皆さんお久しぶりです。こんにちは。
昨年の11月で大宮整形外科が開院して20年が経過しました。そして、2025年は21年目に突入です。
あっという間の20年間。その間、約4000件にも及ぶ、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症の手術をしてきました。最初の頃に比べると、手術のやり方もずいぶん変わり、現在は内視鏡や顕微鏡を酷使して、患者さんに少しでも優しい手術を心がけています。
20年間、良いことも悪いことも正直たくさんありました。
辛いこともあって、くじけそうなこともありました。
私はもう昨年で60歳になりました。私の周りではそろそろメスを置いて、外科医としては引退しようという人が増えてきました。自分の中でも果たしていつまで手術を続けるべきなのか、時々真剣に考える時があります…
20年前とは時代がずいぶんと変わってしまい、我々医療人が生きていく環境としてはだんだん悪くなってしまいました。医療や社会福祉といった問題が大きくクローズアップされる事はなく、コロナの時、あれだけ言っていた医療従事者に感謝をしよう応援しようといった社会の波もいつの間にか風化してしまいました。
働き方改革とは名ばかりで、やはり医療の世界では医療人の自己犠牲に頼って、現在の医療が成り立っているといえます。
また、世の中では個人主義がだんだんと強くなり、自分自身で情報を収集して頭でっかちになっている方も多いと思います。そんな世の中に萎縮しながら仕事をやっている方も多いのではないでしょうか?
そんなふうに思っていると、もう手術なんてしなくてもいいのかなと考えてしまうこともあるのですが、やはり僕は最後まで外科医として生きていきたい、そう強く感じています。
外科医としてというよりも、医師として困っている人に背を向けずに、落ち着いて真摯に向き合おうという気持ちが、最近さらにいっそう強くなりました。
この仕事、ほんとに辛いなぁって思うこともありますが、それ以上に本当に面白いなと思うことが多くなりました。これが20年やって1番得られたことだと思います。
確かに60歳になって体力的にもしんどい事はありますが、医師としての人生の中で今が1番充実している気がします。
よくスタッフに話すことがありますが、何千人も手術をしていると、これは誰もでしょうが慣れてしまいます。
しかし、私は毎回、人の体にメスを入れるいわゆる人に傷をつけるという事はとても大変なことであり、大きな責任を負うことだとよく話しています。
10代から90代までいろんな患者さんがおられます。
皆さん、それぞれの人生で何歳だからといって軽い人生はありません。一人ひとりの命の重み同じです。
ある時、外来で、先生は患者の体を切るのはなんともないでしょ魚を切るのと同じような感じじゃないって言われたことがありますが、とんでもありません。この時ばかりはちょっと強い口調で人を切るってそんな簡単じゃありませんよってお答えしたことがありました。
私のあまりの剣幕に、患者さんはちょっとびっくりされたようでしたが、その後にっこりと、大変なんですけど何でもないような顔してメスを入れるのです。とお話しいたしました。
患者さんにはいろいろな背景があります。すぐに仕事に復帰しなければいけない人。一刻も早く痛みをとって欲しい人。まだ若いのに、たくさんの子供さんがいて、一家の大黒柱である人。何の病気もしたこともない人。これからまだまだ長い時間を生きていくだろうと言う若い人。自分の子供たちと全く同じ年齢の患者さん。
いろいろな患者さんを目の前にして思いを巡らす事はたくさんあり、正直切りたくないなと思うこともあるのですが、手術の前にはそのすべての雑念を取り払い、自分のメスに心を込めて一刀するようにしています。
こうして心を込めて、手術をして、患者さんが心から喜んでいただき、手術前と違った新しい人生を歩んでくださる姿を見て、私も共に歩むことができるとつくづく感じています。
私はこれからいつまで手術をすることができるかわかりませんし、いつまで生きることができるかわかりません。そこまで頑張らなくても、私自身は生きていくことができますがマグロが大海原泳ぎ続けるように、私も医師として仕事をして手術をし続けなければ私ではなくなってしまうような気がしています。
手術の事ばかり書きましたが、外来もとても楽しくやっています。楽しいと言うのは、馬鹿な話ばかりをして、楽しいということではなく、少しでも心の通った会話と診療を大切にしています。
手術は自分との真剣勝負ですが、外来は患者さんと一緒にドラマに出ている感じです。患者さん一人ひとりの違う人生に、私は医師と言う俳優のようになって、ちょっとお邪魔している感じです。
私よりも年上の大きな男性が長年患ってきた腰痛が良くなり、本当に良くなってよかったですね治療の甲斐がありましたね、とお話しすると、先生に会えてよかったです、そしてこれからも時々お会いしたいです。とメモ紙に書いて見せてくれました。
なかなか文章でお伝えしにくいですが、その瞬間は、ちょっとウルウルくる感じでした。
最近の話で言うと、世の中ではインバウンドと言う単語をよく聞きますね。当院の外来でも外国の方が時々来られます。多くはアジア東南アジアの方です。
そして、どちらかと言うと、恵まれない環境の方が多いです。本国に変えると日本より全然まともな治療が受けれないとのことで、ここで何とか良くしたいと言う方もおられます。たまに手術を受けられる方もおられます。
外国人の方、全般的ですが、日本の方よりも非常に緊張した面持ちで外来を受診されます。まず最初から笑顔はなく、なかなか表情が柔らかくなることもありません。
先生によっては、そんな態度の彼ら彼女らを見てあまり良い印象を受けない先生もおられると思います。
ちょっと時間はかかりますが、ゆっくりと丁寧にわかりやすく診察を進めていくとだんだんと表情が和らぐんですね。何回か診察を進めて、だんだん状態も良くなるとこんなに良い笑顔ができるんだと思うことがあります。
そんな時、お国の事情を聞いたり話したりします。
ある東南アジアの国から来てた患者さんは、先生、私にはもう帰る国がありません、と話していました。平和な日本にいるとわかりませんが、国の事情もあるのですね。そんな中、日本に来て働いて、体の具合が悪くなって、さぞかし不安だっただろうなと思いました。
帰る国がないなんて、まだ若いのに、僕は何かとても切なくなりました。
そして、20年やってきて、1番感じてるのは長年体のことでお付き合いしてきた患者さんが亡くなってしまうことです。これだけはどうしても避けることができません。ついこの前まで元気で外来に来て、リハビリを頑張っておられたのに…時々世間話や冗談を言って楽しいお話ができていたのに…
もっとお元気でおられたらなぁとしみじみ感じます。
いずれは、自分も同じ道をたどることになりますが、
最後の最後まで、やっぱり医者をやっててよかったなと思えるようにこれからも頑張っていこうと思います。
21年目2025年は、大宮整形外科にとっては大きな変化の年になります。組織が法人化され、病院の体制をより強固なものにし、今まで以上により良い医療提供しようと考えています!
世の中、あまり良いニュースがありませんが、どうか皆さんお元気に。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
みさこ先生と私
たくさんお花を頂きました
私のデスクの前に掲げてます