冬桜遠峰が透けてゐるやうな
寒波が音もなく忍び寄って来ている感じの天気です。
白雲の寿ぎてゐる冬桜
連山の尾根引き寄せて冬桜
冬桜枝しなやかに風に揺れ
石楠花の蕾仏のごとくをり
石楠花の蕾不動の姿かな
秘めしことあるかに咲きぬ寒椿
一輪の紅を極むる寒椿
立ち止まり見つけられたる寒椿
落葉踏みさわりと地球沈みけり
ふわふわと落葉溜りの苑の道
花弁の全開ならず寒桜
寒桜鳥の鳴き声枝に満つ
先陣に続く中陣寒桜
蕊に色まづ満たしたる寒桜
幹も枝も苔むすごとく寒桜
仏の座四方八方傾ける
純真な時代もありぬ寒椿
一樹にも色香あるなし寒椿
土踏めば深く沈みて春隣
冬木の芽まづ枝の色鎧ひをり
紅の色深く蔵して冬木の芽
甲冑のやうに鎧ひぬ冬木の芽
まづ殻を破る勇気や冬木の芽
結び目のどこかにありぬ冬木の芽
木蓮の芽五百羅漢の化身とも
木蓮の芽まるで修験者なりしかと
白雲へジグソーパズル木蓮の芽
木蓮の芽ぶらり世間を眺めをり
今はただ揺り籠の中木蓮の芽