失恋記念日:13 (誓いのキス:鴻上大和) | ANOTHER DAYS

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「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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before

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勇太さんとアカリさんの突然の訪問。


私は元より大和は凄く驚き、そして迷惑がった。


「見てよこの野菜!食べきれないからって芸人仲間から貰ったんだ。田舎から送られてきたらしくてさ。大和ー、なんか作ってよ。」


「お肉も買ったよーー。」


「お前らなぁ…。」


玄関での押し問答の末 結局は押し切られてリビングに通すことになる。二人はここに来るのは初めてではないらしく、遠慮はない。


そしてなんだかんだ言いながらも大和は手際良く何品も作った(私はいそいそとお手伝い)。


パスタをテーブルに置いたところで、


「美味そーー!乾杯しようぜ!」


宴会の始まりだ。


グラスグラスっ。


料理をしているあいだに簡単な自己紹介と他愛ない会話は交わしたものの 予想外の来客にどう接するべきなのかと戸惑ってしまう。


「お前なに緊張してんだ。」


「だって…いきなりミッションじゃん。」


「バカ、シーーッ。」


というのも、誰の前でも本当の恋人として接しろと大和から強く言われていたからだ。


偽装結婚だということは久仁彦おじさんしか知らないからなと念を押されている。当然この二人は私を大和の恋人だと思い込んでいるわけだから、


「なんかドキドキする…。」


「普段どおりにしてろ。」


私がダラシなくしてはダメだ、大和に恥をかかせるわけにはいかない!


…なーんて。どれだけダンナ様思いの偽嫁なんだと自分で思う。


っていうか、友達にまでウソつく必要ある?


「勇太さん、ビールで良いですか?」


「ありがとうーー。」


勇太さんは笑顔を絶やさないとても明るい人だ。大和と同級生だというけれど年齢よりも若く見えるのは大振りな仕草のせいか、鮮やかな服装のせいか。


「勇太、飲みすぎないでよ。」


そして勇太さんと反対に落ち着いた佇まいのアカリさん


「アカリさんもビールで良いですか?」


彼女は大和よりひとつ年上らしい。


ショートカットのとてもよく似合う、目鼻立ちのハッキリした美人。見つめ返されると自然とこちらが笑顔になってしまうほど愛らしい人だ。


「あ、ありがとう。私は…」


「アカリは水。」


グラスにビールを注ごうとしたところで大和がすかさず、コンとお水の入ったグラスを置く。


「あ、アルコール苦手ですか?」


アカリさんは笑顔で中途半端に頷いた。その曖昧な返事に首を傾げる私に


「私、妊娠してるの。」


「え…」


そう微笑んだんだ。


「コイツ夏に結婚するんだよ。」


なんと。


勇太さんの言葉にアカリさんは照れくさそうにまだ膨らみのないお腹を撫でる。その様子に自然と笑みは溢れて、


「そうなんだ…おめでとうございます!」


「フフ。ありがとう。」


順序なんて別に気にならない。まさか妊婦とは。そしてまもなく結婚とは、だ。


「あ、***ちゃんは気にしないで飲んでね。私元々下戸だから。」


「***座れ。食おうぜ。」


「よっしゃ乾杯だ!大和と***ちゃんの交際を祝して!」


「勇太お前ふざけんな。」


「カンパーイ!」


「おいーー…。」


賑やかな夜になりそうだ。


・・・・


「大和の彼女ってどんな子なんだろうってさ、久仁さんの親戚ってだけでも気になるじゃんー。」


「ハハ…。」


「だからって連絡もよこさずに突然来る奴があるかよ。」


「まぁまぁ、大和もそんなに照れないで。」


「照れてねー。アカリお前もお前だぞ。こっちの都合も考えねーで。」


「良いじゃんねー。」


二人はとても優しくて接しやすかった。大和が作った料理も美味しくて、次第に緊張も解けてくる。


「ねーねー、***ちゃんは大和のどんなところが好きになったわけ?」


「マジうるせー!勇太飲み過ぎだろ!」


予想どおり、根掘り葉掘り聞かれ冷やかしまくられたけど、


「ところで、」


珍しくもない差し障りのない返事をして、私は早々に話をアカリさんに振った。


「アカリさん、結婚式はいつなんですか?」


「三ヶ月後。私の誕生日に。」


「うわー、素敵。」


「***ちゃんも来て欲しいな。ね?良いでしょ?」


「嬉しいです、ぜひ!」


なんて。その頃には私はいませんと思いつつ、うんうんと頷いたり。


「よく考えたらドレスとか大変だよなぁ。今は腹も全然目立たないけど、その時サイズ違うだろ?」


「まぁねー。仕事の制服もサイズ変えなきゃだなぁ。」


「仕事はいつまで続けるつもりだ。」


ん?


会話的におかしな流れではないが、大和の真剣な声はこの時少し場をピリッとさせた。


「しんどいんじゃねーのか。立ち仕事だろ。」


「大丈夫よ。あ、私、接客業なの。暇なんだけどね。」


アカリさんてホント優しい。私が話に置いてけぼりにならないよう常に気にしてくれていた。


聞けば、敷居高いブランドショップの店員さんらしい。


「気ぃだって使うじゃねーか。ストレスは母胎に影響すんだろ。」


「大和はアカリに過保護だなー。」


「心配してんだ。なんかあってからじゃ遅ぇんだぞ。さすがにまだヒールじゃねーだろうな?」


「ピンヒールじゃないんだし大丈夫よ。大和先生は心配症だなぁ、***ちゃん大変でしょ、GPSとか持たされてない?」


「アカリ、真面目に聞けっ。」


…というか。


場の空気を乱すほどの大和のアカリさんに対する態度や言葉


これって…。


違和感の理由…大和と出会った夜の会話を思い出す。


『惚れていた女が結婚するってだけ。』・・・


私は小さく息を吐いた。


アカリさんが好きだったってわけね…。


まさに想いを打ち明ける前に失恋した相手なんだ。


「ふわぁ…なんかオレ眠くなった…。」


「オイコラ勇太!間違っても寝るんじゃねー!」


二人のドタバタに、アカリさんと顔を見合わせ笑い合う。そうしながら、


「…。」


大好きな人の永遠の誓いを目の当たりにするわけか…。


なかなかしんどい恋をしていると、大和の横顔に思った。



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