健康保険の被保険者数が5人未満の極めて小規模な法人であって、一般の従業員となんら変わらない労働に従事している会社の代表者(社長)については、業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病(労災)について、健康保険から保険給付を受けることができます。
※1、健康保険は、通常、業務に起因しないで生じた私傷病に対して、保険給付が行われます。したがって、原則からすると、法人の代表者は、労災に対して、労災保険に特別加入しない限り、労災保険からも、健康保険や国民健康保険からも、保険給付を受けられないことになりますが、特例として、一定の要件を満たしていることを条件に、健康保険から保険給付を受けられる取扱いがなされています。
ただし、健康保険から、賃金補償にあたる傷病手当金を受けることはできません。
※2、1日あたりの傷病手当金=標準報酬日額×2/3
※3、標準報酬日額=標準報酬月額÷30
※4、傷病手当金は、最大で1年6ヶ月まで支給されます。
起業して法人を設立すると、その法人は、健康保険の強制適用事業所 になります。つまり、法人を設立したばかりで、従業員をまだ雇っていないとしても、健康保険では、その社長は、その法人に雇われているとみなされ、原則として、健康保険の被保険者となります。
一方、労災保険では、社長や個人事業主(一人親方)は、労働者として扱われず、原則として、労災保険の適用が受けられませんので、労災保険の適用を受けたいのであれば、特別加入する必要があります。
特別加入する大きなメリットとしては、たとえば、次のようなものがあります。
①労災による傷病については原則として治療費が無料になる(療養(補償)給付)。
②傷病手当金相当の賃金補償にあたる休業(補償)給付がある。
③治癒しない間のつなぎの傷病(補償)年金がある。
④障害が残り働けなくなったときの障害(補償)給付がある。
※5、1日あたりの休業(補償)給付=給付基礎日額×60/100
※6、給付基礎日額(労災保険)=平均賃金(労働基準法)
※7、平均賃金=3ヶ月の賃金総額÷3ヶ月の総暦日数
※8、※7の平均賃金の計算式は、あくまで原則的なものの例示です。
※9、※7の賃金総額は、労働保険の年度更新の賃金総額と、異なる意味で使われています。
※10、※7の平均賃金の計算式の例示にかかわらず、社長や個人事業主には「賃金」が存在しないので、※5の給付基礎日額を任意で選択してもらうことになります。
※11、休業(補償)給付は、最大で1年6ヶ月まで支給されます。
※12、1日あたりの傷病(補償)年金=給付基礎日額
※13、傷病(補償)年金は、治癒するまで支給されます。
※14、治癒(ちゆ)とは、症状が安定し疾病が固定した状態にあること、治療の必要がなくなったことを指します。
※15、1日あたりの障害(補償)給付=給付基礎日額
※16、障害(補償)給付は、年金または一時金の形で支給されます。
※17、障害(補償)年金が支給されると、支給額が調整されるものの、1階部分の障害基礎年金・2階部分の障害厚生年金の上乗せとして、3階建てになることがあります。
※18、3階建てになると、それぞれ年金の支給率は、障害基礎年金100%・障害厚生年金100%・障害(補償)年金73%になります。