続きです。








おそるおそる開けた

炊飯器の中には、


たっぷり5合の

ごはんが

炊かれていました。




そして、


まだ一度も

触られていない

その表面には、



ぱっと見だけで

明らかにわかる

髪の毛が

4本。


中には白髪も

混じっています。





やっぱりな。






おばあちゃんは、

昨日の夜の

出来事など忘れ、


「なんでこんなとこに

 お米よけてあーれんろ?」


と思って、


特に何も考えず

他のお米と混ぜて

炊いたのでしょう。



もちろん、

お米を研ぐという

「作業」自体は

やってます。


昔からやってる行動は

そのままやってます。



ただ「作業」を

やってるだけなので、


ゴミが入ってるなあとか

髪の毛が混じってるなあとか


そんなことを

考えるわけでは

ありません。



視力が著しく

悪いわけでは

ありませんが、


ごみや髪の毛が

入っているなんて

思いもしないので、


しっかり見ようと

思うわけが

ありません。



さらに、

おばあちゃんの

水加減なので、


びちゃびちゃごはんです。






とりあえず

今の私にできること。






それは、


今目に見えている

髪の毛を


取り除くこと。






私は、

深く考えずに


目の前の出来事に

対処し始めました。







高温でじっくり

炊き上げられた

髪の毛は、


引っ張ると

ちぎれました。


指の腹を使って


優しく

するすると

抜いていかないと


ごはんの中に

残ってしまいます。



よくよく見ると、


髪の毛以外にも

いろんなゴミが

入っていました。



床に落ちてる

ゴミなので、


糸くずもあれば

ホコリもあれば


何やらわからない

黒いものとか…。



別にこれを食べても

しにゃあせんけど、


さすがに

子どもには

食べさせたくない。


旦那にも

食べさせたくない。


できれば

妊娠中の私も

食べたくない。




かといって、


捨てていいものか…


父親は食べるのか…


おばあちゃんは

わかってないから

食べるだろうけど…


そもそも

食べるのを

やめさせた方がいいのか…


でも、

説明しても

おばあちゃんが

理解できなければ


また私は


「せっかく

 炊いたごはんを

 捨てたやつ」


として、

ひどいことをする人間という

レベルだけが上がる。


そんなことを

気にしても

仕方ないのはわかるけど、


改めて、


どうしよう、


これ。




そこで私は

我に帰りました。



これって

捨てるなら

取り除かなくていいよな。


でも、


どうするのかな。


食べるのかな。




とりあえず

父親に

聞いてみるか。




そう思った私は、


部屋にいる

父親に

電話をしました。




同じ家にいるのに

なぜわざわざ

電話をかけるのか。



父親の部屋に行くと、


私は


喘息の発作が

起きるからです。



父親の部屋は

ホコリ、ダニ、カビの宝庫で、


父親の体臭を含め

よくわからない

異臭がします。



父親の部屋は

2Fにありますが、


2Fに行くための階段は、


上に行けば行くほど

ホコリとゴミの髪の毛と

何かのカスが落ちています。



普通は重力で

下に行けば行くほど

ホコリが溜まるものですが、


父親の場合は

部屋が汚なすぎて


部屋に近ければ近いほど

ホコリやゴミが

溜まるのです。



父親の部屋は

カーペットの床ですが、


廊下と同じく

スリッパで

歩いています。


汚すぎて

そうするしか

ないのです。



父親は

生まれてこのかた

掃除をしたことがないので、



………



まあそういうことです。




そんなこんなで、


私は

父親の部屋には

入れません。



いつものように

電話をかけ、


ことの顛末を

ひとつひとつ

説明しました。



父親は、


子どもがお米を

撒き散らしたとき

その場にいたので、


スムーズに

理解していきました。




あ、


撒き散らしたお米を

片付けようという

空気になった瞬間に、


父親が

逃げるように

自分の部屋に戻った

ということは、


言わなくても

わかりますね。