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「あ、いっちゃんおはよ。」
「ああ。」
翌朝 いつもの時間にクロフネに到着。で、共に通学。
転校して来た***が高校に慣れるまで 皆で連れ立って通っていた。けど今は俺だけ。
ハルは生徒会、タケは寝坊 俺は元々クロフネの前を通学路としていたから、団体通学が解消されても偶然が一緒にさせる。ま、 ***に惚れてる俺からすれば願ったり叶ったりって話。
「ね、昨日寝苦しくなかった?」
「それ。暑かったよな。フワァ…ねむ。あんま寝た気しねーわ。」
「いっちゃん授業中に寝る気でしょ。試験近いんだからちゃんと聞いとかないと。」
「お前が聞いとけよ。で、ノート貸せ。」
「やだよお。」
コイツのこういうとこが好き。昨日のイザコザ引きずらない やらかしまくる俺からすればすげー神対応なとこ。
ここ最近遅刻ゼロの俺。どんなに眠くても起きて一緒に登校する。前日モメてたら尚更だ。
「あ、今日夕方雨降るらしいよ。傘持ってきた?」
「は。持ってきてねーよ。お前持ってんの。」
「もちろん。」
自慢げにカバンから折りたたみ傘の持ち手を見せる。
「貸せよ。」
「私が濡れるじゃん。」
「貸せって。」
「やだよ。…もーいっちゃん!」
ガキみたいに戯れあったりとかもする。…やっぱ最初は良い感じなんだよな。すげー良い感じ。
キャッキャッ笑うコイツの笑顔に釣られて俺まで朝からご機嫌。幼なじみだけどそれ以上期待したくなるような。
「だったら、雨が降ったら一緒に帰ろうよ。傘入れてあげる。」
上目遣いで言われでもしたら…顔が熱くなって、
「…テルテル坊主作ろ。」
「どういう意味よお??」
ちょっと意地悪言っちまうんだけど。
高校が近くなってくれば周囲も賑やかになる。声かけてくる奴も増えるから 放っておいてくれって思う。っつか、高校ってこんな近かったか。
正門をくぐる頃 ふとグラウンドに目を向けると朝練してる部活動員らが見えた。
「…そういえばさ。」
いくら機嫌良くはなっても昨日のイザコザを放置出来ない。気になっていたこと、聞いた。
「昨日の話、どうすんだよ。」
「え?昨日の話って?」
俺の視線の先を追い、***は『ああ…』と小さくため息をついた。そして
「…どうしよう、かな。」
「は?」
「どうしたら良い?」
逆に聞いてきた。
「どうって…。」
立ち止まった中庭。目を合わせるこの一瞬。
「…自分のことだろ。自分で決めろよ。」
フッ…と瞳を揺らされた、この一瞬。
あ…。
この時に***の様子がおかしいことに気付いた。伏せた瞳と
「…ですね。」
投げやりな声の調子に。
「いっちゃんに聞いたのが間違いだった。そうだね、自分で決める。」
「…なんだよその言い方。元々俺は関係ね…」
「関係無いよね。だったらどうするのかなんて聞かないでよ、関係ないじゃん。」
最初は良い感じなのに、不意にすげぇ険悪な雰囲気になる。こういうことがよくあった。
***は口元をへの字にし プイッと顔を背ける。そしてスタスタと先を歩いて行った。
「なんなんだよ…。」
上手くいかない。なんでこうなんの。
舌打ちしつつ、上履きに履き変えた時だ。
ピピ
「は。」
僅かな震えと受信音をポケットに感じて。
「んだよ…。」
ダラダラと廊下を歩きながら取り出す。音を消してからメールを確認した。…そうしたら、
「…。」
さすがに廊下のど真ん中立ち止まった。
『佐東一護。応答せよ。』
・・・・
…だれの仕業だよ。
辺りを見渡した。見慣れたいつもの光景 じゃれ合う仲間たちや教室に急ぐ下級生
特別おかしな様子の奴なんて…。
このわけの分からないメールが届いてから今日で三日目。その都度削除し受信拒否もするけど変わらず届く。
昨日は夜遅くにも届いた。で、今かよ?届く間隔が狭まっている。
チャット形式だから俺が見たのは相手に伝わってんだろう。っつか、マジでだれ、言いたいことがあるなら直接言えよ…。
「…クソ。」
拒否しても届くならもう放置するしかない
「キミ悪ぃんだよ…。」
舌打ちをした時だった。…あ、
「っ…」
握っていたスマホがまた震える。俺はその場に座り込みそうになった。
「…勘弁しろよ…。」
『佐東一護。至急応答せよ。』
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