Q:汗をかくと痒くなるので、汗をかかせない方が良いですか？
A；アトピー性皮膚炎（AD）の増悪因子として汗が知られています。診察時に「汗はかかないように衣服やエアコンで体温調節を心がけて」と言った指導が行われていることも少なくありません。日本皮膚科学会のADガイドラインでは「汗」について「発汗が症状を悪化させるという科学的な根拠はなく、また発汗を避ける指導が症状を改善したというエビデンスはない」と言っています。従って、発汗を避ける指導は必要ないよです。
汗には体温調節の機能があります。汗をかけないと熱がこもってうつ熱になったり、熱中症につながります。熱が体にこもると痒くなります。汗がかけないと皮膚は乾燥して、痒くなります。従って、汗はかけないよりかけた方が良いのです。
汗は乳酸や蟻酸、馬尿酸が含まれ、特に乳酸が多く含まれています。乳酸は汗の中のナトリウムと反応すると、天然保湿因子である乳酸ナトリウムに変化します。従って、汗に含まれる乳酸は皮膚の保湿に非常に貢献しています。また、汗には尿素も含まれているので、これも皮膚の保湿をしてくれます。また、汗は感染防御作用もしてくれます。以上より、汗をかくことを避ける必要はありません。
また、汗には、ダニ抗原による皮膚のバリア機能の障害から、それを防ぐ作用があります。つまり、汗をかくことで、皮膚表面への抗原の影響を最小限にできるようです。
汗は、かいた瞬間に皮膚の表面がひたひたになり、その中で角質に残るべき汗は角質に残り、保湿や生体防御に関わる。しみ込まず表面に残り余った汗は、全部蒸発して皮膚を冷却します。これが汗の理想像です。皮膚の弱いお子さんは、汗をかかせた後、シャワーで流す（石けんは使わない）、おしぼりなどで拭き取ってあげると良いでしょう。AD のひどい人は良い汗がかけません。汗をしっかりかいて、皮膚の状態を良くしておきましょう。
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