まるで、CandyによるSCREAM襲撃当日、あの店前の路地における
野見山の狂気に満ちたギザギザなオーラが目の前にあった。
風に乗らないボッサボサのライオンの重たい雄叫びは、あの時よりも繊細さを増し、
私の細胞の内部へ鋭く一気に入り込んだ。
目の前に現れた彼のオーラと声に、私は震え上がった。
私は体内組織を乗っ取られたかがごとく、自然と昨年の襲撃事件の記憶が
脳内に立ち上げられた。
安全靴の合唱が止んだ。
後ろを振り返ろうとしたSCREAMヘッドのトオルの目が、
濡れた前髪の奥に隠れ、黒目の消えかかった野見山の目と合った。
前歯が震えたトオルはバランスを崩し、野見山の鉄拳を浴びた。
水の弾ける音と、肌が擦れる生暖かい音が混じりあった。
眼球や喉は即座に壊れ、トオルの意識はとても取り出しずらい奥の方へと沈んだ。
絹豆腐をフォークで掻き回すようなやり口で、トオルは下品に調理された。
生姜を落とすように、野見山は口元で短くなったタバコを傷口に擦り付けた。
そして、半開きになったトオルの口に安全靴が勢い良く飛び込み、
幾つもの破片が飛び散ると同時に、赤い涙がトオルの頬を伝った。
店の階段を上がってきたSCREAMメンバー2人が、路上で固まっている。
『俺らの放火はこんなもんじゃねぇ。すぐにお前らも焼き払ってやるよ。』
野見山はトオルの視界を塞ぐようにバンダナを彼の頭に巻きつけ、火をつけた。
メンバーが慌てる様子に気づき、通りの遠くから眺める野次馬の連中が集まりだしている。
不恰好に静止したトオルの頭から髪の毛が焦げる匂いが立ち込めた。
『ほら、日は没して行くぜ。SCREAMの没落を向こう側から眺めてる。言ってやれよ、次はお前等の番だってな。』
メンバーがトオルの火を消せば、火の粉は自分に飛んでくることは自明だった。
声にならない声の粒子が逃げ場を失って行く。
野見山は百も承知だった。
『行けよ。』
野見山がメンバーにそう言った。
メンバー2人にとっては助け舟のようにも思えた。
指定された通り、運転席と助手席に座らせた。
同様にバンダナを巻かれ視界を塞がれた。
『帰れよ、早く。』
野見山がトオルの車のエンジンをかける。
メンバーはビショビショな野見山の服や長い髪の毛に触れる感覚ぐらいしか得られていない。
後部座席から焦げ付いた匂いがしてきている。
『踏めよ。SCREAMだったら慣れてる道だろ?』
ずっと微かにブレーキを踏んでいた。野見山にバレているかも不明だ。
助手席側の鼻にナイフが刺さる。
『ぶちかませ。焼け死ぬぞ?』
野見山が煽る。
度々繰り返された。
運転席では、ハンドルを握ったままだ。
ブレーキランプに動揺が現れている。
助手席側のメンバーが痛みに耐えかね、悲鳴を上げる。
『ふざけんな、もう踏めって。』
ついに、助手席側が降参した。
『もう踏んでくれ。』
恐怖と怒りが充満した車は急発進し、ものすごい勢いで、突っ込んだ。
ぐしゃぐしゃになったトオルの車のクラクションの悲鳴がずっと鳴った。
野見山が奏でた五線紙の音色は、夜空を目掛けて突き刺さっていた。
つづく