甘い関係:1 (吉祥寺恋色:Short:佐東一護) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

愛おしいです一護ちゃん。

 

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「もうすぐバレンタインだねぇ。ねぇねぇ、皆、紙袋いっぱいとか貰っちゃうの?」

 

ニコニコしながら***は俺らの顔を見渡す。それに対し

 

「ハハ。まぁ、そうだね。食べきれないね。」

 

ハルは照れくさそうに頭を掻き

 

「…。」

 

タケはピースサインでのみ返事をし

 

「一護ちゃんも多いの?っていうかさ、お店ではどんなのが人気なの?ガトーショコラとか?あ、トリュフとかやっぱ根強い?」

 

俺は…

 

「マジ、要らねぇ。」

 

「え?」

 

「要らねぇんだよ。マジで要らねぇっ」

 

ドン。

 

なんてクロフネのテーブルを拳で殴ることを返事として。

 

「は…」

 

目くじら立てている俺に ***は一瞬呆気に取られる。

 

コイツは去年の春にこの街に戻って来たから昨年のバレンタインの様子を知らなかった。

 

普通なら自慢げに見せびらかしそうなもんだけど、俺に限って言えば目にしたくも無い桃色の包装紙。

 

恐怖のバレンタインが来月に迫っている…なんとか昨年の悲劇は免れたい俺。

 

・・・・

 

「な、なんで…?」

 

しつけぇ女 半笑いだとしても追及してきた。

 

「甘いの嫌いなんだよ。」

 

「甘いの嫌いって…変なの、ケーキ屋の息子なのに…」

 

「分からねぇ女だな、お前は。」

 

チッと舌打ちをし 睨み返す。そしてこれでもかと言うほど

 

「ケーキ屋の息子だから、だろ。毎日毎日家中甘い匂いで吐きそうだっていうのに、バレンタインなんかな、俺の部屋中チョコだらけだぜ?寝ても覚めても甘い匂いが充満してんだよ、マジで地獄。」

 

気持ちをぶつけてやった。

 

「…ハァ。」

 

「ハァ、じゃねぇよ。つーか、ケーキ屋の息子にチョコを渡すっていうその神経?ありえねぇだろ。俺が作ったのより美味いのかって話。」

 

「…いや、まぁそこは気持ちって言うか…」

 

「だったら気持ちだけ寄越せ。」

 

「よく言うよ、冷たくフリまくってるくせに。」

 

「頂くものはちゃんと頂いてんだよ。」

 

「え?なに、頂いてるって…どういう意味?」

 

「ガキのお前には分からな…」

 

「ゴホンゴホンッ!…一護〜?」

 

『***の前でいやらしい事言うんじゃないよ』

 

「…ハイハイ。」

 

そんなハルの心の声が聞こえ 口を噤んだりする放課後だった。

 

 「まぁ…実際一護は毎年凄いからな。」

 

タケが 俺とハルの様子にニヤッとしながらも話を戻す

 

「呼び出されちゃぁ渡され待ち伏せされちゃぁ渡され、だもんな。」

 

「店まで来るっつの。」

 

「…へぇ~。…皆見る目無いな…」

 

「あのな…。小さい声で言っても聞こえてんだよバカ女。言っとくけど、俺みたいにモテると苦労が絶えねぇの。お前と違って。」

 

「私と比べる意味が分からないけど。」

 

隠す風もなく 俺を睨む***。

 

あからさまに迷惑だと口にする俺は 女の***からすればすげぇ嫌な男なんだろう。

 

ハルやタケも毎年多い。だけどコイツらは適当に食うし、配ったりもするから大して苦痛ではない。だけど俺は、配るとかそれ自体も怠い。

 

 「ハァ…マジで…。気持ちだけで良いんだっつの…」

 

カラダ付きの。

 

…とはコイツの前じゃ言えねーけど。

 

「一護ちゃんホント贅沢…ホント人でなし…」

 

「ハァ??」

 

「まぁまぁ二人とも。」

 

ハルの笑顔を横目に***と睨み合い プイッとソッポを向く。

 

俺らどういうわけか毎日こんな風で。後腐れないから別に良いけど常にこんな風に言い合ってばかりいた。

 

「ふぅ。」

 

俺と言い合いになるのを ***も対して気にはしていないんだろうと思う。

 

いや、思っていた…んだけど。

 

***は何でもない顔をして紅茶のカップを手に取る。そしてゆっくりと飲みながらハルに話掛けた。

 

「バレンタインか…。モテる彼を持つと彼女は大変だね。皆の彼女は大変だ〜。」

 

「ハハ。いればね。揃いに揃って居ないからね。」

 

ハルと顔を見合わせ笑い合っていたが 多分その会話がタケにこんな事を思いつかせたんだと思う。

 

「良い事思いついた。」

 

「ん。」

 

漫画をパタッと閉じ俺と***の顔を交互に見つめる。そして

 

「***、一護。お前ら付き合えば。」

 

「へ?」

 

「バレンタインまで。」

 

「は…」

 

んなこと…突然言い出して。

 

「ハァ??」

 

俺もハルも…当然***も。大げさな程の反応を見せたけれどタケは冷めた顔をしていた。そしてサラッと

 

「彼女がいると知ったら一護へのチョコレートも随分減るだろ。」

 

「は…」

 

「***も一護がどうしてモテるのか分かるんじゃないの。」

 

「え…」

 

クソタケ、変な提案してきやがって。

 

・・・・

 

「いっつも喧嘩してるから。期間限定で付き合ってみたら。」

 

そう言ってまた漫画を手に取りページを捲り始める。

 

「…。」

 

腕組みをしたまま ***に視線を向けると

 

「…。」

 

***はカップを持ったままゆっくりと俺に目を向けるところで。

 

「…プッ。二人とも固まっちゃったよ。」

 

ハルが吹き出したのを合図に 俺は指を鳴らす。

 

そして

 

「すげー良い案じゃんそれ。」「あり得ないでしょそれ。」

 

「は?」「え?」

 

俺にとってはスゲー助かる感じ。だけれどコイツは

 

「…え、嫌だ。」

 

俺のこと…マジでキライだった感じ。

 

 

next

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