前回
ローズマリー・ジョシュアが歌い
クリストフ・ルセ指揮
レ・タラン・リリクに加え
ローレンス・ドレフュスと
エリザベス・ケニーが参加する
ヘンリー・パーセルの
『ハルモニア・サクラ』を
取り上げました。
その際
ツィンマーマン番号がないことや
『ハルモニア・サクラ』全2巻のうち
どの巻が出典なのかも気になり
調べ始めたところ
思わぬ手間がかかった
と書きましたが
せっかくですから
調べた結果を
アップしておくことにします。
以下のリストで
トラック名が抜けている箇所に
チェンバロ独奏曲が入りますが
そちらについては
ナクソス・ミュージック・ライブラリの
本盤の紹介ページを見れば
簡単に分かるので
省きました。
略号のうち
Sはソプラノ、Bsはバス
Tはテノール、cho はコーラスです。
vn はヴァイオリン
va はヴィオラ
BCは通奏低音を示します。
これらの編成と各曲の邦題は
〈クラシック・データ資料館
ヘンリー・パーセル作品表〉
を参照しました。
01. 憐れみ深き天使よ、我に告げよ Z.196 S, BC ◀︎第2巻
02. 暗くわびしき絶望の淵に Z.190 S, BC ◀︎第1巻
03. ものを聞く知恵を与え給いし主に向かいて歌う Z.199
S, cho, BC ◀︎第1巻
05. 偉大にして正義の神よ Z.186 S, cho, BC ◀︎第1巻
06. アンセム〈われ主の憐れみを永遠に歌わん〉Z.31
Bs(S), cho, 2vn, va, BC ◀︎第1巻
08. 主よ、道を誤りし人間とは何か Z.192 S, BC ◀︎第2巻
09. 夜よ去れ(ヨブの呪い)Z.191 S, cho, BC ◀︎第1巻
11. 夜が来たれり(夕べの讃歌)ZD.77(疑作)T, BC ◀︎第2巻
12. 目は病み、疲れ Z.200 S, BC ◀︎第1巻
13. 主よ、我はいかに道をふみ迷いたる Z.188 S, cho, BC ◀︎第1巻
18. わが目は清められ ZD.72(疑作)S, BC ◀︎第2巻
19. 主よ、かくて幾年を経たもうや Z.189 Bs/S, BC ◀︎第1巻
21. 眠れアダム、しばし憩え Z.195 S, BC ◀︎第1巻(?)
22. おんみ、眠らざる羊飼いよ Z.198 S, BC ◀︎第1巻
23. 地は震い、天は目を閉ず Z.197 S/Bs, BC ◀︎第1巻
24. 今や太陽の光も薄れしからには Z.193 S, BC ◀︎第1巻
原盤のライナー小冊子の解説は
ブルース・ウッドが書いていますが
そこには次のように書かれていました。
本録音では、単一の高音パート用に編曲された楽曲をすべて収録している(この説明は少々誤解を招きやすい。そのうちのいくつかは、パーセルの時代の多くの「独唱曲」に見られる特徴、すなわち2声の「合唱」――当時の、同様に誤解を招きやすい用語を用いるならば――で終わっているが、ここでは高音パートと通奏低音に加わるバス声部は省略されている)。 *DeepL の無料版で翻訳
前回、苦言を呈した
キング・インターナショナルの
商品説明の記述は
上掲のウッドの文章を
踏まえたもののようです。
ただ、ウッドが
条件付きで書いているのに
その条件を除いて
「高声独唱用に作曲したもの」
と書いて済ますのは
やはりまずいのではないか
と思いますけどね。
ウッドはまた
『ハルモニア・サクラ』収録の
パーセルの曲は
第1巻は29曲中12曲あり
第2巻は15曲中5曲ある
と書いています。
インターネットにアップされている
ファクシミリ版を見つけたので
確認してみたところ
当方の数え間違いでなければ
第1巻の第1版は確かに25曲ですが
第2巻の第1版は16曲でした。
あと
第1巻の第1版には
詩篇89に基づくアンセム
〈われ主の憐れみを永遠に歌わん〉が
収録されておらず
同曲はどうやら
第2版以降に
追加されたもののようです。
それぞれの巻に収録された
パーセルの曲の数は
合ってますけど
上に書いた通り
第1巻の第2版以降
パーセルのアンセムが4曲
追加されたので
それを入れると
第1巻は16曲というふうに
なるはずなのですが……。
問題は
〈眠れアダム、しばし憩え〉Z.195 が
ファクシミリ版を見てみても
載っていなかったこと。
これについてはブルースも
ひとことも書いてませんが
第1巻とする資料がヒットしたので
上掲のトラック・リストでは
第1巻としておきましたけど
ファクシミリ版では確認できないため
「?」を付けときました。
手元にある
マーガレット・キャンベルの
Henry Purcell: Gloryof His Age で

(Oxford University Press, 1995)
索引を見て、載っていたので
本文を確認してみたところ
〈眠れアダム、しばし憩え〉Z.195 は
1683年に刊行された『エアー選集』第4巻
(原題 Choice Ayres and Songs to Sing
to the Theorbo-lute or Bass-viol )
に収録されたようなんですが
これはどういう扱いになるのか。
『エアー選集』第4巻というのは
J・A・ウェストラップ『パーセル』の

(1937/1965. 5th ed.
松本ミサヲ訳、音楽之友社1989.6.20)
巻末の年譜に書かれている
仮題です、念のため。
それはともかく
ネットで確認できなかった
『ハルモニア・サクラ』の別版に
収録されている可能性は
なきにしもあらずで
単なる極東のアマチュア愛好家
に過ぎない自分の場合
これ以上は調べかねるのでした。
それくらい日本語の文献で
調べがつけられないものか
という思いが
なくもないのですけど
もし邦語文献があって
見逃しているのだとしたら
ごめんなさい。m(_ _)m
なお
ブルースはちゃんと
〈夜が来たれり〉および
〈わが目は清められ〉が
パーセルの作品ではない
と書いています。
だとしたら
なぜ収録したのか
というところまで
書いて欲しかったなあ。
ジョシュア盤は
YouTube の
クリストフ・ルセ・トピックに
全曲アップされています。
上には全体のトップページの
アドレスを貼っときましたが
それだけではそっけないため
いちばんよく知られていると思われる
〈今や太陽の光も薄れしからには〉Z.193 を
以下に貼っておくことにします。
以上
あまり関心が高いとは
思われないようなことを
長々と記してきて恐縮ですが
せっかく調べたのだし
自分の備忘のためにも
と思って
書いておく次第です。
乱文長文深謝。m(_ _)m