before
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「寂しくなるなぁ。」
***がこの街を離れる日 オレ達幼なじみは見送りのためにクロフネに集まった。
***はまだ部屋でマスターと最後の荷造りをしているらしく、頭上が賑やかで。物音を聞きつつオレ達はいつものソファでソワソワしていたわけだが、
「ハルくんそろそろ電話してみてよ。」
「だね。」
オレは携帯を耳に当てた。
一護のやつ、なにやってんだ…。
ソワソワするのは別の理由もあったりで。
一護が来ていなかったんだ。共に部屋にいるだろうと思っていたが、居ないと分かるとまだ来ないのかとこっちが焦る。
「なにしてんだアイツ…。」
オレ達がしびれを切らした頃になってやっと、
カラン
「あ、いっちゃん遅い!」
主役は最後に登場 コイツは来た。
「っるせーな…。」
「随分機嫌悪ぃじゃん。」
リュウ兄が突っ込むくらい、態度も表情も歩き方も全てダルそうに。
「別に。」
どういうわけか剛史を睨みながらいつもの定位置にドサッと腰をおろす。
「***ちゃんを手伝わなくていいの?というかー、しばらく会えないでしょ、行ってきたら?」
理人が冷やかし半分一護に言った時に、オレ達は知ったんだ。
「別れたよ。」
「え?」
え…
二人の夏が終わったことを。
「来る気無かったっつの。タケがうるせーから仕方なく。」
ハァ〜?!?!
・・・・
「…おいおい、またそんな冗談!」
リュウ兄も理人もオレも悪い冗談だと思った。だけど、
「ウソだろ、剛史!」
「…間違いではないな。」
剛史がため息をつくから…。
「なにそれ…どういうことだよ!」
「待て待て理人!!」
掴み掛かろうとする理人をリュウ兄が羽交締め、みたいな展開になって。
「いっちゃんどういうことなの!!まさか遊びだったの?!」
顔を真っ赤にし喚いている理人 落ち着かせようと必死なリュウ兄。二人に比べオレはソファから腰を上げることはなかったが、
「一護、説明して。内容によっては許さない。」
厳しく問い詰めてしまうほど 心は穏やかではなくて。
正面に座る剛史は沈黙を保っていた。コイツは事情を知っているらしいが、発言する気はないのかため息混じり一護に視線を向けるだけだ。
「なにがあったの。」
オレは一度剛史に目線を向けてから一護に聞いた。
一護はダルそうにオレ達に視線を返す。発せられた言葉は、
「別れるって決めたのは俺だよ。だけどフラれたのも俺。」
「え?」
え…
「ハァ…めんどくせーからタケ、話して。」
・・・・
剛史は随分と端折って話した。だけど論点を押さえていたからオレ達は話を聞き終え考え込んでしまう。自分の定位置に座りこみ、ただジッと。
なんというか…どちらの立場に立っても気持ちが分からなくはなかったんだ。
無かったことにしたかった***の想いも、無いことには出来なかった一護の気持ちも。
だけど、別れに至った瞬間も戻せない刹那も…理解出来たんだけど、
「…あのさ、」
オレもリュウ兄も理人も、なんとも歯痒い気持ちになっていて。
「***ちゃん別れたんでしょ。許してあげたら。」
「別に怒ってねーし。」
「***はお前のこと好きなんじゃないのか?」
「さぁ。」
「…お前は、好きなんだろ。」
「もういいから。」
話を切り上げるかのように当事者の一護は漫画を読み始める…実際内容が頭に入っているのか分からないが、
「…ハァ。」
その様子を視界に入れつつ、ため息しか出なくて。
「…。」
修復するには時間が無さすぎる…。
夏はもう、終わろうとしているんだから。
・・・・
「あ…。」
トントントン…と階段を降りる音がした。一護もオレ達もピクリと反応する。少し緊張の糸が張った時、
「前も…ガキの頃もさ、」
リュウ兄が随分と穏やかな声で言った。
「***が引越した日もこんな暑い日だったよな。」
窓から降り注ぐ陽射しは眩しいほど白くて、
「同じような真っ青な空でさ。」
…オレ達はいつかの別れの情景を思い出して。
「今日は笑顔で送ってやろうぜ。」
・・・・
「お、来てたのか。」
ジョージさんがスーツケースを片手に降りてきた。オレ達を笑顔で見渡したが、一護と目を合わせた瞬間その笑顔は曇る。
「…一護、聞いたよ。知らなかったとはいえ悪かった。」
ジョージさんは上辺だけの事情しか聞いていなかったんだろう。頭を下げるそれは 自分が彼女の現状を知っていれば二人を付き合わせはしなかったということか。
だが、『…別に。』と素っ気なく返事をした一護にジョージさんを責める気は毛頭無い。
「わ、皆んな来てくれたの?」
すぐ後に***が降りて来た。
「わざわざありがとう。」
…笑顔は、一護を目に映しても崩れなかった。
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