焼肉を好きな人は非常に多く、最近では日本を訪れた外国人観光客にも人気があり、焼肉屋で外国人を見掛けることも多くなりました。

 

焼肉屋の中には、”本場韓国の焼肉”と謳っている店もあります。そして、多くの人が焼肉の本場は韓国という認識を持っていると思います。

 

戦後の大阪で在日朝鮮人が捨てられていたホルモンを焼いて、屋台で提供したのが焼肉の始まりと言われています。

 

しかし、直火で肉を焼いて食べるようなことは、戦前から行われていたようです。店で焼肉を提供しているところはなかったようですが、直火で肉を焼くという朝鮮風の家庭料理として家庭で食べていた人達はいたようです。

 

1950年代には現在のような薄切りの肉を直火で客が焼き、タレをつけて食べるという焼肉屋のスタイルが出来上がりました。

 

ちなみに肉を焼いて食べるということは昔から世界中にありますが、薄切りの肉を焼いて食べるスタイルというのはほとんどないようです。日本以外では、肉を薄切りで売っている国は少ないようです。

 

 

一方、巷で本場と言われている韓国では、かつて食肉と言えば犬肉で、韓国で本格的に肉牛の生産が開始されたのは1970年代でした。牛肉の需要が増えて一般の食生活に広く浸透したのは1980年代以降になってからです。

 

韓国の一人当たり年間牛肉消費量は、1980年代に2.6kgだったのが1990年には4.1kgに増加し、2000年には8.5kgと、この20年で急増しました。

 

1970年代以降には、焼いた肉をタレに漬けて食べる焼肉スタイルが日本から韓国に伝わり、韓国でも日本の焼肉スタイルの店が現れるようになりました。

 

日本で普及した焼肉屋のスタイルが韓国に持ち込まれ、韓国にも焼肉屋が増えていきます。韓国では肉を直火で焼く料理は焼く前にタレに漬けこんでいましたが、日本式の焼肉屋が進出してからは、焼いてからタレをつけて食べるようにもなりました。つまり、現在韓国にある焼肉屋は、日本の焼肉屋のスタイルがベースになっているということです。初期の韓国の焼肉屋では、日本のジンギスカン料理に使われる鍋が使われていました。

 

また、朝鮮半島で肉を焼いて食べるようになったのは、モンゴルが強く影響しています。元の統治下にあった時には、宮廷内にも多くのモンゴル人が配置され食生活にも強い影響をもたらしました。しかし、李氏朝鮮の時代には牛の屠殺は禁止されており、更に牛の餌となる穀物が不足していたので、一般の人が牛肉を食べることはほとんどなかったようです。

 

 

先ほどチラッと出てきたジンギスカンは中国料理に影響を受けたものですが、大正時代に農商務省が東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大)に委託して開発された羊肉料理が基になっており、モンゴル料理ではありません。

 

ジンギスカン料理の店は戦前からあり、焼肉屋よりも早く世に出たということになります。北海道でジンギスカンがよく食べられるようになったのは、北海道で羊毛用の羊が多く飼育されていて安くて新鮮な羊肉が手に入ったからです。

 

 

話を焼肉に戻します。日本で焼肉が普及したのは、焼肉のタレが市販されて家庭でも手軽に焼肉が楽しめるようになったのと、無煙ロースターの出現です。現在では様々な焼肉のタレが売られており、ほとんどの焼肉屋で無煙ロースターが装備されています。

 

焼肉は在日朝鮮人が始めたものですが、現在の焼肉屋のスタイルは日本で確立されました。それが韓国に伝わり、韓国でも日本の焼肉屋のスタイルが持ち込まれました。そういった意味では、焼肉の本場は韓国ではなく日本ではないでしょうか。


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