続きです。







本当の悲劇が

起こったのは、


次の日の朝のことでした。



おばあちゃんは、

朝必ず5合のお米を炊きます。


絶対炊かないでと

何度言っても、


絶対炊くなという

張り紙をしても、


炊飯器を

テープで

ぐるぐる巻きにしても、


炊飯器を

どこかに隠しても、


鍵のかかる部屋に

隠しておかないと、


見つけられたら

必ず炊きます。




この日は

いつも通り、


炊かないでと

声かけしていたのと、


米びつと炊飯器の

両方に


炊かないでという

張り紙をしてありました。


そして、

炊飯器を隠す作業を

父親に頼んでありました。



たまに本当に

炊かないこともあります。


もしかしたら

それは逆に


炊くのを忘れている

ということなの

かもしれませんが。。



5合を炊いても、

あの人たちの朝食は

いつもパン。


日によっては

3合あまらせます。


あまったごはんは、


どんぶりに入れて

冷蔵庫に入れます。


でもそんなこと

関係なく、


次の日の朝また

5合炊きます。


もちろん、

新しく炊いたものから

順番に食べます。


それが数日続き、


どんぶりがない!!!


と思ったら初めて、


冷蔵庫にごはんが

たくさんあることに気付く、


という感じです。



そして、


どんぶりのごはんを

先に食べなくちゃと思い、


電子レンジでチンします。


そしてそのまま忘れて、

炊飯器のごはんを食べます。


レンジでチンされたごはんは、

そのまま朝まで、

あるいはそれ以上、


おばあちゃんが

次にレンジを開けるまで

放置されます。



そして、


「なんでこんなところに

 入っとるんやろ?」


「ゆみかかな?

 置きっぱなしにして

 ほんとにもー。」


と、

また冷蔵庫に

入れられます。



そんなことを

繰り返すので、


ごはんはだんだん

黄色く、硬く、

美味しくなくなっていきます。


冷蔵庫の奥に

追いやられてしまった

どんぶりごはんは、


いずれカビが生えます。




まあこれが

基本的な

一連の流れですが、


私がチェック

するようになってからは、


少なくとも

カビが生えることは

なくなりました。






そんな

おばあちゃんが、




今朝、



ごはんを炊いたのです。





炊飯器は、


炊き上がりを示す

オレンジのランプを

点灯させていて、



デジタル表示は

「0h」。



ついさっき

炊き上がったことが

予想できました。





私は、



いろんな感情を

ツバと一緒に

飲み込み、



おそるおそる

その炊飯器を



開けてみたのです。