見る限り鍵なども付いていない。


「おい、開かねーよ!っていうかお前誰だよ!」

「名前なんて意味の無いものですよ。」


だめだ、まるで会話が成立していない。


「お前は僕に何をさせたいんだよ!」

「別になにも君にしてもらうことなどありません、しかし、今の状況にこそ意味があるのですよ。」


ひょとしてこいつ・・・電波か?

これ以上こいつと話しても話が進まないので図書館を出ようとした。


しかし足が地面に張り付いたように一歩も動けない。


「まあ、しばらくじっとしていてくださいよ。

じきに何が起こるか分かる筈です。」


ふとさっきの扉を見てみると、扉が少し開いていた。

結果からいうと、受付の人はいなかった。

しかし、見覚えのない男が一人。

受付の人がいるはずのカウンターで、ゆっくりとハードカバーをめくっていた。


いつもにこやかな笑顔を見せてくれる、司書の人の代わりに、薄っぺら委笑いを僕に向けた。


「やっと、ですか」

「何がだ?」


ふふふ、と男は笑う。


僕はこの男に見覚えはない。

今まで生きてきて、こんなに不快な笑顔を見るのは初めてだ。


「お前は、誰だ?」

「今あなたが聞きたいのはそれじゃないでしょう?」

この男、あっさり無視しやがった。


「まぁ、名前がわからなければ、不自由ですからね。」

不都合が来る前には、教えますよ…。

そう言って、男は席を立つ。


仕方なし二、僕は別のことを聞く。

この男、何か知ってそうだ。


「他の人は、どこに?」

「正確には、あなたがどこにいるか、ですね」


「なに?」

「この世界から出て行きたいのなら、それは簡単です。」

男は、ゆっくりと本棚を指差す。

「あそこから出て行けばいいのです」

「……?」

目を凝らすと、本棚の後ろに大きな鉄製の扉があるようだ。

しかし、簡単には開きそうにもない。


ためしに本棚を動かして、扉を開けようとする。


びくともしない。

物音がした方に行ってみると、窓ガラスが割られていた。

窓ガラスが割れたという話は聞いていないし、さっきの音はこれか。

しかしこちら側からガラスが割られたようで、破片は落下して下の花壇に突き刺さっていた。


トイレのドアを開けてみた。

しかしそこには人影は無く、蛇口から水が溢れ廊下まで溢れていたようだった。

トイレの窓から外を見てみる。

運動場や道路には人影は無く、遠くを見ても車一台すらも走ってないようだ。


とりあえず蛇口を止める。


まだ寝惚けた頭を覚醒させるためにウォータークーラーの水をがぶ飲みした。

目は覚めたが、現実は相変わらず僕を孤独にさせたいようだ。


「とりあえず、人を見つけるかねぇ」


いつでも人が居ると思われる図書館に行ってみた。

あそこなら受付の人がいつでもいるだろうし。


・・・多分。