向いながらドキドキしていた。
久しぶりに逢う杉原さん。
酔っているのか…また何かあって私に救いを求めているのか…わからない。
私が杉原さんや坂井さんに癒しや心の支えを求めたように、杉原さんもそうなのか?
嫌…違うだろう…
お店のドアを開けた。
「いらっしゃいませ~あぁ~さぁちゃん!杉原さん!さぁちゃんだよ!」
「こんばんは!お久しぶりですぅ」私はカウンターにいる杉原さんの所に近づきわざと椅子一つあけて横に座った。
「さぁ、待ってた…ごめん」
私は杉原さんの顔は見ないで「何してるの?子供じゃあるまいしママに迷惑かけて」と言った。
杉原さんは「ごめん…俺の電話にさぁが出てくれないから。どうしても逢いたかった」と言った。
「なぜ私が電話に出ないかわかってるでしょう?」
一瞬沈黙した杉原さんだったが、明るい声で「さぁ、お腹すいてないか?何飲む?車だから烏龍茶か?ママ~さぁに烏龍茶ね~」と言った。
「さぁちゃんが来たら急に元気になって…さっきまでしょんぼりしてたのに」ママが笑って言った。
「俺、さぁが一番好きなんだよ。ここでまた逢えた。今日はいい日になったなぁ」
何を言ってんだか…心の中で私はつぶやいた。
「さぁ、俺の好きな曲を唄ってくれないか?」
「はぁ?好きな曲?何で私が唄うの?」
杉原さんの好きな曲…
森山直太朗さんのさくら…
わかっていた。
私は今まで杉原さんの前でカラオケで唄った事が一度もなかった。
唄うとも言っていないのにイントロが流れ始めた。
マイクを渡され、渋々唄うはめに。
少々高い部分が出にくかったが何とか唄った。
「女性がこの曲を唄われたのを初めて聴いたけど、いいね~うまいね~」とママ。
「うん。さぁ、うまいなぁ」と言った後、杉原さんは「一緒に帰ろう」と私の頭を撫でた。
18歳の時から幾度杉原さんに頭を撫でられたろうか…と思いながら「車、どうしたの?」と聞いたら「いつもの居酒屋の駐車場」と杉原さんが言った。
「じゃあ、代行で帰って下さい」と私は言った。
「ダメだ。一緒に帰る」
「車を置いて行けないでしょう?明日の朝、会社に行くのに困るじやない?」
「どうにでもなる。一緒に帰る」
呆れ果てた。
結局、私は杉原さんの車を運転しどこかに泊まろうとうるさく言うのを無視して自宅前まで送った。
杉原さんの家に着く頃にタクシーを頼み、私は自分の車が停めてある所までタクシーで戻った。
地元では、桜が散り始めていた。