結果からいうと、受付の人はいなかった。
しかし、見覚えのない男が一人。
受付の人がいるはずのカウンターで、ゆっくりとハードカバーをめくっていた。
いつもにこやかな笑顔を見せてくれる、司書の人の代わりに、薄っぺら委笑いを僕に向けた。
「やっと、ですか」
「何がだ?」
ふふふ、と男は笑う。
僕はこの男に見覚えはない。
今まで生きてきて、こんなに不快な笑顔を見るのは初めてだ。
「お前は、誰だ?」
「今あなたが聞きたいのはそれじゃないでしょう?」
この男、あっさり無視しやがった。
「まぁ、名前がわからなければ、不自由ですからね。」
不都合が来る前には、教えますよ…。
そう言って、男は席を立つ。
仕方なし二、僕は別のことを聞く。
この男、何か知ってそうだ。
「他の人は、どこに?」
「正確には、あなたがどこにいるか、ですね」
「なに?」
「この世界から出て行きたいのなら、それは簡単です。」
男は、ゆっくりと本棚を指差す。
「あそこから出て行けばいいのです」
「……?」
目を凝らすと、本棚の後ろに大きな鉄製の扉があるようだ。
しかし、簡単には開きそうにもない。
ためしに本棚を動かして、扉を開けようとする。
びくともしない。