1990年代後半、PC通信からインターネットに移行していく時期、Windows95とか98だったが、やり方がわかれば日本からも韓国のサイトにアクセスできるようになってきた。ただ、便利な韓国サイトを利用しようとすると、住民登録番号(주민등록번호)を要求された。外国人には住民登録番号はないので、ここで断念ということが結構あった。
1990年代の半ば、韓国の一般紙・経済紙・英字新聞などの新聞記事情報が検索・閲覧できる韓国言論財団の韓国ニュースデータベース(KINDS)が出来たが、住民登録番号を入力して登録しないとタイトルの検索はできるが、記事内容の閲覧はできなかった。また、韓国の国会図書館と国立中央図書館でも文献情報データベースが使えるようになったが、登録には住民登録番号が必要だった。
そのうち、本格的なインターネット時代に移行すると、国外在住者用の登録サイトが別途用意されたり、住民登録番号以外でも本人確認ができるようになってきた。しかし、韓国のサイト利用では、住民登録番号で断念せざるを得なかったことが印象に残っている。
今回のコロナ騒ぎでは、韓国ではこの住民登録番号が感染者の追跡に利用されているとか、個人情報保護との絡みで問題があるとか、韓国の住民登録番号が日本でも何かと話題になった。
韓国の住民登録証に記載されている13桁の番号、これが現行の住民登録番号である。
韓国の「住民登録法」は、1962年6月20日に施行された。30日以上一定の場所を居住地とする場合、その居住地の市長、あるいは邑長、面長に届け出なければならないというもの。この登録法では、特別な番号の付与は定められていなかった。
この住民登録法以前は、「寄留法」で居住地の洞里籍簿が作成されていた。この「寄留法」というのは、日本の植民地時代の1942年10月15日に施行された「朝鮮寄留令」にまでさかのぼる。
この時の「朝鮮寄留令」の趣旨は、徴兵や徴用など、戦争への動員円滑化と、配給などの窮乏体制維持のための仕掛けであった。内地では「市民世帯調査台帳」が作成された。すなわち、人々の移動が常態化した中で、戦争に内地人・朝鮮人を動員するために作られたものだったといえる。90日以上居住する目的で本籍外の場所に居所を定めたものを「寄留者」とし、内地人、朝鮮人にかかわらず全て「寄留簿」に記載するものとされた。推測だが、内地人よりも朝鮮人に貧民や流浪民が多かった分、記載漏れも多かったと思われる。
1945年の解放後、アメリカ軍政がこの「朝鮮寄留令」をそのまま引き継いで内地人が引揚げでいなくなったあとの住民把握のために使われた。1948年5月10日に行われた制憲国会議員の選挙は、この「朝鮮寄留令」の寄留届に基づいて実施され、その後建国された大韓民国にもこの法制が引き継がれた。
1960年の4・19 学生革命を経て1961年の軍事クーデターで権力の座についた朴正煕は、国家再建最高会議議長時代に「旧法整理事業」を進めた。その中で、1962年に「寄留法」は「住民登録法」へと改められたのである。
しかし、1964年に北朝鮮のスパイが虚偽登録していたことが発覚するなど、その欠陥が指摘された。そのため、1965年に、14歳から65歳までの1,600万人に住民登録証を発給し、所持を義務付けるものとした。この住民登録証には、番号が入れられたが、それは個人の識別番号ではなく紙幣に記載されるような一連番号であった。
1968年1月、北朝鮮の武装部隊31名が韓国軍部隊を偽装して北側からソウル市内にまで浸透して、青瓦台の裏の北岳山山麓での銃撃戦で韓国の軍人・警察官と民間人の計68名が死亡するという事件が起きた(1・21事態)。
この事件を契機に、住民登録法施行令の改訂が検討され、一人ひとりに固有番号を与えることで北朝鮮からの工作員の摘発と治安維持をはかろうとした。
この年10月までに登録を完了して11月から年末にかけて住民登録証が発給された。
この時の朴正煕大統領の固有番号は「110101-100001」。夫人の陸英修は「110101-200001」、娘の朴槿恵が「110101-200002」だったという説もある。この時の番号は12桁で、生年月日などは入っていない任意の番号だった。大統領とその家族の番号は、シンプルでいかにも大統領特権で作ったようなお手盛り番号。大統領を辞めてもこの番号が朴正煕の終生の番号になるはずだった。この時点では…
現行の住民登録番号は13桁である。これに変わったのは1975年のことである。1972年の維新憲法で、独裁体制を固めた朴正煕政権が管理体制の強化を図ったものである。

満17歳以上の国民は、指定された場所で本人確認をして指紋を採取されて、この新しい住民登録証を受け取ることとされた。
上掲記事にあるように、住民登録番号は、生年月日・性別・届け出地域番号・届け出順序を組み合わせたものである。朴正煕大統領は「171114-1・・・・・・」となったはずだが具体的な番号は確認できない。
この13桁の数字は、ある種の計算をして最後に得られた数字が、最終桁の検証数字と一致するという規則性で作られており、これによって番号自体の真偽が判別できるようになっている。
1983年 6月30日からKBS1で「離散家族探し」のテレビ放送が流された。この年は秋までずっとこの離散家族探しの番組でもちきりだった。
その時に、日本から来た知人に、「韓国では個人番号とかできっちり管理されているはずなのになぜ探せないのか」と尋ねられた。確かに韓国では個人が番号で国家によって管理されている。しかし、住民登録番号で管理される住民登録は、個人に個別に付与された番号であって、データーベース化されていたわけではない。しかも出生地などの情報は入っていない。親子・兄弟・姉妹だといって、それぞれの番号が類推できるわけではない。バラバラの場所で暮らす家族や親戚は、それぞれがバラバラの場所でそれぞれの住民登録番号が付与されただけなので、この番号を離散家族探しの手掛かりにすることは不可能だったのである。
おまけに、1990年代の後半になっても、ネットワークを通して住民登録のデータベースが照合できる体制にはなっていなかった。
冒頭書いたように、韓国ではブロードバンドの普及がいち早く進んだが、インターネット利用にあたって実名制へと向かった。1990年代後半にはすでに住民登録番号の入力を求めるサイトが増えてきた。
実はこの頃には、韓国のパソコン通信上などで、住民登録番号の検算方法がかなり広く知れ渡っていた。1975年の住民登録番号の制定時から、住民登録証の真偽を見分ける検算方法は警察や軍などでは実際に使われていた。しかし、それは機密事項であった。北朝鮮に知られると偽造した住民登録番号の住民登録証ができてしまう。とはいえ、実際には北朝鮮は早くから知っていたと思うのだが…。
その方法は、今はウェブサイトでも公開されている。例えば『朝鮮日報』のサイトにはこんな記事がある。
この記事では、「ドゥリの住民登録番号」830422-1185600を例にしているが、なぜか計算が間違っている。わざわざ数値を間違えたとも思えないが、計算してみると説明と合わない。仕方がないので、640713-1018433で計算の仕方を説明する。
住民登録番号
640713-1018433
最初の6桁は、1964年7月13日生まれの人物の住民登録番号であることを示している。ここで住民登録番号の最後の桁の数だけを除く。
640713-101843
このそれぞれの桁の数字に、順番に2~9までの数をかけて、全体を足して合計を得る。
(6x2)+(4x3)+(0x4)+(7x5)+(1x6)+(3x7)+(1x8)+(0x9)+(1x2)+(8x3)+(4x4)+(3x5) =151
ここで得られた151を11で割り、余りの数を得る。
151 ÷ 11 = 13 あまり 8
11から割った余りの8を引くと3になる。
11 - 8 = 3
この数字が、住民登録番号の最後の桁の数字と 一致すれば、その住民番号は真である。
従って、640713-1018433は正しい住民登録番号と判定される。
ただし、検算式で法則に合致していることが検証できるだけで、この番号が実在するかどうかはわからない。
韓国の音楽サイト有料化が進んだ2003年あたりまでは、住民登録番号の入力を求めるサイトでは、この検算方式で真偽をチェックしていたらしい。この当時、このギャク手をとって「주민등록생성기(住民登録生成機)」というサイトが韓国にあって、「本物と判定される架空の住民登録番号」を作ることができた。自分の実際の住民登録番号を晒したくないという人も結構いたのである。
しかし、その後、住民登録番号と個人とを照合できるシステムが導入され、検算式をクリアーする番号だけでは通らなくなった。それに加えて、携帯電話番号での確認やPIN番号の導入などで、住民登録番号だけでの本人確認というのはネット上でも日常生活でもなくなりつつある。
2020年1月1日からは、耐久性とセキュリティを大幅に強化した新しい住民登録証が導入されている。
行政安全部のサイトから
① 色変換:光の方向によって太極文様の色が変化
② 影付き文字:名前(ハングル部分)と住民登録番号
③ レーザー印刷:住所などをレーザー印刷
④ 多重レーザー画像:角度によって白黒写真と生年月日がホログラム表示
材質:ポリ塩化ビニールからポリカーボネートに変更
裏面の指紋:シリコンなどで複製を防止
さらに、今年(2020)10月の登録からは、住民登録番号の後ろの地域番号4桁が消え、ハイフンから後ろは性別を表示する最初の桁を除いた残りの6桁に任意の番号が付与されることになっている。出身地が推定されることで特定の地域に対する差別意識が生まれる懸念などが指摘されてきたためだとされる。
任意の番号でもネットで照合ができるようになった今の環境であれば問題ない。もう「住民登録生成機」の出る幕はなくなっている。
さて、日本の「マイナンバー」とやらはどうなるのだろうか。
私は、カードなんぞを作る気はさらさらないのだが… 火葬場で燃やしてもらえなくなったりはしないだろうか( ꒪⌓꒪)
ところで、韓国の行政安全部の見本が、なぜ女性の写真に洪吉童という名前になっているのか。住民番号の7桁目、性別表示も女性の「2」になっている。
気になる。








