「白鯨」日記 -9ページ目
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貧乏では昔のロシアにかなわない

 いや、まだ60ページまでしか進んでないんですが。

 いまのところ、伏線はラスコーリニコフが実行しようとしている「あのこと」「あれ」が何かってことで。それ以外は、ストーリーらしきストーリーもまだまだ全然見えませんともさ。

 もしかしたら、この後、関係してくるのかもしれないけれど、現時点においてはなんでこんなエピソードが突然挿入されるのかわかんない状態です。

 例えば、ラスコーリニコフの目の前で、急に幼気な少女がぶっ倒れるんです。
 どうやら何者かにだまされて酒を飲まされ弄ばれたに違いなく、さらに自分もおこぼれにあずかろうと後を付ける男がいる。
 で、ラスコーリニコフは、その男から守ろうとして少女の近くにいると警官に疑われる。
 今で言う職務質問を受けて、その理由を説明する。
 
 話の流れからして唐突だし、意外性も、今後への期待も、サスペンスも何も産まない。
 ただ、貧しい人間の辛さや苦しさを表現しているようで。

 たかが60ページまで読んで思うのは、懐かしい文学くささです。
 貧乏で、報われず、しかし実は能力を持つ者が社会や権力に抱く怒りと不満。
 これさえ文章にしていれば文学っぽい気がする。ってことありませんか?

 黒パンと水だけで生き、娯楽なんてなく、借金で酒を飲む当時のロシアの貧乏人にはかなわない。寒過ぎてホームレスなんてできないし。
 日本なら、いまやフリーターやネットカフェ難民ですら食べ放題のソフトクリームやコーヒーは飲み食いできてパソコンと漫画で遊べる時代。
 社会に怒りをぶつけるには弱い気がする。贅沢にすら思える。
 ドストエフスキー的な文学は成立しづらいのかもしれませんね。

 でも、今だからこその社会への怒りや不満をぶつける文学があってもいいような気がする。
 それとも、既にあるのでしょうか

5月17日 手紙が長い

新宿中央図書館で、集英社「愛蔵版 世界文学全集18 罪と罰」を借りる。
主人公ラスコーリニコフの部屋の描写でいきなりくらくらする。
屋根裏の、部屋というより押し入れに近い部屋って、ほとんどホームレスじゃん。

とにかく語りと手紙が長い。
酒場で愚痴るマルメラードフの長口上が、またびっくりするほど長い。なんでもかんでも飲み代に使ってしまい、家を出ざるを得なくなった男の嘆きが、これでもかってばかりに続く。ちょっとした短編小説並みの長さですよ。

さらに長いのがラスコーリヒコフの母親の手紙。
妹のドゥーニャが、金持ちのルージンさんと結婚することを、ラスコーリニコフに相談せずに決めたことを延々と言い訳するんだけど、遠回しでくどい。

家庭教師として勤めた家の主人に口説かれたのに、逆にたぶらかしていると勘違いした妻から追い出されたドゥーニャが、恐らくは兄や母を思って金持ちと望まざる結婚をする。
怒りを覚えつつ、だからといって何もできないこともわかっているラスコーリニコフの不満。

ああ、かつて貧しかった学生は、この主人公の憤りに共感したんだろうな。
しかし、将来に絶望し、負け組にくくられている若者たちですら、間違いなくこのラスコーリニコフよりは豊かな現在、誰がこの主人公に共感できるんだろうか。

しかも、全然物語の展開が見えない。このボルガ川のように長い冗長な展開は、現代人に耐えられるのか。ハリウッド映画なら既に何かが爆発して誰かが死んでるところだぞ。

と思いつつ、「完全に人生をあきらめるんだ」と嘆いた48ページ。504ページまで何日かかるのだろうか。
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