映画「同感〜時が交差する初恋〜」の豆知識 | 一松書院のブログ

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 2024年2月日本公開の韓国映画「同感〜時が交差する初恋〜」、韓国では2022年11月に公開された。

 2000年にユ・ジテ(유지태)、キム・ハヌル(김하늘)主演で作られた「同感〜リメンバー・ミー〜」のリメイク映画。2000年版の映画は、1979年のユン・ソウン(윤소은)と2000年のジ・イン(지인)とのハム無線機を通しての時を超えた交信と交流、そして…

 

 

 リメイク版では、1999年の大学生キム・ヨン(김용)をヨ・ジング(여진구)、2022年の大学生キム・ムニ(김무늬)をチョ・イヒョン(조이현)が演じる。キム・ヨンの大学の後輩ソ・ハンソル(서한솔)はキム・ヘユン(김혜윤)、キム・ムニの幼馴染オ・ヨンジ(오영지)はナ・イヌ(나인우)。

 

 2000年版では、ユン・ソウンは、まだ夜間通行禁止がある1979年10月の世界にいた。そして、2000年のジ・インは数日後の10月26日に朴正煕大統領が暗殺されることを「予言」する。

 

 一方、リメイク版では、2022年の大学生キム・ムニが使う言葉が1999年のキム・ヨンには通じない。例えば「대박テバック」とか「ホル」、「초딩チョディン」そして「카톡カトッ」。

 2012年に「歴代インターネット流行語 年度ごとに整理」という記事が出たが、そこで「대박」「헐」「초딩」は、2000年から2002年のベスト3に入っている。

 


「대박」は想定外に驚く表現で「すごい」とか「やばい」。「이다イダ」をつけて「대박이다テバギダ」としても使われる。「헐」は驚いたりあきれた時に使われる感嘆詞。 「초딩」は小学校(初等学校)の児童を小馬鹿にした呼び方。いずれもネット上から派生した若者言葉だが、2010年代には日常会話でもよく聞かれた。ただ、1999年には、まだまだ「なんだ、それ?」だったわけだ。

 

 カカオトークは、2010年3月に登場し、半年で韓国のスマホ利用者の40%がインストールして使用するメッセンジャーアプリになったが、携帯電話(ヒュデポン)が普及し始めたばかりの1999年には「카톡」のまだ影もかたちもなかった。

 

 

 キム・ヨンは、新入生のソ・ハンソルに一目惚れする。1990年代半ばまでは、大学の新入生は「申告式シンゴシック」と称する歓迎会で飲酒を強要されることも多かった。企業の新入社員の「申告式」もあった。ところが、1997年に忠南大学チュンナムデで飲酒による新入生の死亡事故が起き、上級生が傷害致死で起訴されるなどして、1998年には新入生の歓迎行事が様変わりするようになった。この1990年代後半あたりが、大学での行事や職場での会食などで、それまでの先輩・後輩、上司・部下の付き合い方が様変わりしていくターニングポイントだったように思う。

 

 

余談 その1

 同時に同じことを言った場合、厄払いのおまじないとして相手の頬をつねって「찌찌뽕チチポン」という。相手は、それに「뽕찌찌ポンチッチ」と言って応じる。この映画の場面では、キム・ヨンとソ・ハンソルが同時に「静電気チョンジョンギ」と言ってしまったので「찌찌뽕」となったというわけ。

 

 

 セリフややり方は、地方によって違いがあるが、ソウルの周辺だとこうだったらしい。私は体験したことがない。ただ、最近は、うっかり相手の頬に手を近づけたりするとハラスメントだと思われるので要注意😅。

 

 

余談2

 映画館でこのリメイクの映画を見ながら、ソ・ハンソルを演じるキム・ヘユンが誰かに似てると思った。この場面で、1998年の「美術館の隣の動物園」のシム・ウナ(심은하)だと気づいた。顔付きはちょっと違うが一瞬の表情がそっくり。

 映画館を出てすぐに検索したら、すでに韓国のサイトにその話題が出ていた。

 


 

 いつも思っているのだが、字幕を付けるのは大変な作業。「헐」を「わぁ」「やば」と字幕にしても、「초딩」を「小学生」と字幕にしても面白みやおかしさは伝わらない。「申告式」を「新人歓迎会」とやってもどんな行事なのかは伝わらない。これは、機械翻訳の精度がどれほどあがっても機械翻訳ではできない領域。

 

 以前、「猟奇的な彼女」で、延世大学の新聞放送学科の校舎の前でチョン・ジヒョン(전지현)演じる「彼女」が、キョヌにパンプスと運動靴を取り替えようと言ったのに拒否された時、彼女が放ったセリフ「알았어アラッソ!」を「あら、そう!」という日本語字幕にになっていた。

 

 

 字幕の極意はここにあり!と思った。