ここ20話から訂正。


さくっと話しは進んでいきます。


すみません。もう、あんま止まりたくないなあ。




野見山、走りましょう。


クスブリ君、またね。



『淳とcandy始めた野見山だ。もうお前に明日はないと思え。』


野見山はトオルにそう言うと歩き出し、野次馬のど真ん中をブチ抜いて帰って行った。


造花が枯れた。


見物人達は革命的な現場を目撃し、興奮しながら警帽を被ったハイエナの出現を占った。




百獣の王は、き然とした態度で道路を闊歩したつもりだ。


街に溶け込もうと特別には思わないが、拒絶してるわけでもない。


襲撃の余韻がネオンに照らされる頃、ず太いスタイルで処理してきた


星の数ほど無限な街のバイブスを彼の全てのファクターが反射しだした。


現場から離れる程、透明人間のような静かなオーラで、境界線を際立たせた。




犯罪者とは思われないだろうが、周囲からの変質的な視線は止まなかった。


野見山が歩く脇の道路を爆音を室内から漏らす大型車が続々通過して行く。


SCREAMのメンバーだ。


能天気なギャルが室内で踊っているのが野見山の横目で見て取れた。




殺人を厭わない集団SCREAMがこのまま黙っているわけがない。


トオルが襲われたとなれば、確実に報復として死人がでるであろう。


何十人単位か、それ以上の規模で。


関係ない者が人質に取られ、どんどん拉致られて姿を消して行くのが想像できた。


一気に潰すしかない。そして野見山は真っ先にそう思った。


candyのメンバーに連絡をとることにした。



雨宿り場所を探そうとうろうろすると、右に入ってすぐの建築現場の簡易トイレで


携帯をイジった。


やましい心から、逃げるように隠れた場所がここだった。



淳に何度も掛けたがつながらない。


何かおかしい。



トイレの正面の壁の目の高さに3ラインほど入っている細長い通気口から外の様子を眺めた。


視界は制限され狭い。



パトカーがわめき散らしながら奥の道路を通り過ぎて行っている。


先ほど歩いていた歩道を駅前の巡査がウロウロしだしている。


トイレの電気を付けてしまっていた。


かといって、誰が中にいるかなど外から分かるわけがない。


目の前を右往左往する警官がこっちを見る度に目が合った錯覚に陥った。



鍵だけはしめて、ポーズだけでもズボンを下ろし、何度も淳にコールした。


相変わらず電話に出ない。


どれだけの警官が動いているのかは分からない。


野見山は自分の消息はだいたいバレていると認識していた。


息を殺しながら再び外を覗きこむと警官の足は止まっている。


不意をつくように陽介からの着信があった。



すかさず出た野見山は、すぐさま喋り出した。


『おい陽、トオルを殺った。』


滅茶苦茶小さな声だった。



『何でだよ?どうなってんだノミ。』


陽介の声も負けじと小さかった。



『いや、どうっていわれてもよ。淳は?淳はどこよ?』


『ノミ、佐伯がサツにパクられたぞ。』


『どうなってんだよ、おい!淳は?』


『刺されたよ。聞きてぇのこっちだぞ野見山!』



野見山の血の気が引いた。


やはり淳に頼っている部分は大きかったからだ。


『うろたえてんじゃねーぞこら。』


野見山が陽介に渇を入れる。



『一人でSCREAMに喧嘩売るから、こうなるんだろバカが!』


『今更びびってんなよ陽介、革命じゃなかったのか、あ?俺らでひっくり返すんだろうが。

淳のカタキ取ってこいや!』


『お前、もうやめとけよ・・・。』


電話が切れた。




野見山は一気に沸騰した。


陽介に発した言葉は、自分に言い聞かしたようなものだった。


白旗など揚げる気はさらさらない。


淳との絆だけが、野見山を動かした。


初めて集団に属し、信頼してくれ、信じてくれた太い絆を一番感じていたのが


野見山だった。


頭の中で恐怖を吹き飛ばすBGMが鳴った。


ズボンを上げた時、トイレのドアはノックされた。






第19話につづく











まるで、CandyによるSCREAM襲撃当日、あの店前の路地における


野見山の狂気に満ちたギザギザなオーラが目の前にあった。


風に乗らないボッサボサのライオンの重たい雄叫びは、あの時よりも繊細さを増し、


私の細胞の内部へ鋭く一気に入り込んだ。


目の前に現れた彼のオーラと声に、私は震え上がった。


私は体内組織を乗っ取られたかがごとく、自然と昨年の襲撃事件の記憶が


脳内に立ち上げられた。




安全靴の合唱が止んだ。


後ろを振り返ろうとしたSCREAMヘッドのトオルの目が、


濡れた前髪の奥に隠れ、黒目の消えかかった野見山の目と合った。


前歯が震えたトオルはバランスを崩し、野見山の鉄拳を浴びた。


水の弾ける音と、肌が擦れる生暖かい音が混じりあった。


眼球や喉は即座に壊れ、トオルの意識はとても取り出しずらい奥の方へと沈んだ。



絹豆腐をフォークで掻き回すようなやり口で、トオルは下品に調理された。


生姜を落とすように、野見山は口元で短くなったタバコを傷口に擦り付けた。


そして、半開きになったトオルの口に安全靴が勢い良く飛び込み、


幾つもの破片が飛び散ると同時に、赤い涙がトオルの頬を伝った。



店の階段を上がってきたSCREAMメンバー2人が、路上で固まっている。


『俺らの放火はこんなもんじゃねぇ。すぐにお前らも焼き払ってやるよ。』


野見山はトオルの視界を塞ぐようにバンダナを彼の頭に巻きつけ、火をつけた。


メンバーが慌てる様子に気づき、通りの遠くから眺める野次馬の連中が集まりだしている。


不恰好に静止したトオルの頭から髪の毛が焦げる匂いが立ち込めた。


『ほら、日は没して行くぜ。SCREAMの没落を向こう側から眺めてる。言ってやれよ、次はお前等の番だってな。』


メンバーがトオルの火を消せば、火の粉は自分に飛んでくることは自明だった。


声にならない声の粒子が逃げ場を失って行く。


野見山は百も承知だった。




『行けよ。』


野見山がメンバーにそう言った。


メンバー2人にとっては助け舟のようにも思えた。


指定された通り、運転席と助手席に座らせた。



同様にバンダナを巻かれ視界を塞がれた。



『帰れよ、早く。』


野見山がトオルの車のエンジンをかける。


メンバーはビショビショな野見山の服や長い髪の毛に触れる感覚ぐらいしか得られていない。


後部座席から焦げ付いた匂いがしてきている。


『踏めよ。SCREAMだったら慣れてる道だろ?』


ずっと微かにブレーキを踏んでいた。野見山にバレているかも不明だ。



助手席側の鼻にナイフが刺さる。


『ぶちかませ。焼け死ぬぞ?』


野見山が煽る。


度々繰り返された。


運転席では、ハンドルを握ったままだ。


ブレーキランプに動揺が現れている。




助手席側のメンバーが痛みに耐えかね、悲鳴を上げる。


『ふざけんな、もう踏めって。』


ついに、助手席側が降参した。



『もう踏んでくれ。』




恐怖と怒りが充満した車は急発進し、ものすごい勢いで、突っ込んだ。



ぐしゃぐしゃになったトオルの車のクラクションの悲鳴がずっと鳴った。


野見山が奏でた五線紙の音色は、夜空を目掛けて突き刺さっていた。






つづく