灰色の空の濃淡花の雨
もう雨が上がったようですが、少々寒いですね。
花の雨心理の本に鬱の文字
姿なき飛行機の音花の雨
花の雨時を留めてゐるやうな
赤々と煉瓦の塔や花の雨
花の雨一角すべて供養塔
彫像の表情あらは花の雨
花の雨空にぬくみのあるやうな
花の雨人肌にする昼の酒
街角に紅を流して花の雨
涎掛け苔むすもあり花の雨
幹と枝なほ黒ぐろと花の雨
花の雨人に怒りも諦めも
尾瀬といふ名前の本や花の雨
花の雨寺町通りてふところ
花の雨不在通知の荷の在り処
花の雨一歩も外へ出ぬ一日
花の雨化粧ののりの良き日とも
踊り場が喫煙所なり花の雨
花の雨奥千本といふところ
山肌の濃淡しるき花の雨
奥多摩を墨絵としたる花の雨
縁側で頂くお茶や花の雨
花の雨和菓子の店の明るさよ
花の雨西行庵といふところ
城趾を仰ぐ盆地や花の雨
花の雨むかしの旅は草履にて
花の雨蕾は紅を濃くしたる
花の雨無相無念といふ言葉
花の雨日輪待機してをりぬ