●ユニオン・ショップ協定の問題点 | 尾沼社会保険労務士事務所

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労働組合が「労働者(の権利)を守るため」とその存在意義の正当性を本当に主張したいのなら、「ユニオン・ショップ協定」を会社側と締結しようとするのでなく、組合に入るか入らないか従業員が選択できるオープン・ショップであるか、そもそも志を同じくしている仲間で会社を作るクローズド・ショップであるべきでないでしょうか。ユニオン・ショップ協定には政治的な利権が絡んでおりダーティーなイメージがあることをどうしても払拭できません。


労働組合を結成することは労働者の正当な団結権として日本国憲法に保障されており、既得権としてそのこと自体は批判しませんが、「ユニオン・ショップ協定」には、上部団体など特定の政治団体と結託して、「みかじめ料」とまで言わないものの、組合員から集めた多額の資金がその団体へ流れている現状があります。従業員がその政治団体を支持していれば問題ないかもしれませんが、「自衛隊は違憲だ」といった趣旨の政治色の強いメッセージのポスターが職場に掲示されたりすることもあり、無党派層や他の政党を支持している従業員もいるわけで、「労働組合に入らない」という選択肢も本来なら当然あるわけです。

 

 

しかし、ユニオン・ショップ協定は、労働組合に異を唱える気に食わない組合員がいればその組合から除名し、会社から解雇することさえ可能とする制度でもあります。「解雇」は、本来、会社の人事権に属するのですが、労働組合が会社に代わりその人事権を濫用するという現象が実際に起こっており、裁判沙汰にまでなっています。従業員の立場からすれば、雇用契約を締結している相手はあくまで会社でありその労働組合ではありません。


また、①労働組合に集まるその多額の資金を目当てに組合執行部に近づく人間も多く横領や窃盗など不祥事が頻繁に起こっていること、②労働組合が憲法で保障された制度であることを盾にそれを悪用したビジネスを展開する組合も存在すること、③そもそも労働運動の歴史を紐とけば背後関係がハッキリせずブラックボックスと化して破防法(破壊活動防止法)の適用のある反社会的な「内ゲバ」に象徴される過激派の潜在的な温床としてフロント企業と化してないかなど、学術上における「労働組合」と実際とでは乖離があり、資本家階級と労働者階級との対立の構造・分断を前提として「労働者(の権利)を守るため」という今の若い人たちへ向けて発信している勧誘活動の建前・大義名分には、政治のカラーが色濃く出ており、強い異和感を感じざるを得ません。


最近では、個人が入れる「弁護士(費用)保険」というものが誕生しており、月額3,500円程度の保険料で年間最大で500万円まで弁護士費用を全額保証してもらえるなど、労働トラブルに限らず、相続や交通事故など日常生活全般にも使えるので、労働者の立場からすれば、労働組合に入っていても結局のところ弁護士に頼らざるを得なくなる状況を考えると、「用心棒代」として組合費を払うより「お守り」としてこちらの商品を購入する方がよほど使えるのではないかと思えます。

 

 

「物分かりがよい」慣れ合い、表向きの労使協定のみならず裏側の労働協約におけるメリットなど、さまざまな理由から労働組合を「必要悪」と捉え、ユニオン・ショップ協定は「仕方がない」とする経営者もいますが、労務管理上、会社経営に労働組合は必ずしも必要なく、自社のすべての従業員を公平に大切とするのなら、労働組合とユニオン・ショップ協定を締結している状態はやはり「望ましい」とはとても言えません。それを放置することは「従業員を大切にしている」美徳と捉えることはできず不勉強なのか「経営者としての決断力を欠く」とは言えます。また、「面倒くさそう・面倒くさい」という理由だけで物事を突き詰める前から何もせず現状維持を望むのは「経営者の発想ではない」とも言えます。「日本的経営」のすべてが労働組合を必要としているわけでもありません。雇用契約の当事者はあくまで会社と各従業員であって、そこに第3者を挟む余地はないのです。

 

 

特定社会保険労務士 尾沼昌明

 

 

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