想ひ出を満たすごとくに散る桜
踊子草も咲き始めました。山で見たいものです。
菜の花の仮設現場の跡地埋め
春空や途切れてひとつ飛行機雲
一軍に後先のあり諸葛菜
ひかりみな柔らかくせる若葉かな
一羽二羽若葉の中の烏かな
若葉光大樹の根本潤せり
山襞を白衣に延べて春の富士
春霞真白き富士を隠せざり
風道は四方八方散る桜
ひと渓を雪崩れくる山吹の花
はけの水湧きゆくところ山吹の花
全身で日差しとなれる豆の花
思はざるところに影や蝶々ゆく
柳芽吹き天のひかりとなりにけり
芽吹きみな土をほぐしてをりにけり
木道をゆけば果てなき若葉光
散り際の静けさといふ朝桜
ひと叢に広さのありぬ二輪草
固まりてひとつの笑顔二輪草
方向の同じ嬉しさ著莪の花
薄闇を引き寄せてゐる著莪の花
寄るべなき天界に立つ木五倍子かな
青空に重さありさう八重桜
青銅の屋根のひかりや散る桜
風のなき日に安らげる桜かな
鳥声が散らしてをりし桜かな
方丈にある勝手口チューリップ
菜の花のぬくみの中の一軒家
春の土なにかを待つてゐるやうな
弁天堂表に裏に白躑躅