日も聞いていた。
杉原さんの新しい家を私は教えられて知っている。


「うん、同じ市内だけど。引っ越ししてから結構たったよ。新興住宅地だね。場所はちょっとわかりづらいかな。素敵な家だよ。長男だし、実家がすごい豪邸なのにやっぱり戻らなかったわ」


「やっぱりさぁさんには詳しく言ってるんだね。新しい家を買うって事は奥さんと離婚する気がないって事か」


「最初からないって。美和子のことだから財産あると思って遊んで暮らせる位に考えてるんじゃない?そんな甘くないよ。杉原さんは遊びだから優しいの、実際毎日の生活となると違う。美和子みたいな朝は起きない、掃除しないじゃ…」


「そうだよな。美和子が太刀打ち出来る相手じゃない。常に女の影がありそうだし」


「とにかく、私はもうNOなんで…最低な人達とは縁を切りたいから」


旦那さんは何を言いたくて何を聞きたかったのか…


それも、どうでもよかった。






それでも杉原さんの事を想わない日はなかった。


私は、杉原さんからプレゼントされたものを封印した。

杉原さんがゴルフでもらった金貨で造ってくれたネックレス。
ピアス。ブレスレット。


仕事中でも、寝る時でも、お守り替わりに常に身に付けていた。


全部外して箱に入れてしまった。


杉原さんを思い出す物は全て。


それでも、杉原さんを思い出す。
杉原さんから携帯電話に着信もあった。
余りにも私が電話に出ないのでいくら何でも気付くだろう…私が杉原さんから離れようとしている事に…