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『出ない・・、出ないわ。』
携帯を 耳に当てたまま光恵はヒステリックな声を漏らした。
トオルの電話は鳴ったが本人が出ることは無かった。
光恵は停止いした車のハンドルを握ったままうな垂れて見せた。
一方の野見山は助手席で拳銃の弾を詰め直し、臨戦体制に突入している。
『アンタにゃ悪いが、アイツは来る。世の中の厳しさ教えてやるぜ。』
銃の調整は終わった。
『拳突き上げ見上げた掲示板
駅前でアイツは指名手配の拳銃Bang!』
トオルは会場の電光掲示板を眺めながら少しばかり未来を占っていた。
『ありえない時刻とありえない時効・・・か。』
トオルは半ば力尽きながら淳へのメッセージを刻み込んでいた。
『野見山、お前はとんだフライング野郎だな。』
淳の飛び込みシーンを想像していたトオルの頭の中で、途中から淳の姿が野見山に置き換わっていた。
完璧なフライングで飛び込んだ野見山は、笛が鳴ろうが、
5メートルフラッグが水面に下ろされて首を引っ掛けられようが
泳ぎ続けた。
もちろん一発退場だ。
トオルはクスクス笑っていた。
位置についての状態で拳銃をいじっている野見山の姿や、
拳銃を持ちながら泳ぐ姿までもが
頭に浮かんだ。
野見山はやはり、そこでも審判を撃ってしまった。
『マジくだらねぇよ・・・。』
時刻は約束の6時に迫っていた。
光恵とトオルの周辺にトオルの気配は無かった。
2人の会話はほとんど無くなっていた。
『おい、電話しねぇのかよ?』
野見山が口火を切った。