日本から海外に出てみると、日本では当然のように評価されていた自分の立場やステータス、キャリアや経験、資格、スキル、学歴、タイトル、などというものが、全く評価されないことが多いです。
カナダの人でも、寿司やテリヤキやラーメンは大好き、色々とそれらの味やネタについてまでうんちくを語れる、そしてアニメやら日本の映画も色々知っている、、、でも日本が地球のどこにあるか知らない、アジアのどこかだろうとはわかるけれど、という人はいっぱいいます。そもそも中国と韓国と日本の違いすらわからない人、どの国がどこに位置しているかわからないもたくさんいたりします。
そんなわけなので、日本でどんなに頑張って素晴らしい立派なステータスを得ているとしても、「日本なんてどこにあるかわからない国で、一体どんだけのことができるわけ?」という受け取られ方はとても一般的です。
つまり、彼らの知っている範囲の尺度からすると、全然範疇に無い国であって、測れない所というわけです。なので、そう思われるのも無理もないことでもあります。
アメリカのニューヨークにある世界的に名の知れた大きな会社で管理職をしていたとか、Ivy Leagueの一つの大学を卒業したとか、イギリスのオックスフォード大学やケンブリッジ大学を卒業したとか、そういうことなら大体認知できるのですが、実際その人が毎日乗っている車がトヨタや日産やマツダであっても、日本なんていったい何の良いものあるの?という感じだったりします。
そういう意味で、とても若い頃に移住をして、そこで学校に行ったり、資格を取ったり、キャリアを始めたりするならそれなりに柔軟に受け止めて動いていけると思うのですが、日本でかなり生活を建て上げて年齢が少し上がってからの移住は、かなり精神的に試されるものがあると思います。
駐在員として海外へ引っ越したりするという場合は、まだ派遣元の会社の中という守られた環境がありますし、そこで生活をしていくのに、わざわざ自分で一から現地の人とコネクションを築いたり、信頼関係を作って仕事を得たり、という心配もほとんどなく済むと思います。もちろん現地で新たに現地の同僚やクライアントとの関係を作るチャレンジはもちろんあると思いますが、現地での社会的な立場はすでにある程度用意されている状態での引っ越しとなると思います。
ただ本当に個人で移住するという場合になると、日本での生活が確立されて、社会的な位置が決まってきたりして、生活も安定してきていているような状況だと、そこから出て他へ飛び出していくことは、まさに清水の舞台から飛び降りるような行為かもしれません。
そう言うと怖がらせているかのようですが、もちろん必ずしもとんでもない奈落の底に突き落とされたかのような生活ばかりが待っているというわけではありません。
もしかして移住をこれから考えている方もこれを読んでくださっているかもしれません。または、移住してきて間もないという方もいらっしゃるかもしれません。
私たちが決心してカナダに引越しをする前、日本での生活はかなり安定したものになっていました。周りの知り合いや友人も、大抵は価値観や趣味や人生のビジョンなども共有できるような状態でしたし、何も説明しなくてもお互いの価値を認め合えるものでした。
自分の存在の意味があるという承認の場、自分の存在が受け入れられている場所のようなものが、いきなり希薄に感じられることが多くなるのはあり得ます。何層もの自分の存在の価値を分かってもらえているという安心感のブランケットのようなものが、いきなりはがされたかのようにすら思えるかもしれません。
私たちはまさにそういうことを実感したので、もし今移住した後にそういう気持ちに少なからずショックがある方がいるとすれば、「わかります、あなただけじゃありませんよ!」と、声を大にして励ましたいのです。
いわゆるIdentity Crisisですよね。これをプロセスしている間は本当に苦しいです。
カナダに引越ししてから、何年もの間、雲をつかむような感覚の中で、何か堅く踏みとどまれる足場のようなものを探していた日々でした。日本にいた頃のような、一緒にいるだけでホッとできる関係、互いを尊敬しあいながらも、励ましあったり助け合ったりしていける関係を探していました。
でもはっきり見えるのは、日本で心地よいと思えた関係の元になる尺度、物差し、価値観というものがカナダではほとんど全く通じないということでした。そもそも周りにそういう同じ認識や目線、視点、知識や価値観を持っている人がいないのです。なので、周りに自分をそのまま受け入れてもらうということは不可能に近い、ということを受け入れざるを得ませんでした。
自分の価値を自分のやり方でどんなに主張しても、まさにのれんに腕押しなだけで、そのうちに、「そうか、ここで自分がホッとできる場所を作るとしたら、自分の見方、考え方、やり方を変えないといけないのかも」と考えるようになってきました。
次回はその後の経過と行き着いた先について、シェアしたいなと思っています。あ、もちろんポジティブなものですよ!