ルーシー・M・ボストンの児童文学

『グリーン・ノウの子どもたち』の

瀬田貞二による旧訳(本邦初訳かもしれない)

『まぼろしの子どもたち』を読んで

ボストンの音楽趣味が

いかなるものだったのか

という点に興味を抱き

以下に掲げた本の存在を知り

目を通してみました。

 

田中美保子・安藤聡編著

『ルーシー・ボストン――

 館の魔法に魅せられた芸術家』

『ルーシー・ボストン――館の魔法に魅せられた芸術家』

(国書刊行会、2022年12月10日発行)

 

今のところ唯一の

ボストンの研究書かと思います。

 

本書に載っている

鳥越けい子の論文

「ルーシー・ボストンが愛した

二つの音楽」が

お目当てだったんですけど

その他の執筆陣の中に

ジル・ペイトン・ウォルシュや

林望の名前が見つかり

意外なつながりを知って

びっくりさせられた次第です。

 

 

本書を通読すれば

文筆以外の芸術活動や

生涯についても

知ることができます。

 

諸家の文章だけでなく

ボストンが残した絵画やパッチワーク

グリーン・ノウ・シリーズの舞台となった

ボストンが住んでいたマナーハウスの

外観だけでなく内部の写真が

巻頭にカラーで載っていて

それだけでも楽しめるというか

グリーン・ノウ・シリーズのファンなら

手元に置いておきたくなる

1冊になっているかと思います。

 

 

なんといっても驚きだったのは

チェンバロ奏者の

コリン・ティルニーと

交流があったことでしょうか。

 

ティルニーは

ボストンが住むマナーハウスに

チェンバロを預けていて

年に2回ほど

弾きにきていたのだとか。

 

これは田中美保子の

「ルーシー・ボストン――

生まれながらの児童文学作家」と

林望の講演録

「ザ・マナーの音をめぐる追憶」に

書かれていたことですが

当の林望は留学していた頃

マナーハウスに寄宿していたそうで

それについてもまったく知らず

驚かされたことでした。

 

林によれば

ディック・アドラムという

クラヴィコードの制作者にして演奏者も

マナーハウスで演奏会を開いていて

それを運び入れるのを

手伝ったりしたそうです。

 

 

ボストンの元夫が異母兄で

ボストン自身は母親の従妹にあたる

ケネス・ボストンの回想録

「ルーシーの想い出」には

ヘンデルの《メサイア》で歌う

バリトン歌手のノーマン・アリンと

ソプラノ歌手のイゾベル・ベイリーが

お気に入りだったと書かれています。

 

後者については

「女性歌手を全般的に好まず、

ビブラートで震える歌声を嫌っていた」

と述べられており

そうではないベイリーの歌声が

どういう声なのか

気になってしまって

CDを注文してしまった次第。(^^ゞ

 

 

ルーシー・M・ボストンは

第1次世界大戦中に篤志看護婦として

フランスで働いていたそうですが

第2次世界大戦になると

マナーハウスの音楽室で

飛行隊の兵士のための

レコード・コンサートを開催します。

 

巨大なラッパ型のスピーカーがついた

ゼンマイ巻きの蓄音機を使い

78回転のSPレコードを

何枚も掛け替えて行なわれたらしく

その写真が巻頭のカラー・ページに

載っていますけど

このとき何をかけたのかが

気になって仕方ありません。( ̄▽ ̄)

 

 

そんなこんなで

ルーシー・M・ボストンの

2冊の自伝をまとめた

『メモリー ルーシー・M・ボストン自伝』

(1992)の訳書を購入し

つい本日、読了。

 

そちらの本では

ジル・ペイトン・ウォルシュが

序文を書いています。

 

ウォルシュの

ケンブリッジを舞台にした

ミステリのシリーズがあり

創元推理文庫から出てますけど

そのうちの1作では

パッチワーク・キルトが

重要な役割を果たしています。

 

 

もしかしたらボストンとの交流から

生まれたアイデアなのかしらん

と考えるのも楽しかったり。

 

 

また『メモリー』には

コリン・ティルニーとの交流が

印象深く綴られています。

 

大戦中のレコード・コンサートで

何をかけたのか、ということも

少しだけ書かれていました。

 

それらについては

また改めて

ということにしましょうか。