韓国最初のCVS(ConVenienceStore)は、1989年5月にチャムシル(잠실[蚕室])にオープンしたセブンイレブンだとされている。1990年の『毎日経済新聞』に「CVSとは、アメリカ人の『편의지향생활방식(便宜指向生活方式)』が生み出したもの」との解説があり、このあたりからピョニジョム(便宜店)という呼称が定着したのかもしれない。
1990年代に入って、毎夏うちの学生が韓国の協定大学に短期語学研修で滞在していたのだが、鷺梁津からバスでちょっと入ったところのその大学の前にコンビニができたという話を、帰国した学生から聞いたのが1996年。それ以降「ソウルは不便」という声をあまり聞かなくなった。
コンビニができる前は、クモンカゲ(구멍가게)と呼ばれる小さな「雑貨屋兼食品屋」が韓国の街の「お店」だった。狭い空間に雑然とものが並べられていて、イスに座ってテレビを見ているアジョッシや子守をしているアジュンマに値段を聞いてお金を払って......そんな店で飲み物やちょっとした食べ物、日用雑貨を買うのが普通だった。デパートやスーパーマーケットもあったが、街中で手近にある小売店といえばクモンカゲ。映画『1987』でヨニの家がこのクモンカゲという設定だった。普通、こんなイェップニが店番しているところには出くわしたことがない。
韓国語の研修自体が珍しかった時期に、会話に自信のない日本の学生にとって、このクモンカゲは使いにくかったようだ。ただ、コンビニの「便利さ」というのは、コミュニケーションの機会がなくなることも意味した。せっかく学んだ「얼마에요?(いくらですか?)」という韓国語もコンビニでは使う機会がなくなった。聞いても、ディスプレーの数字を指さされるだけ。数字の聞き取り練習もできない。
2001年以降、出店数が急激に増加し、2005年中には全国のコンビニ数が1万店舗を越えた。店舗数は、2004年8月に3000店を突破したファミリーマートがトップを走っていたが、売上高やブランド力ではGS25の方が上とされていた。
日本で2005年に公開された韓国映画「私の頭の中の消しゴム(내 머리속의 지우개)」(2004年)で、序盤と最後の重要なシーンにコンビニが舞台として登場する。この撮影場所は、駅三洞のファミリーマートだが、この頃にはコンビニが韓国の都会のごく日常的風景の一部となっていることのあらわれでもあった。その後、2014年にCUを運営するBGFに持ち株を売却してファミリーマートは撤退し、現在はこの店もCUになっている。
2007年に1万店を超えたコンビニは、2011年には2万1222店に達し、2017年には3万9807店とこの7年間で1万8585店増加している(2018年10月17日『ハンギョレ新聞』)。2018年2月現在の韓国の5大フランチャイズの店舗数は、CUが1万2,653店、GS25が1万2,564店、7-Elevenが9,326店、Eマート24が2,846店、ミニストップが2,501店の計3万9,890店となっている。日本が人口2,200人あたり1店舗であるのに対し、韓国は1,300人に1店舗という過密状態になっている(2018年3月26日『韓国日報』)。上の駅三洞の地図でもCU、GS25、7-Elevenの表示がやたら目に付く。
これは、「退職金を元手にコンビニを開業」というのが企業退職者のお決まりのコースの一つであったこととも関連しており、ここ数年で急激に「過飽和状態」が進んだといわれる。このため売上高は減少し続け、コンビニ廃業が急増している。CU・GS25・7-Eleven・ミニストップの4社で、2017年の1年間の廃業店舗1367店、2018年は8月までですでに1900店が廃業しているという。CUの例では、開業店舗849店に対して廃業店舗の方が1004店と上回った(2018年10月15日『ネイル新聞』)。
韓国社会におけるコンビニは曲がり角にきていることは事実だろう。しかし、今さらクモンカゲに戻ることはない。立地に応じた差別化や金融サービスの強化、カフェ型コンビニや無人コンビニの導入などで生き残りを測るのであろう。退職者は、コンビニ以外の「小商い」を探さねばなるまい。
日本では、来年10月の消費税率引き上げの景気浮揚策という中小の小売店のカード決済時のポイント還元なるものが話題になっている。ただ、カード会社の加盟店手数料の問題もあり、街頭インタビューをみていると、「いやぁー、カードは使わないから」とか「カードは慣れてないからぁ」などの声を拾って盛んに流している。
韓国に滞在しているときは、コンビニで、Cassを買って오징어とか땅콩とか買って、クレジットカードで支払ってる。2〜3年前までは、コンビニでクレジットカードで支払いをするのに抵抗があって、かなり頑張って現金で支払ってお釣りをもらっていた。しかし、とうとう根負けして、コンビニでも食堂でもクレジットカードで払うことが多くなった。
韓国では、なんとなく「カードで払う」ってのがジワジワと自分の体に染み込んでくる。
日本に戻ってくるとネットでカードを使うことはあっても実際の支払いではほとんど使うことはないし、ましてや日本のコンビニでクレジットカードを出す気にはならない。体質まで変わったわけではないと思っているのだが…。でも、スイカで払おうとすることは多くなっているなぁ。





