星の王子さま:1 (吉祥寺恋色:佐東一護) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
吉恋一護 誓い大和 怪盗流輝 スイルム英介 お気に入り
日々の出来事など。

大和で書いた『ヒミツの真子ちゃん』を読み返して妄想した。ああいう系の話。


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「…ハァ。」


西に傾く陽の光が、橙色に街を染める。背を曲げトロトロ歩く俺の影をアスファルトに長く濃く映す。


「なんなんだよ…。」


クロフネから帰路に向かいながら 苛ついてどうしようもなかった。


胸ん中がギスギス疼く。無性に腹が立つ。…と同時に、


「なんで俺……」


へこみもしていた。


足先を変え 帰宅を急ぐガキどもと入れ替わりにタコ公園に足を踏み入れる。


そしてドカッとベンチに座り込み項垂れた。


色んな感情が胸を覆っている。腹立つのと情けないのと、


「ダサ…。」


焦り…と。


髪を乱暴に掻き上げ 陰り始めた空を見上げる。


「もっと言い方あったろーよ…。」


毎度の如く反省…。今日も***を俯かせた俺は。


・・・・


「え?」


「だからー。陸上部の奴から、***って彼氏いんのかーって聞かれた。」


マジか。


放課後決まって喫茶クロフネに集う俺ら幼なじみ 俺とハルとタケ そしてここに居候中の***


ここクロフネは俺らにとってすげー貴重な場所だ。


マスターとは昔からの付き合いだし、俺らの親とも付き合いがある。そういう意味でもなんか楽で。気兼ねなく過ごせる居心地の良い空間


コーヒー頼んでマンガ片手に時間を潰すだけだけど毎日来ていた。別になにを話すわけでもないんだけどな。


でも今日は…。タケがらしくなくニヤニヤしてると思ってた。


「いないって答えたら、じゃ紹介してよって。」


***に惚れてる奴がいるらしい。紹介しろだ?俺にとって最高に気分悪い話。


「モテるねー***。この前も呼び出されてたよね、サッカー部のキャプテンにさ。」


ハルはすかさずアイツを冷やかし始めた。


「モテモテな転校生だね。」


「それな。リュウ兄も『お前の幼なじみ可愛い』って何人にも言われたって言ってた。」


「もうやめて。別にモテないし。茶化さないで。」


***は頬を真っ赤にし冷やかし続けるタケとハルを睨んだけど、


「良い男だよ。どう。」


全然止まんなくて。っつかなに薦めてんだよ…。


俺は***に惚れている。ガキの頃も…子どもながらに好きだって自覚があった。


***が転校して音信不通になって、そんな恋心忘れてたけど、


10年ぶりに再会した瞬間に蘇ったよな。あー、俺コイツ好きって。っつか、また惚れた。


「どうって…。」


「紹介するだけしようか。案外タイプかも。」


「遊びに行くだけでも良いんじゃない。友だちからみたいな?」


タケもハルもガンガン薦めちまう。


俺が***に幼なじみ以上の感情を持ってるということ、二人は知らない。っていうより、


「チッ…。」


まだ、***にさえも伝えてはいなかった。


チラッと***と目が合う。


「…なによ。」


「別に。」


***は髪を耳に掛けながらスッと逸らした。


気持ちとは裏腹に意地悪ばっかしてしまう俺。だからか、***は俺に対してどこか素っ気なくて。


いつも会話の最初は良いんだよな、けど気づけば文句の言い合い、ケンカして機嫌を損ね合う


一歩進んで2歩下がる…こんな関係でいたいわけじゃねーのに上手くいかない。


「あいつ良い奴だよ。一護も知ってるだろ?」


「…ああ。」


「お似合いだと思わね?」


「どうでも。っていうか、」


…まぁ、でも、


また目を合わせた。俺が言うことって言ったら、


「もの好きだよな。」


「え?」


「は?」


「へ?」


「お前みたいな女を好きになるなんて。タケ、アイツに言っとけよ、ブスのうえに性格もすげー悪いけどって。」


「ハァ?!」


こんなんで上手くいくわけねーよな。


・・・・


チラホラ見え始めた小さな星


「ハァ…。」


見る気になれなくて地面に視線を落とした。


***は覚えてるか。ガキの頃次の流星群も一緒に見ようと約束したよな。覚えてたとしても、


「…俺とは見ねーかも。」


ガキの頃には出来なかった『付き合う』ってやつをしたくて、つまりは俺の彼女になって欲しくて、


幼なじみって壁をなんとか壊そうとするのに なんでだろうな、空回りしまくる…他の女にはこんなことねーのに。


こんなんじゃいつまで経っても幼なじみのままだ。いや、それ以下になりそう、嫌われたら俺生きていけねーけど。


「嫌われてるかもな…。」


もう既に…ハァ、マジやべー…。


すっかり日も暮れ、遠慮がちにベンチ横の照明に灯が灯る。何度目かのデカいため息をついた時だった。


ピピ


メールの受信音にピクッと反応する。上げかけた腰を下ろしスマホを取り出した。


「またかよ…。」


そしてメッセージを目にし更に俺は不機嫌になった。


昨夜もあったメール。それは誰からとも知れないキミの悪いものだ。


たったの一文。


『佐東一護。応答せよ。』


「名を名乗れっつの。」


俺は昨日同様受信拒否の設定をする。というか昨日拒否したのにまだ届くのなんで?


「誰だよ…めんどくせ。」


イタズラだと思ってた。昨日も今日も。



next

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