ゴルフ練習場でばったり杉原さんと会うことはあった。


私は自分からは杉原さんの近くには行かず、他のゴルフ友のおじさま達と話をしたりお茶したりしていた。


杉原さんが勝手に仲間に入って来たが、話し掛けられれば素っ気なく答えた。


電話もメールも無視し続けた。



ゴルフや仕事の関係で色々な人と知り合い、私は忙しいながらも以前ほど誰かに癒しを求めたりをしなくなった。


うまくストレス発散が出来ていたのか…わからない。


たまたま、仕事の絡みで知り合った大輔。


パッと見た感じ…
好みの顔立ち、体格もいいし、声もいい。
おぉ~カッコいい!
と思った。


でも、いくつだろう?
20代後半くらい?


話を重ねると、賢い人なんだなぁ…しっかりしてるなぁ…という印象だった。


「良かったらメールアドレス教えてもらえませんか?」大輔に言われた。


私は「仕事用ね?私専用が二つあるけどこっちにしてくれる?」と会社でもらっているメールアドレスの個人名の方をメモして渡した。


「あの…プライベートのメールアドレスも…」と言われて「えっ?あ、うん」と自宅のパソコンのメールアドレスもメモした。


「ついでに携帯電話のメールアドレスも…」


メールアドレスを合計三つ書いて渡した。


ニッコリ微笑む大輔。


私は「じゃあ、今後は仕事の対応が益々うまく行きそうですね。宜しくお願いします」と言った。


その夜、早速携帯電話の方にメールが入った。





翌朝、杉原さんからメールが来た。


「昨日はごめん。タクシー代渡さなかったからお昼に食事でもどうですか。返事待ってます」


私は、返信しなかった。
無視した。


昨晩はハプニングで、大人の私は子供みたいな杉原さんが駄々っ子のようにしてるのを聞き、仕方がなく迎えに行っただけ。


調子にのるなって感じだった。


気にはなるけど、杉原さんとの事は過去にする。


原因を作ったのは誰?


そして心の底からは杉原さんを憎んだり恨んだりはしていない私自身に気付いてはいた。


その後しばらくは杉原さんから連絡はなかった。






向いながらドキドキしていた。


久しぶりに逢う杉原さん。


酔っているのか…また何かあって私に救いを求めているのか…わからない。


私が杉原さんや坂井さんに癒しや心の支えを求めたように、杉原さんもそうなのか?
嫌…違うだろう…



お店のドアを開けた。


「いらっしゃいませ~あぁ~さぁちゃん!杉原さん!さぁちゃんだよ!」


「こんばんは!お久しぶりですぅ」私はカウンターにいる杉原さんの所に近づきわざと椅子一つあけて横に座った。


「さぁ、待ってた…ごめん」


私は杉原さんの顔は見ないで「何してるの?子供じゃあるまいしママに迷惑かけて」と言った。


杉原さんは「ごめん…俺の電話にさぁが出てくれないから。どうしても逢いたかった」と言った。


「なぜ私が電話に出ないかわかってるでしょう?」


一瞬沈黙した杉原さんだったが、明るい声で「さぁ、お腹すいてないか?何飲む?車だから烏龍茶か?ママ~さぁに烏龍茶ね~」と言った。


「さぁちゃんが来たら急に元気になって…さっきまでしょんぼりしてたのに」ママが笑って言った。


「俺、さぁが一番好きなんだよ。ここでまた逢えた。今日はいい日になったなぁ」


何を言ってんだか…心の中で私はつぶやいた。


「さぁ、俺の好きな曲を唄ってくれないか?」


「はぁ?好きな曲?何で私が唄うの?」
杉原さんの好きな曲…
森山直太朗さんのさくら…
わかっていた。

私は今まで杉原さんの前でカラオケで唄った事が一度もなかった。


唄うとも言っていないのにイントロが流れ始めた。


マイクを渡され、渋々唄うはめに。


少々高い部分が出にくかったが何とか唄った。


「女性がこの曲を唄われたのを初めて聴いたけど、いいね~うまいね~」とママ。


「うん。さぁ、うまいなぁ」と言った後、杉原さんは「一緒に帰ろう」と私の頭を撫でた。


18歳の時から幾度杉原さんに頭を撫でられたろうか…と思いながら「車、どうしたの?」と聞いたら「いつもの居酒屋の駐車場」と杉原さんが言った。
「じゃあ、代行で帰って下さい」と私は言った。


「ダメだ。一緒に帰る」


「車を置いて行けないでしょう?明日の朝、会社に行くのに困るじやない?」


「どうにでもなる。一緒に帰る」


呆れ果てた。


結局、私は杉原さんの車を運転しどこかに泊まろうとうるさく言うのを無視して自宅前まで送った。

杉原さんの家に着く頃にタクシーを頼み、私は自分の車が停めてある所までタクシーで戻った。


地元では、桜が散り始めていた。