心の支えがいなくなった。


でも私は腑抜けになる訳にはいかない。



数日後の夜、電話が鳴った。
携帯電話ではなく固定電話の番号が表示されていた。局番からして市内…誰?


無視も出来ず電話に出た。

「さぁちゃん?ごめんね、突然こんな時間に電話して」


以前に杉原さんとよく待ち合わせしていたスナックのママからだった。


「ママ…お久しぶりです。どうなさったの?」


「あのね、杉原さんが来ておられるの。さぁちゃんに迎えに来て欲しいって言っておられるの。自分が電話しても出てくれないからって…それで、ごめんね、電話させてもらったの」


「そうですか…ママ、ごめんなさい。迷惑かけて…」


「二人の間で色々あったのはわかってるけど…杉原さん、さぁちゃんに逢いたいのよ」


「でも私…」


「来てあげて…杉原さん落ち込んでおられるの」


「ママ…杉原さんに替わってもらえる?」


「ちょっと待ってね…………………………さぁちゃん、ここで待ってるって電話替わってもらえない」


「…わかりました。行きます」


着替えをして私はそのお店に向った。





◎たくさんの方々からアクセスをいただきましてありがとうございます。◎



女ひとりで娘をかかえて暮らして行く…加えて仕事となればのめり込み人一倍取り組み努力する私。


心の拠り所が欲しかった。

娘と仕事ばかりじゃ自分の人生は何なのか?と成りかねない。
趣味や楽しみや癒される場所も必要だった。


ゴルフをしたり、友達と美味しいものを食べに言ったり、旅行したり…


癒される場所…
心の支え…
それは杉原さんであり坂井さんであった。


それがなくなり私は正常な神経で過ごして行けるのか…不安だった。


会社では、自分より年上の男の部下も多くいた。
彼らに指示をし、仕事をこなす。会社の中枢の仕事。私の言葉で皆が動く。
責任がつきまとった。
毅然とした態度で、でも女性ならではの気配りで回して行く。
精神的におかしくなりそうな時も多かった。


杉原さんは励ましてくれた。

坂井さんは話を聞いてくれてアドバイスをくれた。


これから私は普通の精神状態でやっていけるのか?


どこに、誰に、この胸のうちをぶつけようか…





坂井さんからの終わりのメールが来てから2日後、仕事が一段落した。


私は、仕事のヤマ場が無事に完了した事を告げた。
そして体調が悪いこと、仕事ぶりが社長に認められたことも。

そして、坂井さんの人格まで非難した。


坂井さんは、自分が悪いと何度も謝り、私の非難の言葉にも無視したりはしなかったし、必ずメールに返事をしてきた。


もういいや。


私はもう坂井さんを責めるのもメールしたりするのも止めた。


坂井さんから、
あなたに迷惑を掛けてしまって申し訳ないと思っています。
と言葉が添えられた最後のプレゼントが届いた。


私からも、
今まで心の支えになっていただいて感謝しています。たくさんのプレゼントもありがとうございました。これからのご健康とご活躍を願っています。
と言葉を添えてゴルフ用品を会社宛てに送り終りにした。


それっきり、連絡は一度も取り合っていない。


今でも時々、元気にしていらっしゃるかな…と思う。

啀み合っての別れではなかった。
もう一度会って話をしてみたいとは思う。