ジャン=クリストフ・グランジェ

『ミゼレーレ』(2008)下巻で

 

J=C・グランジェ『ミゼレーレ』創元推理文庫

(平岡敦訳、創元推理文庫、2024.9.27)

 

主役の1人で元刑事の

リオネル・カスダンが

アスンシオン福祉教育協会が開く

少年聖歌隊のコンサートを

聴きに行った際に渡された

プログラムに載っている

演奏曲についての話題の続きです。

 

これまで

ペルゴレージ《スターバト・マーテル》ピアノ伴奏版

 

 

フォーレ《ラシーヌの雅歌》の歌とピアノ演奏用編曲

 

 

メシアン《神の現存についての三つの小典礼》

 

 

とプログラムを追いかけてきましたが

今回はいよいよ残りのひとつ

《トゥルネーのミサ》を

取り上げることにします。

 

 

ミサの典礼文には

固有文と通常文があり

後者は一般的に

キリエ - グローリア - クレド -

サンクトゥス - アニュス・ディ

という5曲から構成されています。

 

有名なところでは、というか

バロック音楽ファンには

バッハの《ロ短調ミサ曲》が

代表的な作品として

知られているかと思います。

 

ベルギー西部の都市

トゥルネーにある大聖堂の

附属図書館に所蔵されていた

手稿譜に基づくので

《トゥルネーのミサ》

と名付けられた今回のミサ曲も

通常文の全てに

曲がつけられています。

 

《トゥルネーのミサ》の場合

サンクトゥスの後に

ベネディクトスが続き

ミサの終了を意味する

イテ・ミサ・エストが

最後についてますけど

これら全てを含めて

通常文となります。

 

ただしこれらは

1人の作曲家によるものではなく

いろいろな作曲家によるものを

ミサ通常文として使えるように

編纂したものだそうです。

 

しかも

トゥルネーの作曲家による

ということでもなく

周辺の別の国で編まれたものが

なんらかの理由で運び込まれた

と考えられているようです。

 

 

グランジェの小説

『ミゼレーレ』では

通常文のうちから〈グロリア〉が

プログラムに載っていました。

 

というわけで

CDが出てないか

Amazon で検索してみたところ

ヒットしたのがこちらの1枚です。

 

アンサンブル・オルガヌム《トゥルネーのミサ曲》

(harmonia mundi France:

 901353、1991)

 

演奏は

マルセル・ペレス指揮

アンサンブル・オルガヌムで

録音は1990年9月

フランスのサントにある女子修道院

Abbaye aux Dames, Saintes

で行なわれました。

 

女子修道院での録音ですが

演奏者は全て男性です。

 

それに加えて

通常文だけではなく

固有分も交えた演奏で

 イントロイトゥス(入祭唱)

 キリエ

 グローリア

 グラドゥアーレ(昇階唱)

 アレルヤ〈高貴で敬虔なる〉

 アレルヤ〈めでたし恩寵に満ちたマリア〉

 セクエンツィア(続唱)

 クレド

 オッフェルトリウム(奉献唱)

 プレファツィオ(叙唱)

 サンクトゥス

 アニュス・ディ

 コンムニオ(聖体拝領唱)

 イテ・ミサ・エスト

という構成になってます。

 

それぞれ

どういう意味を持つかは

Wikipedia のミサ曲の項目

参照ください。

 

アレルヤがふたつある意味は

残念ながら分かりません。

 

 

このような構成にしたのは

トゥルネーのミサが

聖母のためのミサの曲集に

まとめられていたことから

聖母マリアの奉献祭

あるいは被昇天祭で

歌われたものと

想定してのことのようです。

 

つまり当時の

聖母マリアに関わる典礼の再現

というわけですね。

 

 

ソプラノ・パートはなく

テノール、バリトン、バスの

3パートで歌われます。

 

男声による典礼の

なんともいえぬ迫力が感じられ

当時も、かくや、と

思わせるものがありました。

 

グランジェの『ミゼレーレ』では

少年聖歌たちが歌う

という設定でしたから

本盤で聴かれるような

(ドスの効いたといえそうなw)

響きと異なっていたでしょう。

 

でも、これはこれで

聴き応えのある1枚だと思いますね。

 

 

YouTube で探してみたら

少年聖歌隊が歌うイメージに

より近いものが見つかりましたので

貼り付けておきます。

 

 

演奏は

アンサンブル・ドゥ・カエリスで

女声のみのアンサンブルのようです。

 

おお、こういうディスクが

出ていたとは思いもよらず

探さねば。( ̄▽ ̄)

 

 

なお

今回ご紹介の

アンサンブル・オルガヌム盤は

おそらく

邦訳解説付きの日本流通盤が

出ているのではないか

と思われますけど

今のところ

見つけることができてません。

 

見つけたらまたその時にでも

ふれられればと思っていますが

いつ出会えるものやら。