スパ☆太郎の日本一周!3000温泉の旅 -2ページ目

温泉ワーケーションの成果は「移動距離」に比例する

温泉地に来ると、

ずっと頭の中でモヤモヤとしていた考えが整理されたり、

新しいビジネスのアイデアを思いついたりすることがよくある。

これは、日常から遠く離れた空間に身を置くことと関係している。

今回は温泉ワーケーションと移動距離の関係について考えてみよう。

 

私にかぎらず、

「温泉に入っていたらおもしろいアイデアを思いついた」

「帰りの新幹線の中でずっと懸案だった問題を解決するヒントが見つかった」といった経験をしたことがある人は多い。

なぜ、このようなことが起きるのだろう? 

単なる偶然や気のせいにすぎないのだろうか?

早稲田大学大学院教授で、『世界標準の経営理論』

『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』などの

ベストセラーの著者としても知られる入山章栄氏は、

「移動距離に発想力は比例する」と述べている。

経営者やイノベーターが、イノベーションを次々と起こせるのは

「知の探索」を怠らないからだ。

入山氏は雑誌の記事の中で、知の探索についてこう説明している。

イノベーションの源泉の1つは「知と知の組み合せ」です。

たとえば、自社の既存のビジネスモデルという「知」に、

他社が別事業で使っていた手法などの「別の知」を組み合わせることで、

新しいビジネスモデルや商品・サービスを生み出していくことです。

そのためには色々な知の組み合せを試せた方がいいですから、

企業は常に「知の範囲」を広げることが望まれます。

これを世界の経営学では「Exploration(知の探索)」と呼んでいます。  

 『日経ビジネス』ウェブサイトの入山氏の記事

――「イノベーションが止まらない『両利きの経営』とは?」より引用


私が知っているビジネスマンエリートや経営者もよく旅をする。

出張も厭わず、飛び回っている。

ある売れっ子のコンサルタントは1年に150回以上飛行機に乗るという。

これは彼らが、新しい知を求めて、

いつもの自分の行動範囲から離れた場所に足を運び、

これまで認知してこなかった土地や現場、空気、人に触れることが

重要であることに気づいているから。

ビジネスパーソンにとって「知の旅」をして、

自らの知の範囲を広げることは大切なのだ。

遠く離れた温泉地に足を運ぶ「温泉ワーケーション」もまた、

日常とはまったく異なる世界に身を置くことになる。

温泉街という異空間、旅館の佇まい、豊かな自然環境、滞在先で出会う人、のんびりとした時間の流れ、都会とは鮮度の異なる空気・・・。

そうした、いつもの行動範囲で見聞きするものとは異質なものに

触れることで、新しい「知」や「感覚」を得られ、

それがビジネスにプラスとなるアイデアやイノベーションに

つながるのかもしれない。

もちろん、温泉以外の場所にワーケーションで滞在しても、

知の探索はできる。

これまで訪れたことのない都市に行けば、

それもまた知を刺激することになるだろう。

「温泉と向き合うことがメインとなる温泉ワーケーションでは、

湯船につかるだけで刺激が少ないのでは?」

と疑問に思う人もいるかもしれない。

だが、ただ静かに温泉につかる行為こそが、

アイデアやイノベーションを生む可能性もある。

温泉にのんびりつかり、リラックスした状態でいると、

思わぬ贈り物を受けとれることがある。

脳科学の研究によると、

リラックスした状態をつかさどる副交感神経が優位で、

くつろいでいるときほど脳は活発に働くとされている。

これを「デフォルト・モード・ネットワーク」という。

 

トイレに入っているときや散歩中にアイデアを思いつくという話をよく聞くが、

それと同じである。

リラックスできる温泉は、

デフォルト・モード・ネットワークが働きやすい条件がそろっている。

会社のデスクでPCとにらめっこしながら頭を捻ってみても、

ユニークなアイデアは生まれない。

温泉入浴のように脳がリラックスした状態だと、

ふとした瞬間にブレイクスルーするアイデアが天から降りてくるかもしれない。

「移動」×「温泉」の組み合わせは、あなたの発想力を刺激し、

新しいアイデアを生み出すポテンシャルを持っている。

そういう意味では、「温泉ワーケーション」の最中に取り組むべき仕事は、

「アイデア出し」「将来の戦略立案」「問題解決」などクリエティブな作業が

最適といえるかもしれない。

 

 

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「目的」のない温泉ワーケーションは失敗する

今回は「温泉ワーケーション」を充実させるポイントをお伝えしたい。

まず大事なのは、事前に「目的」を決めることだ。

 

温泉ワーケーションを実行する前に決めておきたいことがある。

それは、「何を目的とするか?」だ。

具体的には「ワーク」と「温泉」の時間配分をどうするか

そして、何をもって「成果」とするかである。

「温泉ワーケーション」の目的には、大きく分けて2つあると考えている。

①温泉フォーカス

②仕事フォーカス


これを事前に決めておかないと、

「期待していたよりも仕事が進まなかった」

「せっかく温泉地まで行ったのにリラックスできなかった」などと

不満を残すおそれがある。

私にも失敗した経験がある。

仕事の納期が迫っている時期に

「気分転換に温泉宿で仕事をしよう」と思い立ち、

3泊4日の日程である秘湯の宿を予約した。

そして、出発当日。

想像以上に仕事の進捗が遅れていたので、

行きの新幹線やバスの中でもPCを開いて作業をする始末。

温泉宿についてからも、納期に追われ、

入浴と食事の時間以外はずっとPCのキーボードを叩くこととなった。

しかも、秘湯の宿ということもあって、当時はWi-Fiも飛んでいなかった。

スマホや電話で仕事のやりとりをせざるを得ず、

ストレスをためることにもなった。

せっかくの温泉も台なしである。

初めて訪れる温泉宿だったので、

湯浴みや料理をもっとじっくり味わいたかったが、

納期へのプレッシャーからまったく楽しめなかった。

結局、チェックアウトぎりぎりまで仕事をし、

寄り道もせずに早めに帰路につくこととなった。

帰宅後、仕事はなんとか切り抜けたが、

「わざわざ温泉に行った意味があるのか?」と

後悔したのを今でも覚えている。

切羽詰まっているほど仕事の納期が迫っているのであれば、

「温泉ワーケーション」に行くのではなく、

自宅や職場で仕事をしたほうがはるかに捗っただろう。

もしくは、事前に仕事フォーカスのモードでワーケーションをすると決めて、

温泉付きのビジネスホテルなどで「缶詰め状態」になれば、

「温泉のおかげで仕事が捗った」と充実感を味わえたかもしれない。

「温泉も仕事も」と欲張ったがゆえに、

中途半端な結果に終わってしまったといえる。

反対に、仕事の成果がほとんど出なくて、

自分にがっかりした経験もある。

温泉に入りたくなり、

5日間のスケジュールである温泉地へワーケーションに出かけた。

ところが、仕事の納期に余裕があったこともあり、

特にどんな仕事をするかを決めずに出発してしまった。

「とりあえずPCを持っていけばなんとかなるだろう」という感じだったと思う。

人は目的や目標がないと動けないものだ。

結局、5日間の滞在中、

温泉に入る以外はテレビやネットサーフィンばかりで、

だらだらと無為な時間を過ごしてしまった。

一度もPCを開かなかったのだから、仕事が進むわけがない。

このときも、帰ってきてからひどく後悔した。

「全然仕事が進まなかった。こんなはずではなかったのに・・・」と。

別に、温泉地で仕事をしなかったこと自体が悪いわけではない。

最初から、「今回は温泉フォーカスでゆっくり湯浴みを楽しもう」

というモードで臨めば、満足のいく滞在となったはずだ。

「仕事も進めよう」という気持ちが中途半端にあったから、

不満が残る結果となってしまったのだ。

このような苦い経験をした私は、

それ以来、温泉ワーケーションに出かける前に、

目的をしっかりと定めるようにしている。こんな具合だ。

「大きな仕事が一段落したから、

今回は温泉にフォーカスしてゆっくりしよう。

仕事は取引先とのやり取りと2件のZoom会議以外はしなくてOK」

「集中して進めたい企画Aがあるから、今回は仕事にフォーカスする。

そのためにWi-Fiなど仕事に集中できる環境の宿を選ぼう」

「仕事」と「温泉」の時間配分も事前に決めておくといいだろう。

たとえば、仕事フォーカスであれば、

「早朝と午前中、そして午後は仕事に集中しよう。

ただし仕事は17時までにして、夜は温泉に入って静かな時間を過ごそう」。

 

逆に温泉フォーカスであれば、

「仕事は午前中に集中して終わらせよう。

それ以外の時間は入浴と温泉街の散策を楽しもう」

といった感じだ。

仕事の「成果」も事前に決めておくといいだろう。

「滞在中に最低限、仕事Aは終わらせる」といった目標があれば、

それに向けて集中することができる。

ただし、目標設定は無理のない範囲が望ましい。

目標が未達で終われば、

「温泉に入っていたせいで仕事が終わらなかった」と

罪悪感を抱いてしまうかもしれない。

‟温泉”ワーケーションなのだから、湯に罪はない。

「ちょっとさぼっても終わる」くらいの目標設定がちょうどいいだろう。

一般に、目標は少し背伸びをするくらいのレベルが望ましいといわれるが、

温泉ワーケーションでは背伸びは禁物である。

このように、事前に目的や時間配分、成果を決めおくと、

「こんなはずではなかった」とモヤモヤした気持ちになることを

防ぐことができるはずだ。

あなたが温泉ワーケーションに出かける「目的」は何だろう?

 

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作家は「温泉ワーケーション」の先駆者だった

温泉を愛した文人墨客は多い。

今も「作家〇〇〇〇先生ゆかりの宿」は全国の温泉地に存在する。

温泉宿に長期滞在して作品を書き上げる。

これは、現代でいえば、温泉地で仕事をして成果を出す、

つまり「温泉ワーケーション」と同じである。

100年以上も前から温泉地で作品づくりに励んでいた小説家は、

温泉ワーケーションの先駆者であったわけだ。

 

温泉地で執筆作業をした作家の代表格は川端康成である。

なかでも伊豆の温泉を愛した川端康成は、

1924年に名作『伊豆の踊子』を温泉宿で書き上げている。

 

滞在したのは、中伊豆に位置する湯ヶ島温泉「湯本館」。

現在も川端康成が逗留した部屋が残り、当時を偲ばせる。

ちなみに、源泉かけ流しの温泉もすばらしい。

川端康成はよほど湯本館を気に入ったようで、

定宿として長期間逗留しながら執筆活動を続けたという。

 

「伊豆の踊子」と旅をした翌年、私は神経痛をわずらって、

湯ヶ島の湯本館へ療養に行った。湯本館の湯は冷える方で、

神経痛には向かないと後で知ったが、その時は1週間ほどで治った。

それから昭和2年まで10年の間、私は湯ヶ島にいかない年はなく、

大正13年(1924年)に大学を出てからの3、4年は湯本館での滞在が、

半年あるいは1年以上に長びいた。

『伊豆の踊子・温泉宿』(岩波文庫)あとがきより

 

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という

冒頭の一節で知られる『雪国』は、

越後湯沢温泉を舞台とする川端康成の名作である。

『雪国』は現在も営業を続ける老舗旅館「雪国の宿 高半」で書き上げられた。同旅館の「かすみの間」で、

1934年(昭和9年)の晩秋から1937年(昭和12年)にかけて

執筆に取り組んだという。

硫化水素が香る透明の温泉はかけ流しで、

やさしい肌触り。毎日つかっても飽きがこない名湯である。

ちなみに、高半の近くにある共同浴場「山の湯」は

越後湯沢で1、2を争う泉質であり、川端康成もたびたび入浴したという。
川端康成は、『伊豆湯ヶ島」という作品の中で、

温泉への思いをこう述べている。

私は温泉にひたるのが何よりの楽しみだ。

一生温泉場から温泉場へ渡り歩いて暮らしたいと思っている。

それはまたからだの強くない私に長命を保たせることになるかもしれないし。
 

温泉で心身を癒されながら名作を生み続けた川端康成。

温泉は彼の旺盛な創作活動を陰でサポートしていた、と言っていいだろう。

川端康成にかぎらず、温泉地で執筆活動に取り組んだ作家は

枚挙にいとまがない。

『痴人の愛』『春琴抄』『細雪』などの作品で

日本近代文学を代表する作家となった谷崎潤一郎は、

関西在住時、執筆のためにたびたび有馬温泉を訪れた。

常宿は「陶泉 御所坊」。

鎌倉時代の創業と伝わる名旅館である。

有馬温泉は作品にもたびたび登場し、

『細雪』や『春琴抄』の作中でも舞台のひとつとして描かれている。

『城の崎にて』を執筆した志賀直哉は、

列車事故による怪我の療養のために滞在した城崎温泉をたいそう気に入り、老舗旅館「三木屋」を常宿として、執筆や思索に取り組んだ。

記録に残っているだけでも「三木屋」を13回訪れているという。

『足摺岬』などの作品で孤独な若者の群像を描いた田宮虎彦は、

執筆のために岩手県花巻市にある鉛温泉「藤三旅館」を訪れ、

1カ月あまり滞在した。

自炊棟に湯治に来ていた散髪屋から聞いたエピソードをもとに

書き上げたのが、『銀心中』という作品だ。

なお、藤三旅館の混浴「白猿の湯」は水深125センチの名物風呂だ。

しかも、湯底からピュアで透明な源泉が直接湧き出す「足元湧出泉」。

温泉好きが手放しで褒め称える名湯である。

「この湯に1カ月もつかっていれば、いい作品ができてもおかしくない」

というのは短絡的な発想だろうか。

現代でも温泉宿は、小説家にとって創作の場である。

芥川賞作家で『乳と卵』などの作品で知られる川上未映子さんは、

小説執筆のために、湯河原温泉『オーベルジュ湯楽』という宿に

長逗留したことを、自身のブログに綴っている。

「金輪際ふざけないで! というくらいにご飯がおいしくて、『どうせまたおいしいのやろ!』とレストランに行く廊下でつぶやくほどに毎晩何もかもがおいしく、部屋からほとんど出ないわたしは最初はそのおいしさの陳列にすこぶる戸惑いもしたが最後は唯一の楽しみになっていました」


オーベルジュ湯楽は、私も温泉ワーケーションのために

連泊したことのある大好きな宿であるが、すこぶる食事がおいしい。

一般的な旅館メシとは一線を画すコース料理で、

和食とイタリアンを融合させた創作料理は一品ずつ供される。

前菜にはじまり、天然地魚のお造り、

有機大根とムール貝のスープを使った自家製パスタ、

鯛のグリル、ふじやま和牛サーロインのタリアータ、

サーモンとせりの炊き込みご飯、本日のデザートまで――。

地元の食材を活かした創作料理の数々は、

ワインがぐいぐい進むおいしさ。見た目も色とりどりで、食欲を誘われる。

 

温泉も、湯河原温泉では貴重な源泉かけ流しである。

この充実度で、料金は1万円台後半から

(料理や部屋をグレードアップするプランもあり)。

コストパフォーマンスは抜群である。

ちなみに、同じ湯河原温泉にある旅館「加満田」は、

水上勉や坂口安吾ら多くの文人墨客に愛された老舗宿だ。

日本で初めて執筆のために「缶詰」にされたのは

評論家の小林秀雄だと伝わるが、その舞台となったのが同宿である。

私も宿泊したことがあるが、文豪になった気分になり、

不思議と仕事が捗った。

このように温泉地は、作家が何週間、何カ月も滞在しながら

名作を書き上げてきた舞台である。

自然豊かで、非日常な空間は作家にとって創作意欲を刺激したのであろう。また、日常から離れて温泉で心身をリフレッシュさせることで、

作品を書き上げるための英気を養ったに違いない。

こうした温泉がもたらす効果は、

職業こそ違っても現代のビジネスパーソンでも享受できる。

いつものオフィスや在宅ワークとは異なる環境に身を置くことで、

これまでとは異なる発想が生まれやすくなるし、

温泉のリフレッシュ効果によって脳の働きもよくなる。

そういう意味では、温泉ワーケーションは、

新しいアイデアの着想を得たり、困難な課題の解決策を思索するなど、

クリエイティブな仕事をするには最適である。

作家気分にひたりながら、

旅館で温泉ワーケーションをしてみてはいかがだろうか。

斬新なアイデアが降りてくるかもしれない。

 

ワーケーションは「とりあえず温泉」が正解

「温泉ワーケーション」は、温泉地で仕事に取り組むことである。

では、なぜ温泉なのか? 

ワーケーションをするなら、高原リゾートでも、ビーチリゾートでも、

都心の高級ホテルでも、田舎体験のできる地方でもいいはずだ。

それでも私が温泉地でのワーケーションをすすめるのは、

やはり温泉とワーケーションの相性がよいことに尽きる。

今回は温泉とワーケーションの関係について考えてみよう。

 

「次の休み、旅行でも行こうか?」

「とりあえず温泉なんてどう? ゆっくりしたいじゃない」

「いいね!」

よくある会話である。

お年寄りはもちろん、働き盛りの人でも「旅は温泉」という人は多い。

いまどきの学生でさえ、友人との旅行の候補地として温泉が挙がるという。

飲み会では「とりあえずビール」が定番だが、

旅行では「とりあえず温泉」が定番である。

温泉に関する本を読んでいると、

「日本人のDNAには温泉の記憶が刻まれている」といった

表現がよく使われている。

これはあくまで比喩でしかないが、

「旅行といえば温泉」というイメージが多くの日本人の脳に

刷り込まれているのはたしかだろう。

もちろん、若い頃の私のように、

温泉にまったく興味をもたない人も一定数いるが、

「温泉が好き」という日本人が多数派であるのは議論の余地はないと思う。

ワーケーションにおいても「とりあえず温泉」という日本人が多いことは

予想していたが、BIGLOBEの「ワーケーションに関する調査」では、

実際に次のような結果が出ている。

本調査は、全国の20代~50代の男女1,000人(リモートワークが可能な企業に勤める会社員900人(内、人事・労務担当者100人)・リモートワークが可能な企業の経営者100人)を対象にアンケート形式で実施しました。調査日は2021年3月8日~3月10日、調査方法はインターネット調査です。
 

ワーケーションに関心のある会社員523人に、

「ワーケーションをするならどのような場所でしたいと思いますか」と

質問したところ、

1位「温泉宿」(66.0%)という結果になったという。

 

これは予想通りの結果であるが、

実際、温泉宿でワーケーションをするメリットは大きい。

いちばんのメリットは、すぐに温泉でリフレッシュできることだ。

宿でひと仕事したら、数分後には温泉に入れる。

また、一日の終わりに温泉でゆっくり心身の疲れを癒やすこともできる。

さらには、朝、仕事前に温泉につかり、

リフレッシュされた状態で仕事にとりかかることも可能だ。

宿で食べる料理や、まわりの温泉街、自然環境もリフレッシュ効果がある。

先のBIGLOBEの「ワーケーションに関する調査」によると、

温泉地でワーケーションをすることに魅力を感じる会社員596人に、

「温泉地でワーケーションをすることに感じる魅力」について質問をすると、

「仕事の休憩がてらの温泉入浴」(69.3%)が1位、

「一日の疲れを温泉で癒す」(59.1%)が2位になったという。

 

ビジネスパーソンの多くが、温泉地でのワーケーションに、

リラックスや疲労回復を求めていることがわかる。

実際、仕事のあとに入る温泉は解放感が高まり、最高の気分である。

温泉宿でワーケーションをする、もうひとつのメリットは、

同じ敷地内で「ワーク」も「バケーション」も完結することだ。

これは大きなアドバンテージである。

とりあえず温泉宿にチェックインすれば、

ワーケーションを実行する環境が整う。

移動の必要がないから、時間も有意義に使え、仕事も休息も両立しやすい。

温泉宿で完結できれば、

観光やアクティビティに興味のない人は無理に外に繰り出す必要もない。

仕事の合間にゆっくり温泉に浸かる――

それだけで立派なワーケーションとして成立する。

そういう意味では、ワーケーション初心者に温泉宿はうってつけである。

これは個人的な感想であるが、

「仕事も温泉も観光もレジャーもグルメも全部充実させたい」という

テンションでワーケーションに行くと、

すべてが中途半端に終わりがちだ。

欲張ったせいで、逆に疲労して帰る羽目にもなる。

だから、私は温泉ワーケーションに出かけたときは、

周囲を散策するくらいで、基本的には温泉宿にこもる。

仕事と入浴、そして休憩と食事。

それだけで十分すぎるくらい充実した時間を過ごせる。

観光することもあるが、行き帰りに立ち寄るケースがほとんどで、

宿にチェックインしたら、わざわざ外に出かけることはしない。

「温泉ワーケーション」は、宿さえ押さえればワーケーションとして成立する。手っ取り早く、気軽にワーケーションを体験できるという意味でも、

温泉とワーケーションは相性がよい。

会社のチームでワーケーションをする場合は、

同じ空間で長時間同僚と過ごすことになるので、

心からリラックスできないかもしれないが、

個人単位のワーケーションならば、温泉地という選択は最適解といえる。

「ワーケーション」を出張や社員旅行にしてはいけない

「ワーケーション」という言葉にポジティブなイメージをもつ人がいる一方で、反対にネガティブなイメージをもつ人もいる。今回は、その原因はどこにあるのかを考えてみよう。

 

ワーケーションに前向きになれない人は

「ワーケーションなんて、面倒くさそうだ」という

心理が働いているのかもしれない。

私の場合、今は会社から独立し、フリーランスの立場で働いているが、

もし自分が今も会社員だったら、

「ワーケーション? また、会社が新しい横文字に飛びついて、

変なことを始めた」ときっと思っていたことだろう。

もし私のように思っている会社員が大半であれば、

ワーケーションの未来は明るくない。

ビジネスパーソンにとって、

新たな負担やストレスを増やすことになりかねない。

以前の投稿で、「温泉ワーケーション」の概念について、

次のように定義した。
 

「ビジネスに関わる人が、非日常の温泉地で、

自律的に連泊して仕事と湯治に励むこと」

 

ここで掘り下げたいのが、「自律的に」という部分。

つまり、温泉ワーケーションでは、

個人が自発的に、前向きに実践することが重要であり、

会社から強制的、あるいは半強制的にやらされては意味がない、

ということだ。

ここは、きわめて重要な部分である。

会社から「ワーケーションの制度をつくったから、

〇〇部長のチームといっしょに△△へ行ってきなさい」と指示されたら、

どうしても「やらされ感」しか残らず、

ワーケーションの利点を享受できないからだ。

会社の制度として運用するからには、

「ネット環境があればどこでもいい」というところは

一部の先進的な企業にかぎられるに違いない。

むしろ「せっかくワーケーションをさせるのだから」と、

多くの会社は自社にとって「ふさわしい」場所を指定するだろう。

また、上司は目が行き届かない分、より部下を管理したがり、

タスクやノルマが増えるかもしれない。

在宅のテレワークよりも締め付けが厳しくなっては本末転倒だ。

これでは、行き先が決められ、

効率や成果が求められる普段の「出張」となんら変わらない。

大事なのは、ワーケーションの半分の目的は「バケーション」であることだ。

会社の管理が厳しく、

従業員の裁量が小さいワーケーションだと、

バケーションの時間はあっても、

思う存分に心身を休めたり、レジャーを楽しんだりするのはむずかしい。

せっかく遠出をしたのに、思い切り羽を伸ばせない。

そんな窮屈な思いをすることは想像にかたくない。

これでは、ある意味「社員旅行」と同じである。

私は新卒から8年間、サラリーマン生活を経験したが、

会社から強制されることが苦手だった。

会社員をしていたのは2000年代のことなので、

今とは職場環境はだいぶ異なると思うが、

業務時間外の飲み会やイベントは日常茶飯事で、

社員旅行もあった。

当時でさえ社員旅行は世の中的には下火になっていたが、

会社の景気がいい時期には税金対策もかねてだろうか、

全員参加で行われていた。

そのときの正直な気持ちはこうだ。

「なぜ、毎日顔を合わせる会社の人といっしょに

旅行に行かなければならないのか。気を遣うだけではないか」

「社員旅行に行って仕事が滞るくらいなら、会社に残って仕事をしたい」

今では社員の頑張りに報いたいという経営陣の計らいだったことは

理解できなくもないが、当時は面倒な気持ちが多くを占めていた。

会社の枠組みの中でのワーケーションであれば、

チームでワーケーションに出かけることも想定される。

実際、チームビルディングなどの場として有効だという話もよく聞く。

だが、実際にワーケーションに行くメンバーの立場になればどうだろうか。

もちろん、環境を変えるメリットはあるだろうし、

それを歓迎するメンバーもいるだろう。

だが、私だったら、こう思ってしまう。

「なぜ、はるばる遠くまで移動してまで、

会社のチームで集まる必要があるのだ。

会社やその近辺でミーティングをしたほうがはるかに

生産性は上がるのではないか」

しかも、チームで行動するとなると、メンバーに気を遣うし、

息を抜く時間が限られる。

下手したら、「バケーション」の部分もいっしょに行動

ということになりかねない。

立場が下の社員になるほど、ワーケーションは窮屈に感じられるはずだ。

会社によっては、現場で地域貢献活動や研修を組み入れる

ケースもあるだろうが、そうなるとバケーションではなく、

完全に「業務」と言っていい。

これでは、社員旅行に行くのと同じテンションになってしまう。

「なぜ、毎日顔を合わせる会社の人といっしょに

ワーケーションに行かなければならないのか。気を遣うだけではないか」

「ワーケーションに行って仕事が滞るくらいなら、

会社に残って仕事をしたい」

ワーケーションに対して社員が「出張」や「社員旅行」と

同じ感覚を抱くようであれば、その存続自体が危うくなる。

なにしろ、わざわざワーケーションをしなくても、

業務は支障なく回るのだから。

そうは言っても、「ワーケーションの制度があるだけましだ」という人も

多いだろう。

現状、大多数の会社にワーケーション制度はまだ存在しないし、

中小企業などはテレワークさえおぼつかないところもまだある。

ワーケーションは言葉先行の段階である。

 

誤解のないように言えば、

本来の意味でのワーケーションが定着するのは、

会社にとっても従業員にとっても、

また受け入れる地域や観光地にとってもプラスだと私は信じている。

ブームに終わらず定着することを願っている。

だが、ここまで述べてきたように課題も多い。

とくに利用者が「自律的に」取り組めるかどうかという部分は

必ず解決しなければならない課題だろう。

その点、私が考える温泉ワーケーションは

「自律的」であることが前提だ。

自分で自発的に温泉地を選び、自分のペースで自律的に仕事をし、

しっかり温泉で心身を整える。

それが可能になるのは、当面、裁量をもって仕事ができる個人や、

一部の先進的な企業の社員となるだろう。

実際にそうした体験をした人から、

徐々にワーケーションの魅力や活かし方が

広く伝わっていくのではないだろうか。

少々、我田引水であることは自覚しているが、

「温泉ワーケーション」はワーケーションが定着するための

入口になると考えている。

そのあたりについては、また別の機会にもう少しお伝えしたい。