【映画】流浪の月~無間地獄に刺す月明かり | 鶏のブログ

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俳優陣の演技、演出、映像美、音楽、そして物語と、全般に渡って素晴らしい映画でした。本屋大賞を受賞したという原作の小説を読んでいないので、それとの比較が出来ないのが残念ですが、映画単体として見て、非常に優れた作品だったと思います。

 

特に良かったのが俳優陣で、主人公の更紗を演じた広瀬すず(現在)と白鳥玉季(10歳当時)の連続性の高さには、正直痺れました。子供時代を子役が、大人になってからは成人俳優が演じるのは特段珍しいことではありませんが、写真で見ただけでは特に似ていると思えないこの2人の俳優が、更紗という登場人物に完全に成り切っていて、まさにシームレスに繋がっていて、全く不自然さを感じさせないのは凄いと思いました。

また、更紗が10歳だった15年前と、現在のシーンを交互に並べ、松坂桃李演じる文と更紗の主人公2人が、ほぼ相似形の無間地獄のような悲劇を繰り返していくという進行も、非常に良かったと思います。

 

もう一人注目したのが、更紗の現在の恋人である亮君を演じた横浜流星。名前は知っていたものの、いままで映画やドラマで観ることがなかった俳優さんでしたが、美男中の美男と言って良い外面とは裏腹に、独占欲と自己中心的な思考の下、更紗とのすれ違いが表面化するとストーカーチックな行為をするに至り、最後は病的な状態に陥ってしまうまでの姿を、実に上手く表現していました。

 

最後に更紗と並ぶ主演の文を演じた松坂桃李ですが、彼が主演した映画は何本か観ましたが、直近で観た「孤狼の血 LEVEL2」で見せたスーパーサイヤ人的で躍動感溢れる役柄とは対照的に、非常に静的で受動的な感じの役柄でした。個人的には、本作はじめ「娼年」や「居眠り磐音」、「新聞記者」の時のように、内に秘めた役柄を演じた時こそ、彼の良さが引き立つと感じたところです。

 

物語的にも、文と更紗が流浪する無間地獄に、最後は月明かりが刺すかのように微かな希望が訪れてエンディングを迎えたことで、観ている方も力強く生きていかねばと思わせてくれるものでした。

 

評価:★★★★★