大和で書いた『ヒミツの真子ちゃん』を読み返して妄想した。ああいう系の話。
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「…ハァ。」
西に傾く陽の光が、橙色に街を染める。背を曲げトロトロ歩く俺の影をアスファルトに長く濃く映す。
「なんなんだよ…。」
クロフネから帰路に向かいながら 苛ついてどうしようもなかった。
胸ん中がギスギス疼く。無性に腹が立つ。…と同時に、
「なんで俺……」
へこみもしていた。
足先を変え 帰宅を急ぐガキどもと入れ替わりにタコ公園に足を踏み入れる。
そしてドカッとベンチに座り込み項垂れた。
色んな感情が胸を覆っている。腹立つのと情けないのと、
「ダサ…。」
焦り…と。
髪を乱暴に掻き上げ 陰り始めた空を見上げる。
「もっと言い方あったろーよ…。」
毎度の如く反省…。今日も***を俯かせた俺は。
・・・・
「え?」
「だからー。陸上部の奴から、***って彼氏いんのかーって聞かれた。」
マジか。
放課後決まって喫茶クロフネに集う俺ら幼なじみ 俺とハルとタケ そしてここに居候中の***
ここクロフネは俺らにとってすげー貴重な場所だ。
マスターとは昔からの付き合いだし、俺らの親とも付き合いがある。そういう意味でもなんか楽で。気兼ねなく過ごせる居心地の良い空間
コーヒー頼んでマンガ片手に時間を潰すだけだけど毎日来ていた。別になにを話すわけでもないんだけどな。
でも今日は…。タケがらしくなくニヤニヤしてると思ってた。
「いないって答えたら、じゃ紹介してよって。」
***に惚れてる奴がいるらしい。紹介しろだ?俺にとって最高に気分悪い話。
「モテるねー***。この前も呼び出されてたよね、サッカー部のキャプテンにさ。」
ハルはすかさずアイツを冷やかし始めた。
「モテモテな転校生だね。」
「それな。リュウ兄も『お前の幼なじみ可愛い』って何人にも言われたって言ってた。」
「もうやめて。別にモテないし。茶化さないで。」
***は頬を真っ赤にし冷やかし続けるタケとハルを睨んだけど、
「良い男だよ。どう。」
全然止まんなくて。っつかなに薦めてんだよ…。
俺は***に惚れている。ガキの頃も…子どもながらに好きだって自覚があった。
***が転校して音信不通になって、そんな恋心忘れてたけど、
10年ぶりに再会した瞬間に蘇ったよな。あー、俺コイツ好きって。っつか、また惚れた。
「どうって…。」
「紹介するだけしようか。案外タイプかも。」
「遊びに行くだけでも良いんじゃない。友だちからみたいな?」
タケもハルもガンガン薦めちまう。
俺が***に幼なじみ以上の感情を持ってるということ、二人は知らない。っていうより、
「チッ…。」
まだ、***にさえも伝えてはいなかった。
チラッと***と目が合う。
「…なによ。」
「別に。」
***は髪を耳に掛けながらスッと逸らした。
気持ちとは裏腹に意地悪ばっかしてしまう俺。だからか、***は俺に対してどこか素っ気なくて。
いつも会話の最初は良いんだよな、けど気づけば文句の言い合い、ケンカして機嫌を損ね合う
一歩進んで2歩下がる…こんな関係でいたいわけじゃねーのに上手くいかない。
「あいつ良い奴だよ。一護も知ってるだろ?」
「…ああ。」
「お似合いだと思わね?」
「どうでも。っていうか、」
…まぁ、でも、
また目を合わせた。俺が言うことって言ったら、
「もの好きだよな。」
「え?」
「は?」
「へ?」
「お前みたいな女を好きになるなんて。タケ、アイツに言っとけよ、ブスのうえに性格もすげー悪いけどって。」
「ハァ?!」
こんなんで上手くいくわけねーよな。
・・・・
チラホラ見え始めた小さな星
「ハァ…。」
見る気になれなくて地面に視線を落とした。
***は覚えてるか。ガキの頃次の流星群も一緒に見ようと約束したよな。覚えてたとしても、
「…俺とは見ねーかも。」
ガキの頃には出来なかった『付き合う』ってやつをしたくて、つまりは俺の彼女になって欲しくて、
幼なじみって壁をなんとか壊そうとするのに なんでだろうな、空回りしまくる…他の女にはこんなことねーのに。
こんなんじゃいつまで経っても幼なじみのままだ。いや、それ以下になりそう、嫌われたら俺生きていけねーけど。
「嫌われてるかもな…。」
もう既に…ハァ、マジやべー…。
すっかり日も暮れ、遠慮がちにベンチ横の照明に灯が灯る。何度目かのデカいため息をついた時だった。
ピピ
メールの受信音にピクッと反応する。上げかけた腰を下ろしスマホを取り出した。
「またかよ…。」
そしてメッセージを目にし更に俺は不機嫌になった。
昨夜もあったメール。それは誰からとも知れないキミの悪いものだ。
たったの一文。
『佐東一護。応答せよ。』
「名を名乗れっつの。」
俺は昨日同様受信拒否の設定をする。というか昨日拒否したのにまだ届くのなんで?
「誰だよ…めんどくせ。」
イタズラだと思ってた。昨日も今日も。
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