2022/08/04 松本清張『なぜ「星図」が開いていたか』新潮文庫 感想文 | 汚事記

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汚い事が記されます。

ネタばれ、普通にあり。

ネタバレ、アリ〼

ネタバレ、ありです。アリです。蟻。アント。

 

初期ミステリ傑作集、と書いてある。

 

表4の紹介・解説文。

ミステリには「清張以前」と「清張以後」がある――。巨匠の凄みを凝縮した初期の傑作8編。心臓麻痺で突然死した教員の机に開かれた百科事典には「星図」の項が。その意味を探る表題作のほか、清張ミステリの出発点「張込み」、新人俳優に舞い込んだ映画出演の顛末を描く「顔」、九州某県の市長急死の謎を追う「市長死す」など、誰もが持ちうる後ろ暗さや焦りを克明に描く本格推理短編集!

 

 

『顔』

主人公の行動が「おかしい」。顔を見られている男をわざわざ呼び出して殺しておこうとするあたり、不自然すぎて読むのが馬鹿らしくなる。

私が主人公なら放っておくけど。それでも読んでいくと、やはり先の展開が思った通りで、料理屋で鉢合わせする。そこでどうなるのかと思ったら、とくに何も起こらず。だが、その件が二重の引き金になって顔を思い出されてしまう、っていうのは一本取られた感じ。そこまでは読めなかった。

(ははあ、うまいな)

と、なった。

タバコを喫っている時の表情は、思い出されるキーポイントになるんじゃないか、とは勘付いていた。

(☆☆☆☆★……4/5点)

 

『殺意』

読んですぐ、まず稲井が怪しいと思う。その内、ミステリーオタク的に、これは稲井を陥れる為の、磯野の自殺なんじゃないかと考えたりしだす。そう思ってるうちに呆気なくなんでもないようなありふれた動機が記されて終わる。

注釈みたいなカッコつき番号が振られていて、

(これはトリッキーな何かか? ドキドキ……)

と注意していたら、なんでもなかった。がっかり。

(☆★★★★……1/5点)

 

『なぜ「星図」が開いていたか』

タイトルの小説。期待していただけに、くだらなくてガッカリした。

読み終わってから考え直してみると、「星図」のページが開いてあったのは偶々、そうなっただけのことではあったにせよ、凶器としてはかなりアイデア的に優れているかも。でも2人の大人が、こんなことを示し合わせて実際、実行に移すかというと、ありえないな。

これは星新一のショートショートに近い気がする。栞が凶器っていうこの話、どっかで読んだか聞いたかしてるような。

(☆★★★★……1/5点)

 

『反射』

尻切れトンボで、結局、殺人事件が解明されるまでを追っただけのト書きみたいな、ただそれだけの印象。

ここから膨らませていけばもっと何かになったような、やはりありふれていてダメなような。

(☆★★★★……1/5点)

 

『市長死す』

これもだいたい、先が読めてしまうんだけど、それだけに逆に読ませるっていうか。どれどれ私の解答はあってるかな? みたいな。

これはアレだな、長編の一部分を切り取って別の短篇にしたような。たとえば『砂の器』だと、きっかけは確かポスターじゃなかったかな。(確かめてみたら、三木元巡査が秀夫に気付いたのは映画館に貼ってあった集合写真だった)。

最後の章に入る前に真相に気付けたか。ここが著者と読者の知恵比べの勝敗の分かれ目。私はエラリー・クイーンで鍛えられていたので、抜かりはなかった。

(☆☆☆☆★……4/5点)

 

『張込み』

これは面白かった。『顔』でも列車とか詳しく書いてあって、清張らしさがあったけど、これも列車内の描写とか、古き良き日本の風景描写の美しさがいい。

読後感も良質で、謎解きはないんだけど、この本のなかではこれが一番好きだ。

(☆☆☆☆☆……5/5点)

 

『声』

二部構成。電話交換手が殺人犯の声を聴いてしまう、っていう変わった導入部。前半の主人公の名前が「朝子」と書いて「ともこ」と読む点、これは後で使われそうだなと思ってたし。展開にちょっと無理があるような。他の短篇でもそうなんだけど、簡単に人を殺そうとしすぎだ。人間はそんなに短絡的じゃないと思うんだけど。

後半は被害者の肺と鼻腔内に石炭紛があったことがメインになってくる。うちわと来たとこで、すぐにカラクリがわかる。アリバイものとしてはウザすぎ、というかやりすぎで説得力に欠ける。

(☆☆★★★……2/5点)

 

『共犯者』

またか、みたいな。

同じような話ばっかり。

落ちもつまらない。

(☆★★★★……1/5点)

 

巻末の解説は誰だか知らないが作家なのか。エポックとなる作家として、江戸川乱歩、松本清張、ここまではわかる。3人目に綾辻行人が挙がってて、それは違うんじゃないかと。

 

昨日、本屋で買ってきた。出たばかりの新刊を求めて買うのは何年ぶりだかわからない。それくらい今の本は馬鹿らしくて買う気がしない。字が絵本みたいにデカくて読みづらい。こんなに大きなフォントで無駄に分厚くして値段を上げておいて、

「本が売れない、本が売れない」

って、出版社は本物の馬鹿だと思う、マジで。内容的に360円あたりが妥当なクラス。こんな本が税別で710円とか、感覚が狂っていることをまず自覚しないと、このまま消えるの間違いなし。第一、誰も困らないし。